5.お手伝い
「起きな!!!!もう朝だよ!!!!」
あっちにある時は目覚まし時計という便利なもので起きていたのに……まさか本当に鍋とかでカンカンされて起こされるなんて思ってなかったよ……
あぁ、頭に響く!
顔を洗ってご飯を食べて、目を覚ましてからユーリカさんの元へ行く。
洗面台の場所とかキッチンの用具の置き場とかを先に教えてもらったあとは掃除に洗濯、草むしり……
「お疲れ様。仕事が早いねぇ、ちょうど昼に終わらせるなんてやるじゃないか」
前世でやり慣れてるもんで!とか言えない。
うちは単身赴任だからお母さんと2人で暮らしてたんだ、2人で役割分担しながら暮らしてたから私は基本的な家事は出来るんだよね
「いえ、魔法でやることを教えてもらったので、効率的にできただけです!ありがとうございます、ユーリカさん」
昨日ユーリカさんのスパルタレッスンのおかげで日常的に使える魔法の小ささを理解できるようになった私はもう昨日の失敗を繰り返さないために頑張ったのだ。
「じゃあご飯にしようかね。」
「はい!」
この世界の食材は肉だと基本的に人体に無害な魔物の肉。野菜は地球では見た事のないようなカラフルなものばかり。木の実も豊富だった。
調理法に難がある食材もあるらしい。
昼に出されたのはクリームシチューのような白いものだった
「美味しいです!ユーリカさんの料理は格別ですね……っ!!」
本当にほっぺたが落ちるようなものなのだ。
昨日の夜の事だ……手伝いましょうかと言いながらキッチンを開いた私は大きなまな板の上に乗っている大きなボアの首を包丁でスパンと切り落としているのを見た瞬間固まった、あれは完全にトラウマ。
肉料理を作れるようになるのはだいぶ後かもしれない
「ユイ、今から王都に行ってみるかい?」
食べ終わって食器を洗い終わった時だった。
「王都、ですか?」
王都?って言うくらいだし、やっぱり王様とか騎士とかがいる所だよね。
「そうだ、いずれは行かなきゃならないんだけどね、職を見つけたいんだろう?」
「はい!それはもちろん!」
魔物とかがいるんだったら武器とかがあった方がいいしね……冒険者とかいるのかな?この世界
「ユーリカさん、王都には冒険者っているんですか?」
普通の質問をしただけだと思ったのに、ユーリカさんは聞いた時に少しだけ嫌な顔をした
「……あぁ、いるよ。」
いるんだ……やっぱりね、魔物がいれば冒険者いるよね。
「収入ってどれ位ですか?」
「……収入?、それは……高いねぇ」
「私、王都に行くなら武器を買って冒険者になりたいです。」
その後、めちゃくちゃユーリカさんに説得された。
危ないからやめとけとか、野蛮な人しかいないとか、
でも、1番稼げるのは冒険者らしい……
私の平穏ライフのためには!!やるしかない!!
フード付きのローブを被ってユーリカさんと王都の街を歩く
外国の街みたいだ!!
地面は白いタイルに青いタイルのラインが入っていって、それが床一面に敷き詰めてあるのだ。道には露店が並んでいる。みんなが声をはりあげて和気あいあいとしている
「すごい!すごいですね!!わぁ〜!!」
左へ行ったり右へ行ったりいろんな露店を見て回りながらはしゃぐ私を見るユーリカさんの目は優しかった。
少し露店によってみてユーリカさんと話してみたり、この世界の野菜の名前を教えてもらったり、お母さんと2人で買い物してた時のことを思い出すようだった。
お母さん……
ゲームのヘッドセットを付けて呼んでも呼んでも起きてこない私の事、なんて言うだろうか、こんな子に育てた覚えはないって?こんなはずじゃなかったのにって?……どうしよう、ごめんね、お母さん。
「ユイ?」
いつの間にか道の真ん中で立ち止まってたみたいで、ユーリカさんは私の顔を覗き込むように見ていた。
「泣いてるのかい……?」
私の頬には涙が伝っていた
それを慌てて拭って笑ってみせる
「なんでもないです!武器店、いきましょう!」
ユーリカさんが心配そうに見ていたのは分かっていたが、それを振り切るように武器店を探して歩いた
「ユイ、ここだよ」
ユーリカさんが立ち止まった場所は、露店じゃなくて扉がついてる屋内のお店だった。
扉を開けるとチャリンチャリンという鈴の音とともに
いらっしゃーいという声が聞こえてきた
店内の壁には槍や弓、直剣や斧、盾など色んな武器が揃っていた
「おっ、ユーリカじゃねぇか、どうしたんだ」
中にはいると店の奥で剣を研いでいたらしいおじさんはユーリカさんを見つけて剣を置いて近づいてきた。
「あぁ、この子がね……」
「この子……って、え!?!?ユーリカ、子供産んでたのか!?」
それを言った途端おじさんはユーリカさんにバコッという音とともに頭を殴られてた
うわぁ……超痛そうなんだけど……
ユーリカさんがおじさんに何やら説明したみたいで一瞬険しい顔をした後に私に向き直った
「お前さん、冒険者になりたいのか?」
「1番稼げると言われたので」
それを聞いておじさんは眉間に皺を寄せた
「命を危険に晒してまで金が欲しいのか?」
「私が平穏に暮らすためにはお金が必要なんです。」
ユイは両手にぐっと力を込めて真剣な目でおじさんを見つめる
これは譲れないのだ。私は絶対に平穏な暮らしを手に入れるのだ。
だが、私が真面目に話しているのにおじさんは目を丸くしたあと大きなため息をついた
「お前さん、それは……矛盾してないか……」
そうです、ユイは天然なんです!!!
次は冒険者ギルドへ行きます(多分)