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13.悲しみと驚き

あの後すぐに中が騒然となったのだけれど、ギルマスは私を奥の部屋へ行くよう促した


私も、何の話かくらい分かっていたし、初めての事に体が震えてしまっていてレティと一緒にいたかったから、小さく頷いて奥の部屋へ向かった



少しするとギルマスが戻ってきて、私とレティの座っている向かい側のソファに腰を下ろした

「まずは……レティ、こっちへこい、ユイに言うことがあるだろう」


その言葉に私に抱きついていたレティの体が震えたのがわかった


「ギルマス……さん、あんまり、レティを責めないであげてください……っ、レティも、反省して」

「ユイ……っ!!ごめん、ごめんね……私が大きな声であんなこと言っちゃったから……」


レティは突然私の体からバッと体を離すと、私の前に立って、謝り始めた

でも、下を向いた顔には涙の筋が通ってるのだって見えてるし、服の裾をぎゅっと握ってる手も肩も、震えちゃってるのも分かってる。


ユイは大丈夫、と言って、レティをもう一度抱きしめた


レティの肩越しに見えるギルマスは、すごく苦しそうで、ユイはレティを離し、横の椅子に座らせて、自分も座った


「ユイ……お前はまだ、自体がわかっていないのかもしれないが、あの人はこれまでにも同じようなことをしていてな、これまでに目をつけられた子が悲惨な目にあっているのを見ているだけに大丈夫だ、なんて言えないんだ」


ギルマスの言葉に、大丈夫だとは思っていなかったけど、悲惨な、と言われて不安にならないわけがなかった


「それは……どういう……」


「いい貴族……まぁそうそういないが、家に魔力の高い子が生まれたして、売る……とするだろ?そうすると身の安全の保証と共にの契約の場合がほとんどなんだ。魔術契約だからそれが破られることは無い、子供を作って、あとはそいつと仲良くするか城の中で自由か……みたいな感じなんだが、あの人は……勝手に攫っていって、そのまま……っ、とにかく、最低最悪の男だ。」


ギルマスは拳をぎゅっと握って、見たこともないような形相で机を睨んでいた





この世界は、だいぶ危ない世界じゃないか……安心なんてできなかった、神様に騙されたのかなぁ……

そんなことを考えながら、ユイは街中を歩いていた


あんな事があってすぐだけど、ユイはじゃあ、私もう帰ります、とだけ言って出てきたのだ


エルノア……


ユイは金髪碧眼の女神の姿を思い出していた


……あれー、そう言えばなんかどっかで最近……


だが、思い描いたその姿に、最近見かけたような既視感を覚えた

いやぁ、でも、女神様はあの日以来あっていないし……この世界の神様はサニア様?だっけかな、その人が作った世界は全然安全じゃなかったよってエルノアに教えてあげたいよ……

私みたいな人がまた出ない為にも……って私みたいな人が何人もいたら困るか!!


そこまで考えてユイは笑いがこみあげてしまった


「っふふ、何言ってんだろ私」


いや、言ってないし思っただけだけど、ゲームで死んじゃって転生したことも、もうお母さんと会えないことも、女神様とか神様がいて、会っちゃってるってことも、全部全部、全然リアルじゃなくて。


……親近感がわかないって言うか……、


近くで水の音がする、そう思って顔を上げると、大きく円形に広がっている広場のような場所の真ん中に、綺麗な噴水があった


ユイは綺麗だなー、と思って、端にあるベンチに腰を下ろした


「今日、私、涙腺緩すぎじゃない……?」


言いながら自分の声が鼻声になっていることにも泣けてきて、下を向いて歯を食いしばって嗚咽を噛み殺した


お母さん、お母さんっ、会いたい、会いたい……っ


そんな気持ちが、どんどん目から溢れていくみたいで、心臓がキューっとしまっていく感じがした、ふいてもふいても涙が次から次へとでてきて、止められそうもなかった


散々泣いて、頭の中が空っぽになって、もう何も考えたくないなって思った時、それは起こった


何かが光ったような気がして、顔を上げると、噴水の真ん中にある銅像が、こちらを見ていた


え、いやいや、こっち見てるわけないよね?銅像と目が合うわけないじゃん?


なんか不気味だな……そう思って立ち上がったユイの姿は、次の瞬間広場から消えていたのだった





「まって、これは……再びの既視感……っ!」

ユイは自分の現状に思わず眉間に指を持っていった


今まで私、噴水の広場にいたよね……


それがなんで、エルノアの場所みたいな所にいるの……!?


