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11.嘘つき



森の中を歩いていて聞こえるのは、2人の息遣いと枝をふむ音、風で木が擦れる音だけだった





ーーーあの後から、ゼルディアは何も喋らない。



クエスト達成を祝ってくれたあとの言葉……何度考えても、私にはよく分からなかった。


私がいた時は魔物がいなくて、いなくなったら……魔物が出る。


それがどういう意味なのか、分からない……



行きに走って通ったからなのか、その帰り道は酷く長いものに感じられた。








森の出口が見えてきた


「はぁ、魔物の1匹くらいでてくれれば……俺だって……」



ゼルディアのそんな呟きに、もしかしてゼルディアがずっと喋らなかったのは戦闘に参加させてもらえなかったからなのかと思ったユイはもしかして……と言った


その言葉にゼルディアはどこか寂しそうにも苦しそうにも見える表情で眉をひそめた


「……なぁユイ。これからも冒険者を続けるつもりなんだろ?」


何だ急に……

ユイは不審に思いながらも頷いた


「そりゃ……もちろん、これでお金を稼ぐつもりなわけだし」


ゼルディアはそれに目を瞑って深く深呼吸をした


「そうか、俺の事、嫌いではない……か?」





……




…………





「なんで!?!?!?!」


なぜだ!?どういう流れだ!?なんで今なんだ!?うん!?



「嫌いになんてなるわけないじゃん!!ゼルディアが怪我しちゃったのだって私が声をかけたからだし、手を出せなかったのも私が先に倒しちゃったからだよ!?ゼルディアのことそれだけで嫌いになるわけない!!私の大切なお友達だもん!!」



ユイは口を開こうとしたゼルディアに詰め寄ってこれでもかと言うほど一息に言った



ゼルディアは絶句した。



「そっ……か、おとも……だちな……うん、まぁ嫌いじゃないなら……あぁ、そうか……いやでも、これからだ……頑張れ俺」



最後の方はなんでだ?と思ったものの、ユイは伝わってよかった、とばかりに笑顔になった



「ユイ、さっきも言ったんだが、お前がいる時に魔物が出てこないのは……魔力値が高いから。そうだろう?」


その言葉にユイはあっ!!!!!!と思わず声が出てしまった



そうだ!!!!!その話は……ユーリカさんがしてくれた、あの、私が魔物に襲われなかった話だ!!!


そして、それは誰にもバレちゃいけなくて……バレたら貴族に売られてしまって……



って、バレた!!!!




「えええええっとそっそそれはちが」

「誰でもわかる。」


急に焦りまくるユイにゼルディアは諦めろと肩に手を置いた


私の平穏ライフへの道が貴族に売られることによって終止符を打たれてしまうと涙が出てくる


「えっちょっ、ユイ!?なんで泣く!?」


焦るゼルディアにユイは首振った


「うえええっ、き、ぞく、に、売らない、でぇ……」



ひっく、と肩を震わせて泣くユイにゼルディアはまたも絶句する


「ユイ……俺は貴族にユイを売るなんて絶対にしない。絶対だ。……今からだってほかの貴族に取られないように渡そうと思ったのに……ほら、ユイ。顔を上げろ」


ゼルディアは来ているロングジャケットのポケットから何かを取り出しながらそう言った


「……ぅ、ほんと……?」

「ほんと。ユイ……手、出して。」


諭すように目を合わせて言ってくるゼルディア。


ユイはおずおずと手を差し出した


「はは、両手じゃなくていいよ、左手、……っし、これ、ユイにやるよ」


「これ……っ!」




ユイの左手の薬指にはまっていたのは銀色のリングだった。



ゼルディアはにっこり笑っているが、ユイはそれどころしなかった


「ゼルディア……!!こんな時に、ぷ、プロポーズ、なんて!」

「……、鈍感なくせに……ゴホン、それは魔力を抑える魔法具だ。ほかの貴族にもお前の魔力値が高いことを知られないし、お前が冒険者をする上で必要だから、それ、やるよ」


ゼルディアは小声で何かをぼそっと言ったあとにそう言った。それににっこりわらってそれがねーとお前魔物討伐系のクエスト受けれなくなるぞ?という脅しつきで。


ユイは最初の方こそ聞こえなかったがそれを聞いて顔を真っ赤に染めあげた


「あっ、あ、あー、そういうね!うん!あり、がとう!!もらっとく!!」



急にリングをはめている左手が熱くなってきたような気がして、ユイは左手を後ろに隠して右手で覆った


ゼルディアは急に近づいてきて、なんだと上をむくと、耳元でこう言ったのだ


「まぁ、それもあながち間違ってねーかもな……さっ、行こうぜ、報告報告〜」




……っ、

なにあれ、





ユイは心臓が耳元で鳴っているようなバクバクうるさいのを抑えようと耳を覆うが、その音は激しくなるばかりで、一向に消えてくれなかった



頭の後ろに手を組んで先立って歩いているゼルディアの背中を目で追って、慌てて追いかけた





ユイは下を向いて、なぜだか顔を上げることが出来なかった





森を出て王都に入り、王宮と冒険者ギルドの分かれ道で2人は別れを切り出した


「じゃ、クエストお疲れ様。俺は大丈夫だけど、お前血だらけだからそのマント街中で脱ぐなよ?」


ユイは王都に入る時にゼルディアに待て、と言われて急いで戻ってくるからー!と走り去っていく背中を見、帰ってきたゼルディアの手にあるマントを、それで街中をうろつくな、と言われて貰ったのだった。


「うん、でも……今お金ないし……また今度洗って……って言っても落ちないと思うし、どうしよう……」


そういうとゼルディアはいーよ、と言って私の頭をくしゃくしゃと撫で回した


「うわぁあっ、な、何するの!?」

「今度また一緒に飯食ってくれる約束だけでいいよ」


ぐちゃぐちゃになった頭を手ぐしで直しながら、そんなことでいいの?と首をかしげた


「はは、じゃあな!また今度」

「うん!またね!」


去っていく背中にユイも手を振った




背中が見えなくなると、ユイは思い出したように左手を見た



「そんな……ね、」




異性に貰った、初めての物に、ユイは純粋に嬉しさが溢れた





「初めての依頼達成だもん。ユーリカさんになにか買っていってあげたいな!」





ユイはまだクエスト報告もしていないうちから何を買おうか迷っているのだった



実はここが1番描きたかったりした←


私の中ではここがようやくスタートって感じです、ここからだよね……!!←


次の回は荒れます

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