25 (最終話)
僕は土曜日久しぶりに美奈子とデートした。
車で海沿いの道を走り、海辺の店でおいしい昼食を食べてその後、少し冷たかったが二人裸足で手を繋いで海辺を歩いた。
彼女の満面の笑みとともに。
そして夕食は美奈子の手作りご飯を食べた。まだ、美奈子の手料理は2回目だが、こんな料理を毎日食べたいと思った。
僕は、ベッドの中で美奈子に最近の出来事を話して、明日、〇×東小学校の裏山に石田貴子と行くことも話した。
その話を聞くと美奈子の顔色が変わった。
少しの沈黙の後「洋一はどうしても本当の過去が知りたいのね。でも、以前、約束した真実を知っても変わらないとゆう約束ともう一つ約束してほしいの、本当の過去がわかったら私にも細かく教えてほしいの、約束して」そうゆうと美奈子は右手の小指を立ててきた。僕も右手の小指を美奈子に絡ませ、約束するよと約束した。
僕は次の朝、美奈子の作った朝食を食べてアパートを出た。
天気は、晴れ、雲一つない晴天。
僕は約束通り午後1時に石田家の喫茶店に着いた。
奥の駐車場に車を止めさせてもらって、二人で歩いて裏山に行くことになった。
石田家から歩いて15分程で〇×東小学校に着いて、そこから裏山に入って行く。少し疲れる程度の山道だったが、舗装された道などないから歩きずらかった。裏山に入り10分ほど登ると広い原っぱのような場所についた。
「ここはね、よく、みんなで鬼ごっことかやった場所だよ」石田さんは説明すると、又、歩きだした。
原っぱから5分ほど歩くと、土手のような盛り上がった場所にきた。自分の足元から先は、下りになっていて上と下の差は1m程だったが、それが25mプールと同じだけ広がっていた。
「ここが、やすお君が溺れた池よ。今は、水がもうないから池ではないけど・・・」
石田さんは、そうゆうと黙って土手の右手へ歩いて行った。ついて行くとそこには、花が添えてあった。
その花は新鮮とは言えないが最近添えた花だと分かった。
そこに石田さんは座り手を合わせた。僕も黙って手を合わせた。
僕は、立ち上がり、土手の下へ降りて昔池だった中心まで歩いてきた。
かつて池だった場所は今はただの雑草地帯となっていた。
僕は、地面に手をついてやすお君を思い祈った。
石田さんの所に戻ると、もう一ヶ所行きたい場所があると言われ後に着いて行った。
裏山を降りて小学校の横にある墓地へと僕を導いた。
そして一つの墓の前で止まる。
それは、山田靖男の墓だった。
やまだやすお・・・寒気がした、いや、したような気がした。
僕達は手を合わせて無言で石田家の喫茶店へと戻ってきた。
僕は石田さんに「もう少し待ってほしい、気持ち、いや、記憶の整理をしたら、いつか、説明しに来る」と伝え後にした。
僕は、寮へ帰る前にスーパーでビールとつまみを買い戻った。
電話の伝言板には、美奈子からの伝言があったが、僕は電話をしなかった。
僕は、酒を飲みつまみを食べてベッドに座って考えた。
そう、池を見て、墓を見た瞬間、頭の蓄積場から大量の記憶が走馬燈のように流れ込んできた。
僕は、知ってしまった。
本当の過去を。
ゆっくりと思い出す、あの夏の日の出来事を・・・
僕とやすお君、たかこちゃんの3人はいつも一緒だった。原っぱで鬼ごっこをしたり、やすお君が死んだ池でタモをつかってザリガニを取ったりしていた。
ある時、たかこちゃんが遊びにいけない日があった。
その日は、どんよりとした曇り空だった。
僕とやすお君は、裏山の池の所でザリガニ釣りをしていた。
そこで、原因は覚えていないが喧嘩になった。僕達は、お互い取っ組み合いになり、僕はやすお君から何かを引きちぎって、池に投げた。
それは、てんとう虫のキーホルダーの片割れ。
やすお君とたかこちゃんの付き合った証でもあった。
やすお君はすぐに池に飛び込みキーホルダーを探しに行った。