「やぁ、君がエルノアの苦労人か」


「……っ、誰、ですか」


金髪碧眼の男の人が目の前に急に現れたのを見てユイは卒倒しそうになるが、どうにか堪えてそれを聞いた


「あれ、エルノアから聞いていなかった?僕はサニアだよ、よろしく」


え?と少し驚いたような顔をして見せたあと、その人はそう言った


「えっ……あ、ですよね、エルノアの名前が出て、この空間の時点で若干察してました」


あ、そう?とにこやかに笑われて、ユイはどうしたものだと少し狼狽えたが、よくよく見ると彼の右手にはティーカップ、後ろにはソファがあった


え?この空間何?


ユイは全ての考えを差し置いてその疑問がついてでた

だがふんわりと笑っている彼の顔を見ていると聞く方が馬鹿のように思えてきて、ユイは軽く笑ったのだった


座って座って〜とソファに座らされ、ティーカップに入れられた紅茶を出されて、一口飲んで……となんか友達の家に遊びに来たのかという錯覚にはっ!となりユイは聞きたかったことを聞いた


「あの、サニア様?なんで……私ここに……まさかまた死にました?」


何度も何度もなんでこの空間に……という気持ちから少しトゲが出てしまったかとユイは少し焦ったが、それも杞憂のようだった


「ううん、エルノアが何回もユイは元気か幸せかって聞いてくるからさ……だったら見にこれば?って言ったの、そうして見に来たら、ユイの姿を見た途端に大事なこと何も言ってない!!って泣き出しちゃって、ふふ、可愛かったなぁ……それでね、だったら僕が言っておくから大丈夫だよーって言ってね、さっきようやく帰ったってわけ、それでその後ユイのこともう一度見たら泣いてたから……連れてきちゃった」


エルノアと仲がいいのがすごい伝わってきたけど、連れてきちゃったって、なにそれ簡単に連れてきていいのか


「それで……なんで泣いてたの?」

「お母さんの事とか、これからの事とか、死んじゃったんだってこととか……色々、考えてたら……」



俯いてしまうユイに、サニアはそっか、と言って少し考えた風にした、


「お母さんには、もう会わせてあげられないけど、ユイが今のお母さんの様子を見ることならできるよ」


「ほんと……?」


それは、ユイにとって他にないほど嬉しいものだった


飛びつきそうな程のユイに、サニアはだけど、と言って停止をかける

「今は……その、荒れてる時期だから、ユイは辛いかもだけど、それでも、大丈夫?」


それは……そうだろう、ずっとふたりで暮らしてきたんだ、そんなユイがいなくなったら……


ユイはそれも考えた上で、頷いた



サニアはユイの返事を見て、何も無いところから急に鏡のようなものを取り出した


「今からここに魔力を流して、エルノアの世界を写すけど、こちらからはなんの干渉も出来ないからね、それだけは覚えておいて」


「わかった」


そうして、サニアの鏡のようなものの表面が霞んで、ゆらゆらと揺れ始めた


すると、急にすり泣くような声が聞こえてき始めた


「結衣っ、結衣……なんで、どうして……っ、まだ、これから……っなの、に……うぅっ!結衣……」


俯いている女性は、私の……お母さんだ、私のヘッドセットを強くにぎりしめて、机に座って泣いていた


「おかあ……さん、」


ユイは目を見開いて鏡のようなものの縁に触れた


「ユイ」


サニアは私を見て首を横に振ったけど、鏡のようなものの中からは、


「結衣……?結衣、なの?」


お母さんの、そんな声が聞こえたんだ







「まさか……ここまでとはねぇ、恐れ入ったよ」


サニアがカップを持ってへらりと笑う

「……ありがとうございました」


どうにも、サニアが言うには私が魔力を入れながら触ったから、声が通じてしまったらしい、その時に、どうしても伝えなくちゃ、と思って、「私は生きてるから!!お母さんも……元気で生きて!」

って言ってしまったんだ、お母さんはヘッドセットが言ってるものと思ってヘッドセットを抱きしめていたけれど、伝わったならいいやって思ったんだ


サニアには本当は死者に口なし、通じちゃダメなんだからね


と怒られてしまったが、


あの後さんざん泣いて、サニアに回復魔法をかけられてしまうくらいひどい顔になるまで泣いて、スッキリした顔になったユイはサニアに入れてもらった紅茶を美味しく頂いた






そしてその後はサニアのエルノア可愛い自慢が続いた



愛の力ですかね……


次は地上に戻ります

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