表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

草好きのカニと一人遊びの幼女

作者: タハノア

 やぁどうも!ボクはカニだ!そこらの普通の平べったいカニと一緒にしてもらっては困るよ!


 グレー色でまるでお饅頭のように丸くて可愛くかつ強くてカッコイイすごいカニだ!


 とにかくボクはカニだ!


 いやカニになってしまったと言うべきかな?


 え?元は何だったかだって?そんなことはどうでもいい!もうカニになってしまったのだからね……


 では、カニになってしまったボクの楽しい人生いやカニ生か?とにかく新しい生活のがはじまったわけだよ!



 カニの朝は早い!


 そりゃそうだ日の出と共に動き出し日暮れと共に眠りにつく、だって暗くなると何も見えないからね!


 他のカニたちは夜行性らしいが、どうやらボクは違うようだというか本当にカニなのかも怪しいね。


 まず真っ直ぐ歩ける!横移動よりも動きやすいというか目が前に付いてるのに横にある歩くと足元が見えないよ!


 そしてハサミがすごい!大きい2つのハサミは力強くもありそして繊細でもある。さらにすごいのがお腹から生えてる4本の小さいハサミだ!ピンセットでつまむような繊細で細かい作業が難なくできる。人間の指なんかよりもよっぽど使いやすい!おっとちょっと余計なことを言ってしまったね。


 最後に!なんか……でかい!他のカニが数十倍はあるね!スイカぐらい大きい!ポーションの瓶なんかも軽々持てるよ。


 そんなわけで今や私はこの山を流れる小さな小川の王者である!


 一日の始まりは狩から始まる。今日も川の底で石に擬態しじっと待ち構えて魚を捕まえる。


 今日の獲物は虹色の水玉模様の魚だ。


 私は獲物を挟んだまま陸に上がるといつもまな板代わりにしているの平らな岩に置き自慢のハサミで調理タイムに突入する。内蔵を丁寧に取り除き完璧に下処理をする。お腹のちっちゃいハサミは万能だ!


 そして石を積んで作ったカマドに火をつける。


 え?どうやって火をつけたかって?魔法だよ魔法!火種の魔法!カニだって魔法ぐらい使うんだよ!


 下ごしらえした魚に棒をぶっ刺し火のそばに立てかける。


 なんで生で食わないかだって?味覚が変わってないからね生だと美味しくないんだよ。


 おっとそろそろ魚がいい具合に焼けてきたな~


 ガサガサガサ!ガサガサガサ!


 むむむ!何やら大きな生き物が近づいてくる!くぅ!魚は諦めてさっさと避難だ!


「あれ~こんなところに焼き魚が置いてある?」


 うわ~人間の女の子だ!なぜこんな山奥に幼女が一人で!?


「だれかいますか~」


 いないから早くどっかに行ってくれ!


「いないなら魚食べちゃいますよ~」


 イヤイヤイヤ!かってに食うなよ!


「いただきま~す!」


 あっあっあっ!ボクの朝ごはん……


 彼女は魚を平らげると「ごちそうさま」と挨拶をして火の始末まできっちりして、どこかへ行ってしまった。


 食事の挨拶がきちんとできる偉い子だね!ってそんなことはどうでもいいよ!ボクのご飯返して!


 仕方がない……木の穴に隠した”薬草”でも食べるか……


 ”癒やし草”に”毒抜き草”それに偶然見つけた超貴重な”天の露草”!


 もちろん食べるのは一番多い癒やし草だ。レタスに似た味の草をモッシャモッシャと食べる……雑食でよかった。


 さてと日課の草集めに出かけるか!この山は薬草の宝庫で、いたるところに有用な植物が生えている。特に必要というわけじゃないけどてつい集めてしまう。まぁ暇だってのが大きな理由だけどね。


 薬草を見つけては右ハサミで掴んで引っこ抜きお腹の足を使って器用に左ハサミに持たせていく。1時間もすれば左ハサミはまるで緑一色の花束を持っているかのようにパンパンになる。


 今日はこれぐらいでいいかな!木の穴までいき中に薬草を押し込んで小川へと戻る。


 そろそろお昼の時間なのでまた岩に擬態して川底に沈む……じっと待って……じっと待って……じっと待って……じっと待って……今だ!本日2匹めの魚を捕まえる。


 またせっせと下処理をして焼き魚を作る。


 う~ん!バッチリ焼けたね!いただきます!


