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12.クエスト報告



ユイは扉を開けてすぐにカウンターに直行した


「レティ!これ、魔石!」


桃色の髪の毛を見つけてユイは喜びのあまり思わず話しかけた


「えっ、ユイ……じゃないわよね、そんな早く終わるはずないもの。あら、魔石ですか?どうしました?」


レティは一瞬驚きに目を見張ったあと、顎に手を置いて考えるような仕草をした。そしてなんと綺麗な笑顔で他人行儀に話し始めたのだ。


レティ……?えっ……レティが……レティがおかしい!!!


「れ、レティ……どうしたの……?過労からの記憶喪失になっちゃったの……?」


「嘘でしょユイなの!?えぇ!?あなたこそおかしいわ!!初めての依頼でBランククエストでこんなに早いわけないでしょう!?普通なら今やっと何もせずに往復で帰ってきたくらいよ!!!」


レティは可愛くて大きな目をこれでもかと見開いてそうまくしたてた


「レティ……!可愛い顔が台無しだよ……!」


ユイはそこじゃない、と誰もが突っ込みたくなるような所を心配してオロオロとする


「それに……」


レティがまだ何かを続けようとした時だった


「初任務でBランクの魔物を倒したってのは……この銀髪のねーちゃんか?」


突然、説教顔だったレティの顔が引き攣った


なんだか聞いたことのある声だな〜と思っていると

おい、という低い声とともにカウンターに影がさした


ユイが恐る恐る後ろをむくと、そこには強面の男がいた


それは、いかにも俺は悪役だ……と体全体で表現しているような男は私の顔を見るとほほぉ……と言ってニヤッと笑った

「誰かと思えば……昨日のねーちゃんじゃねぇか」


男にそう言われたものの、ユイはピンとくるものはなかった


「入口で立ち止まってたのは初めて来たからだったんだなぁ?」





「あっ!邪魔だの人!」


そうだそうだ思い出した!昨日ギルドの中がすごくて見渡してたら邪魔だ、どけ!って言ってきた人!!


ユイは覚えていたままのことを言ったのだが、案の定男の眉間に皺がよった


「どんな覚え方してんだよ……まぁ、それはいい……嬢ちゃん、冒険者ランクはいくつなんだ?」


レティが後ろで鋭く息を呑むのがわかった、どうやら、この男は見た目の通り"悪役"らしい。


「Bランクですけど」


そう言い放ったものの、気づけば室内の人の目が私に集まっているのがわかった


「へぇえ?Bランクの冒険者が()()()()クエストで同じランクのクエストをクリアしたのか?」


「そうよ、そういう事もあるでしょう」


ユイは何がおかしいのか、とあくまで毅然とふるまってそう言った


だが、それを聞いた男はほぉ!とさも嬉しそうに言ったのだ


「初めては……みんな怖がって帰ってきちまうんだよ……嬢ちゃんみたいな度胸の座ってる奴もいる、だが大体が本物を間近で見ると怖気付いて逃げ帰ってくるんだ!……そして結局は自分の1ランクか2ランク下のクエストを受け直す」


ユイはそこで初めてしまった、と思い、背中を冷や汗が伝った


ユイがもしも魔石をカウンターに置いていなかったら話は違ったかもしれない、倒せなくて逃げてきてしまった、クエストを変えられる?とでも言っておけば逃げれただろう、

だが、物的証拠がそこにある、逃げ場はなかった



その時だった、ギルドの扉が空いたのは。


静かだった室内に、軽く鳴る鈴の音、皆が一斉にそちらを見た


「……へぇ、可愛いじゃないか……この子かい?」


入ってきたのは薄い紫色の少し長めの髪の毛を先だけ弱い巻が付いている男だった


歩くだけで品が漂う……といった風に感じられた

そしてその男は下僕と見られる数名の男を連れてこちらへ向かってくる


レティが奥の部屋にかけていくのが目の端に見えた


どこへ行くのかと皆が見る中、その男は私の目の前で止まった


私になんの用があるのかとユイが男を見上げた時だった急にユイの顎を細い指で持ち上げた


「っぅぬっ!?」


すぐ後ろにあるカウンターに背中がぶつかって思わず手をつくが、それでも男は止まらずに

薄紫の髪の男の顔が迫る


背中がそって力が入らない……っ!


ユイの顔が恐怖と嫌悪に強ばる

顔をそむけたいのに顔が固定されていて動かせなかった


やめて、と声に出したいのに、喉からは引きつったような声しか出なかった


「上玉じゃないですか」


私の眼前で止まった、無駄に整った男の顔がニヤリと笑ってそう言った



「そこまでにして頂こう」



目線を上に外し、小さく舌打ちをして男は体をパッと離した

レティがユイ!と叫んで私のことを抱きしめてくれた


少し震えている小さな背中に手を置いて、私も抱きしめ返す、温かさを感じて、それに少し安心した


「ごめんね、私のせいで……っ」


ごめんね、ごめんね、と小さな声で言っているレティに、大丈夫だよ、と言う


「うちのギルドメンバーに手を出さないでもらいたい」


レティから視線を外してギルマスに向けると、薄紫の男とギルマスが対峙していた


「はは、手なんて出していませんよ、ただ顔を見させて頂いただけで。」


困ったものだ、とでも言うように手を上げて肩を竦めた


「とりあえず今日のところは他の者の迷惑になりますので、お帰り願えますか?」


ギルマスが男に(うやうや)しく頭を下げた


それを見て男はまたも小さくチッと舌打ちすると顔に再び笑顔を貼り付けた。


「今日のところは、ね」


背を翻し、帰り際にそう小さく吐き捨てて扉を出ていった


あとに続く下僕達と強面の男が出ていくと、ギルマスが大きなため息をついてカウンターに手を着いた





「はは、もう、か、早いなぁ……」




ギルマスの疲れ切ったような声が、静まった屋内に響いた


気分が悪くなってしまった人はすいません……



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