プロローグ
自分という存在は非常に幸福な運命の元に生まれたと思う。
資産家の父 聡明で頭の良い母 自分に兄弟は居なかったが
それ故に親の愛情を一心に受けて育つ事が出来た。
幸運だった自分はすくすくと育ち、そして年頃を迎えた。
自分の歳が十を超えた辺りだったか、それから隣家に女の子が引越して来た。
単刀直入に言えば、彼女が自分の将来の妻となる。
彼女は非常に天真爛漫で騒がしく、美人ではあったものの
最初自分は彼女の事が好きでは無かった。
しかし、なし崩し… っと言う言葉がある。
自分はいつの間にか彼女と恋仲になり、14歳の頃… 彼女が自分の子を孕んだ。
だが敬虔な十字教の信徒だった父は怒るどころかその事実を歓迎し
また同じ宗派に属していた彼女の両親もそれに同調した。
本当の所、自分は彼女とはプラトニックな関係を保っていたかったが
しかし彼女の言う所
「君はかっこいいから、将来誰かに取られるのが心配」
っと言う彼女の言葉に押されて、自分はなし崩しにその願いを聞き入れた。
そして共に両親が中絶を嫌う宗教に属していたという事も利用して
自分は彼女と14歳の時に「許婚」となった。
籍を入れなかったのはまだその年齢に達していなかった為
だが許婚となってそれからも、彼女は何の遠慮もなく子供を産み続け
自分が海外の大学に留学し、それから卒業、就職と年月を重ね
少し環境も落ち着いて来たな、言える頃には
自分と彼女の子供は13人という非常に子宝に恵まれた環境になっていた。
生まれた子供は全て女の子 男の子は一人として生まれる事は無かった。
勿論、その子供達の養育費を負担したのは自分だけじゃない
お互いの両親にも、かなりの負担をかけてしまったと思う
そして初めて許婚となったその日から20年近くの月日が流れ
あの頃小さかった娘達も大分大きくなった。
子供の何人かは国内でもっとも権威のある大学に通わせる事も出来
また何人かは芸能界へと入った。
自分は留学先の大国の元で技術者として就業し
たまに母国に帰っては父母の無事を喜んだ。
それからある夏の時期… 自分達は恒例と言っても良い
妻と私、互いの両親を連れての海外旅行へと出かけて行った。
勿論子供達も一緒だ。 今考えれば連れて行かなければ良かった。