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名も知らない人の物語

作者: きゃいもん
掲載日:2019/01/14

こんなことを思ったことはありませんか?

「なんのために自分は生きているのだろう。」

僕はよく、こう言った事を考えることがあります。

え?頭がおかしいって?

まぁでも、ある意味一種の病気なのかも知れません。笑

しかし実際問題、自分がなんのために生きているのか、そう聞かれてパッと答えが出るでしょうか?恐らく多くの方が答えに詰まるはずです。

毎日、学校に行き、仕事に行き、楽しい時もあれば、理不尽なことで怒られる時もある。理想と現実との間には漠然とした差がある。にも関わらず、それを変えようとしない。そもそも考えようとも思わない。

だからといって、そういう方を否定するわけではありません。その人にはその人の考え方があるのですから。

今回のこの小説は、そういった、考え始めたらきりがないような物事に注目し、自分なりに答えを見つけてみようと思い、書いたお話です。

ちょっとでも、共感する節があったそこのあなた!!

そして、全くなかったそこのあなた!!

こいつのいってることマジ意味わかんねーって思ったそこのあなた!!!

そんなみんなさんに見てもらいたい作品です。

  時は、1999年12月24日。人々は他国の宗教のお祝い事を理由に、大切な人とこの日を過ごす。私の場合、世間一般の過ごし方が頭の片隅にはあるものの、いつも通り会社へ出勤し、いくらでも代えがきく仕事を、ただ黙々とこなすのであった。この時の私には、一年に一度必ず訪れる行事、仕事をすること、さらには生きるということでさえ、なんの意味も持たなかった。挑戦や努力といった言葉は、私という人間を表現する上ではあまりに遠い言葉である。私は、日々充実している人々に対して皮肉を言うことすらなく、物事に対して、何も考えなくなっていた。全てのことに意味はない、無意味であると、自分の中で答えを見つけていたからだ。この頃の私に夢があったとすれば、なるべく人と関わらず、静かに人生を終えることくらいであった。お金や地位にはなんの興味もない。何匹といる働きアリの一匹で良かった。

  しかし、こんな私にも、少しずつ変化が起こり始めた。この年、2000年を迎えるにあたり、世の中では、地球が消滅するなど、不可解なことが起こると予想されていたが、予想は見事に外れ、何も起こらなかった。もしかすると、起こると予想された不可解なことは、私の身に降りかかってきたのかもしれない。

  2000年1月4日。少し長めの休みが明け、いつものように会社へ出勤した。そして、いつも通りの朝のミーティングを済ませ、流れ作業のように仕事をこなしていた。何もかもいつも通り、のつもりだったが、確かに変化は起こっていた。この日、私は仕事中、自分のデスクにあったボールペンを不意に床へ落としてしまった。反射的にボールペンを拾おうとしたその時、私の視線はボールペンの一点に集中し、体が固まってしまった。いつもなら、なんの迷いもなく拾い上げるのだが、なぜか今日は体が言うことを聞かない。ボールペンはなぜこの世に生まれてきたのか。何か意味を持って生まれてきたのではないか。私の人生をより豊かにするために生まれてきたのでは…。このような考えが脳内で高速に行き交っていたのだ。そんな中、遠くの方で私を呼ぶ声が聞こえてきた。

「・・・い、おーい、おーーい!!」

 ハッと気づき、慌ててボールペンを拾い上げ、私を呼ぶ声に視線を向けた。私を呼んでいたのは、隣のデスクの同僚だった。名前は知らない。いや、正確には覚えていない。でも多分、山田さんだと思う。首からぶら下げた名札に、山田薫やまだかおると書いてあるからだ。山田さんは続けて言う。

「大丈夫?珍しくぼーっとしてたけど?」

「だ、大丈夫です。な、何か用ですか?」

「あ、そうだった。明日の会議何時からだっけ?忘れちゃって。」

「あ、朝の10時からです。他に何か?」

「いや、大丈夫、ありがとう!」

 山田さんは爽やかな笑顔を残し、仕事を再開し始めた。いつもなら、私も仕事を再開するのだが、やはり、今日は違った。妙に山田さんの名前について気になった。なぜ山田という苗字で、薫という名前なんだろう。この人の存在にも、何か意味があるのかもしれない。ボールペンや山田さんだけでなく、全ての物事には、意味があって、私の人生と関わりを持つことで、私の人生はより良いものになっていくのではないか。今までの私からは想像もつかないような考え方だが、なぜか不思議と楽しかった。この日はずっとそんな事を考えていたせいか、残業をする羽目になってしまった。だが、この日の私には残業ですら、楽しかった。