僕は最初黙って見ていたが途中で危ないから戻ってと叫んだ。
しかし、池の底には泥が堆積していて、足を取られたやすお君は池に沈んでしまった。
その後は、はっきり覚えていないが裏山を降りて人を呼びに行ったような気がした。
警察によって、やすお君は池から引き上げられ、すぐに救急車で運ばれた。
僕は警察から何があったかいろいろ聞かれたが、動揺していて何を言ったかはあまり記憶していないが、本当の事は話をしていない。動揺と恐れから話を作ってしまった。
その後、やすお君が死んだことを回りの人から伝えられた。
僕はビールを一気に飲み干し虚ろになりながら、窓の外の景色を眺めていた。昼間よく晴れていたせいか、夜になっても雲一つなく、空には綺麗な星空が輝いていた。
ふと、棚のフクロウを見ると、眼がわずかに光っているように見えた。
どうしてフクロウの眼が光っているんだろう?と疑問に思いベッドから起き上がろうとしたが、体がまったく動かないことに気づいた。
「落ち着け、落ち着くんだ」と自分に言い聞かした。
その時、フクロウの眼は赤く輝いた。
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僕は小学校の教室にいた。
いつもの3人組。
やすお君、たかこちゃん今日は何して遊ぶ?
やすお君が、今日はお父さんとお母さんが出かけて夜遅くなるから、外で遊べないんだ。うちの家なら遊べるよ。
じゃあ、やすお君の家に遊びに行こう。たかこちゃんもいけるよね。
うん、いけるよ。
お邪魔しまーす。
今日は家にお姉ちゃんもいるから、一緒に遊ぶよ。
こちらが、お姉ちゃんの美奈子姉ちゃんだよ。
僕とたか子ちゃんは、こんにちはと挨拶した。
それをきっかけに4人で、たまに遊ぶようになった。
-*-*-*-*-*-*-*-*告別式-*--*-*-*-*-*-*-*-*
僕とたか子ちゃんは、やすお君のお別れの場にいた。
やすお君のお父さん、お母さん、そして美奈子姉ちゃんは、顔を腫らしながら泣いていた。
線香の香りが場を包んで、白いモヤのようにくすんでいた。
まるで、現実をしっかり見せないかのように白く全体を覆っていた。
黒い大きな怪物は、やすお君を飲み込み、大きな叫び声をあげてお別れの会からいなくなった。
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朝日で目が覚めた。
僕は泣いていた。
僕は今深く考えることをやめた。
僕が今できる事をする。
僕は会社に行き働く。
僕はロボットの代わりに部分を加工する。
僕は今生きている。
僕には彼女がいる。
僕の美奈子に伝えなければならないことがある。
僕は会社が終わり寮の前の公衆電話から美奈子に電話をかけた。
「もしもし、岩田だけど連絡しなくごめん。
どうしても会って美奈子に話さなければならないことがあるんだ。
週末に会いたい」
「わかった、空けとくね」
次の日も僕は会社でロボットの代わりをしていた。
鼻に突く油の匂いと、音楽をかけてもかき消される騒音の中、昼の12時を知らせるチャイムが工場内に鳴り響いた。
僕は、機械を一時停止にした。
回りでも同じようなに機械を止め、不必要な蛍光灯を消していた。
僕も必要とされていない蛍光灯を消した。
工場全体が暗くなった。
僕は、ふと上を見上げるとそこには、仄暗い天井が広がっていた。
<おわり>
作者のまさひろです。最後まで読んで頂きありがとうございます m(__)m
この小説『僕の1993 春』の、文章の量、情景の表現、人物の詳細な心情、たぶん全てにおいて不足だったと認識しています。
処女作ですので、この辺りが妥当かなと自分で納得しています。
2019-5-1(令和 元年)