  会社からの帰り、今までは気づかなかったが、宝くじ売り場があることに気づいた。今までなら、買うなんて発想すら思いつかなかっただろうが、この時には、買ってみたいと思うようになっていた。もし本当に全ての物事には意味があるのなら、きっと宝くじも意味を持っているはずだと考えていたからだ。私は、ワクワクする一方で、今までの考え方が邪魔をし、少し疑心暗鬼になりながらも、宝くじ売り場の前まで足を進め、恐る恐る宝くじを購入した。できるだけ多く買うつもりでいたが、この時の私には、たったの10枚を買っただけでも、意味があったと思う。当てるつもりはなかったのだ。私は宝くじをカバンの中へしまい、足軽に帰宅した。この日1日の出来事は、確実に私を変化させた。

  あれから1ヶ月がたった。あの日以降、生きることが楽しくなっていた。今日もまた、会社へ出勤した。オフィスに入ると、山田さんともう一人の同僚である田中さんが会話をする声が聞こえてきた。盛り上がっているようだったので、挨拶のついでに聞いてみることにした。

「おはようございます。何か良いことでもあったんですか?」

 すると山田さんが答えた。

「あ、おはよう!宝くじの当選番号の発表があって、今、当たってないか確認してたんだ。まぁ、残念ながら二人とも外れていたんだけどね。1等なら10億円だったのに。」

 私は宝くじを買っていたことをすっかり忘れていた。あの日からずっと、宝くじはカバンの中に入ったままだった。当たっているかには興味はなかったが、一応見ておくことにした。

「山田さん、私にもそれ、みせてもらってもいいですか?」

「いいよ!はい、どうぞ!」

 二人の間に挟まれ、カバンの中からしわくちゃになった宝くじを取り出し、一桁ずつ確認していった。高校の合格発表の時以来で、少しドキドキした。そして次の瞬間、私は信じがたい事実直面した。何度も、何度も確認したがやはり夢ではなかった。

「あ、あた、当たった・・・」

 私はこの言葉を最後に、視界が徐々にボヤけていった。

「え?本当に?!どれどれ?うわ!本当だ・・・」

「当たる人なんているんだ・・・」

 二人が騒ぐ声も段々と遠くなり、気づくと私は、会社の医務室のベッドの上で眠っていた。目を覚まし、横を見ると、山田さんの姿があった。山田さんは心配そうに私の顔を覗き込み口を開いた。

「気分どう?当たったこともびっくりだけど、急に倒れるんだもん。本当にビックリだよ。」

「もう大丈夫です。迷惑かけてすいません。山田さんは仕事いいんですか?」

「タメ口いいよ、同僚じゃん!今、お昼休憩だから気にしないで。あと、これ。」

 山田さんは私にしわくちゃの宝くじを差し出してきた。私がその宝くじを受け取ると、山田さんは話を続けた。

「もう会社中に噂は広がって、その宝くじを盗もうとする人まで現れてる。お金と交換するまでは、自分にしかわからない所にかくしたほうがいいよ。」

 この時、私は思った。山田さんはいい人だ。今まで他人に関心を持つことのなかった私には、友達と言えるような存在はいなかった。だけど山田さんとなら、薫となら、友達になってもいい、いや、友達になりたい。そう思えた。今までとは違い、話したいという感情が私に言葉を発させた。

「そんなことになっていたんだ。でも、本当に色々とありがとう。このお礼はいつか必ず」

 薫は私の言葉を遮るように話し始めた。

「お礼なんていいよ。友達じゃん!それより、これから仕事どうするの?ここ辞めるの?」

 宝くじが当たったことよりも、薫に友達だと言われたことの方が嬉しかった事はさておき、一度に色々な事が起こりすぎていて、私の頭では処理しきれていなかった。

「今はまだ、そこまでは。とりあえず、考えがまとまるまでは働こうと思う。」

「そう・・・。」

 それからしばらく薫と雑談を交わし、午後からはお互い仕事に戻った。後から人に聞いてわかった事だが、薫は私が倒れてから眼を覚ますまで、ずっと私のそばにいてくれたらしい。改めて思った。薫はいい人だと。お金の使い道や仕事に関しては、かなりの時間考えた。その間、薫との距離は着実に縮まり、今までの古い考え方は、私の中から消えようとしていた。

  あれから、数十年の時が流れた。もちろん、すぐに仕事は辞めた。他にやりたいことがたくさんあったからだ。私は様々なことに挑戦した。その中でも、1番大きな挑戦といえば、世界一周の旅だろう。10年間で100カ国以上を周り、多種多様な人や文化と出会い、私の考え方は大きく変化した。そして、そばにはいつも薫の姿があった。私と薫は、友達から親友へと関係を深め、私の必死の説得を経て、仕事を辞め、私と日々を共にしてくれていた。昔よりは友達も増え、私のコミュニティは拡大したが、これほどまでに心を許せる人には、今後の人生では会えない気がする。今では、私と薫は、日常会話はなに不自由なく行えるほどの英語を身に付け、宝くじで当たった残りの約6億円と、最近始めた株、そして薫が趣味で定期的に更新するブログからの僅かな収入を資本に、都内にマンションを買い、一時の静かな日常を、幸せに暮らしていた。

  2016年4月10日。この日は、私の運命を変える日となった。外はとても良い天気だった。雲ひとつない、まさに快晴。自然と気持ちのいい気分になり、自宅のベランダから外の景色を眺めていた。時刻は、もうすぐお昼になろうとしていた。人々がシャレたカフェやレストランに入って行く姿が目に映った。そして私はこう思った。オシャレをしてみたいと。今まで他にやりたいことが多すぎて、服にまで気が回っていなかったことに気づいたのだ。この頃の私は、思いたったらすぐに行動しないと、気が済まない体になっていた。私は、幸せそうな顔で寝ている薫を叩き起こし、ほんの数分で用意を済まさせ、小走りで街へと出掛けた。薫の脳はまだ眠っているようだったが、薫を連れて行くのには意味があった。薫には、服へのこだわりと確かな知識があったからだ。そのセンスは確かなようで、薫のブログは、薫の私服を見たいという人たちで大半を占めていた。寝起きの薫には申し訳なかったが、薫に全身をコーディネートしてもらった。奇抜なデザインの服も、薫の手に掛かれば、それらしくなった。これからは服についても勉強しなくてはと考える内に、辺りは夜になっていた。薫は疲れ切った顔をしていたが、私は満足だった。少し不機嫌な薫をなだめながら、私と薫は自宅のマンションの下まで帰って来た。すると、入り口の前で一人の男性が倒れているのを発見した。どうやら酔い潰れているようだった。私に助けないという選択肢は無かった。この男性との出会いも何か意味がある。そう思ったからだ。薫と協力し、男性を自宅まで運び、様子を見ることにした。しばらくすると、男性は目を覚まし、状況を理解するのに苦しんでいた。かなりの量を飲んでいたようで、男性がまともに話せるようになるまでは、もうしばらく時間が掛かった。数分後、男性は口を開いた。

「迷惑を掛けたみたいで・・・色々とありがとう。よければお礼をさせて欲しい。」

 とてもお酒臭かったが、そのことを除けば、悪い人ではなさそうだった。男性は自分について話し始めた。彼の名は、高木直人。雑誌の編集者のようで、毎週街で出会った人を取り上げるコーナーを担当しているらしく、それなりに人気があるのだという。今日は予定していた取材が上手くいかず、ヤケ酒をし、酔い潰れてしまったらしい。話を進めて行く中で、高木さんは、私の人生について興味を持ち始めた。さすがはプロだと言うべきだろう。気がつくと、私は高木さんに、私の人生の全てを語っていた。話を聞き終えると、高木さんは私にこう言った。

「もしよかったら、あなたの人生について、俺の担当するコーナーで、紹介させて欲しい。それほど多くはないが、それなりのお礼もできると思う。」

 高木さんのその言葉は、私の目を輝かせた。断る理由なんてなかった。もちろんお礼がもらえるからではない。答えは即答でイエスだった。新たなことに挑戦するときはいつもワクワクするのだが、今回はいつものが比にならないくらいワクワクしていた。私は高木さんに朝まで質問攻めをされたが、なんの苦になることもなく、私の興奮は三日三晩冷めやむことはなかった。

  数日後。その日の私は、とても目覚めが良く、気分も穏やかだった。最近ハマっている料理に腕を振るい、朝から大量のお皿がテーブルの上に並んでいた。薫はブツブツと文句を言いながらも、美味しいと言いながら私の料理を食べていた。この日は平和そのものだった。しかし、その平和は突然奪われた。静かだった空間に、どこからか高音が鳴り響いた。私と薫は機関銃で撃たれたかのような衝撃に襲われたが、数秒後には冷静さを取り戻し、原因を突き止めた。高音の正体は、スマートフォンのメッセージの通知音だった。送信者は高木さんだった。何百通ものメッセージがこの短時間に送られていた。そして、状況を理解する間も与えず、高木さんから電話が掛かってきた。私は恐る恐る電話に出ると、スマートフォンの向こうから、落ち着きのない高木さんの声が聞こえてきた。

「あ、もしもし?高木だけど、すごいことになった!!君について書いたあのコーナーが、今世間で話題になっている。ネット上でもみんなが君に注目している。そこで提案なんだが、君についての本を書かないか?うちの会社で君を全力でサポートする。費用もこちらが負担する。やってみないか?」

 さっきのが機関銃なら、今度のはミサイルにでも撃たれたかのような衝撃だったが、私が選ぶ答えは、一つしかなかった。

  それからの出来事は、あまりにも一瞬だった。私が書いた本は、異例の大ヒットを遂げた。もちろん、高木さんや薫の支えがあっての結果だった。テレビにも何回出演したか分からない。だが、有名人に会うたびに新鮮な気持ちになったことは記憶に新しい。私はすっかり時の人になっていた。次第に評判は世界中に広まり、各国で公演をするほどになった。幸いにも英語は話せたので、生活面で苦労することはなかった。そして、今に至る。

「私が今、皆さんに話したことは、一つの成功例に過ぎません。大切なことは、人間はボールペン一つで変われると言うことです。もちろん、ボールペンじゃなくてもいい。今、皆さんが身に付けている物でも、ふと頭に思い浮かんだ物でもいい。いや、物じゃなくてもいい。出来事でも、なんだっていい。人間は些細なことをきっかけに変わることができる。私の場合、それはボールペンだった。なんで自分が生きているのか。そんなこと誰にも分からない。なら、自分で意味を見つければいい。全ての物事は意味を持って存在しているのだから。それでもまだ道に迷う人がいるのなら、私はその人に手を差し出し続ける。私の名前は・・・」

 スピーチの最後に自分の名前を口にし、拍手喝采を浴びる。それがいつものお決まりなのだが、なぜか今日は、自分の名前を口にしようとした瞬間に、私の体は固まり、視線はある一点だけを集中し見つめていた。昔に一度似たような経験をしたことがあるような気がした。私の視線の先にあったの物。それは、講演会上に特に意味もなく飾られたと思われる、一枚の写真でだった。その写真には、貧しい国の子供と思われる子が一欠片のチョコレートを貰って満面の笑みを浮かべているすがたが写っていた。私は居ても立っても居られなくなった。子供たちの笑顔をもっと増やしたい。どうやら、この写真は私にとって、大きな意味を持っていたようだ。気づくと私は会場を抜け出し、走り始めていた。これが私の生きる意味なのかもしれない。私の人生はまだまだ続く・・・。

  私に名前などない。これは一つの成功例に過ぎない。誰にだって置き変えることができ、誰にだって起こりうる。今、世界のどこかで私たちの知らない誰かが成功を成し遂げているかも知れない。私たちはそのことを知る由もないのに。

  これは、名も知らない人の物語。

・タイトルの意味

今回の作品のタイトル「名も知らない人の物語」、これは、誰にでも起こりうる可能性があるという意味でつけたタイトルです。読み進めていくと、主要キャラの主人公と山田薫の性別について一切説明がないまま、物語は終わります。一人称も「私」であったり、セリフも男性でも女性でも両方あり得る言い回しであったりと、読み手の心境や感情に合わせ、受け取り方が変わるようにと思いそうしました。なので、この2人の性別に正解はありません。また、主人公に関しては、最後まで名前すら分かりません。これも、より読み手の心境や感情などが物語に大きく反映されるよう、あえて名前を付けず、想像を膨らませて頂けたらと思いそうしました。なので、あえて主人公の名前をつけるなら、読んでくれたあなた自身になるのかな?笑

あ、ちなみになんですが、主人公と山田薫の関係性もご想像にお任せします!これも正解はありません!

・「意味」と「変化」

この小説において、キーワードとなるのがこの2つの言葉になります!特に「意味」という言葉は、様々な意味合いで使っているので、注目してもらえると嬉しいです笑

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