 大きなハサミで魚を持って、お腹の小さなハサミでツマツマちぎって口へと運ぶ。うん!うまい!焼き魚はやっぱりうまいね!


「すっご~い!カニさんがお魚焼いて食べてる!」


 ボクはびっくりして食事の手を止めた……ヤバイ!人間に見つかった!


 サーカスに売られる!ボクは急いで逃げようとしたがすでに遅かった……


 幼女に背中を両手でガッチリと掴まれて持ち上げられている。もがくハサミや足は空を切り全く届かない。この幼女カニの弱点を知っている!


 ボクは観念して暴れるのを止めた。


「もう逃げない?」


 ボクは肯定の意味でハサミをカチッ!と一度鳴らし返事をした。


「絶対逃げたらだめよ!逃げたら茹でて食べちゃうからね!」


 サーサスに売られるなんて生温かった!なんと恐ろしいことを言うのだこの幼女は……


 ボクはもう一度ハサミをカチッと鳴らした。


「はい!お魚食べていいよ」


 なぜ自分がとった魚を食べる許可をもらわにゃいかんのだ!


 まぁ……食べるけどね……


「わぁ~上手にお腹のハサミで食べるんだね~」


「ここに住んでるの?」


 カチッ!ハサミを鳴らす。


「朝のお魚あなたのだったの?」


 カチッ!


「そうだったんだ……誰かに飼われてるの?」 


 カチッ!カチッ!否定の意味でハサミを二度鳴らす。


「野生なの?」


 カチッ!


「ふーん……やっぱりお話わかるんだね!」


 おうふ……つい話すのが久しぶりで普通に返事をしてしまった……


 カチッ!カチッ!


「お話わからないのにお返事はできるの?」


 カチッ!


「わかってるじゃん……」


 カチッ!カチッ!


「嘘つく子は茹でて食べちゃうからね!」


 また背中をガッシリ掴まれた……


 カチッ!カチッ!カチッ!カチッ!カチッ!ハサミを何度も鳴らして抗議する。


「もう嘘つかない?」


 カチッ!


 幼女は私を地面におろしながら話しを始めた。


「わたしね……村に同じぐらいの年齢の子供がいなくていっつも一人遊びしてるんだ。ちっちゃいカマドに魚を見つけてもしかしたら私と同じぐらいの子供が居るのかと思ったから見張ってたの、でも来たのはカニさんだったの」


 ふむ……山で一人遊びか……友だちがいなかったボクも山で動物と遊んでいたな……


「それでね……わたしとお友達になってほしいんだけどいいかな?」


 ボクは仕方がなくカチッ!と一度ハサミを鳴らした。


「ありがとー!あした魚のお詫びに良いもの持ってくるよ!」


 なに!?なんだ~とってもいい子じゃないか!明日が楽しみになったぞ!


 幼女はブンブンと手を振り「また明日ね~」といって走り去っていった。


 いや~まさか人間に見つかってしまうとはね……しかし、何を持ってきてくれるのかな楽しみだな~


 ボクは薬草をしまってある木の穴に潜り込み明日を楽しみにしながら眠りについた。


 翌朝ボクは魚を2匹捕まえて幼女を待った。下処理を終え棒を刺しておく。


「カニさんおはよう!」


 元気な挨拶にボクはハサミを鳴らして答えた。


「わぁ~お魚わたしのもとってくれたの?」


 カチッ!


「ありがとう!そうだ!これ持ってきたよ!」


 幼女は背中に背負っていたリュックから塩とバターと小さいフライパンとフライ返しを出した。


 ボクは嬉しさのあまりハサミをカチカチ鳴らした。


「よかった!喜んでくれて!」


 ボクは早速魚に刺さった棒を引っこ抜きハサミでぶつ切りにした。貰った塩の瓶をハサミで器用に持って、魚にふりかけ下味をつけていく。いい感じに塩がついたら次は火をおこしフライパンを温める。


「うわ!カニさん魔法使えるんだ!」


 カチッ!とハサミを鳴らし肯定して、バターを切り取りフライパンに入れ溶かしていく。プチプチと泡が立つのを確認したらそこへ魚を投入!


 じゅわ~っと食欲をそそる音と共にバターの香りが広がる。左ハサミでフライパンを持ち、上げたり下げたりして火力を調整する。右ハサミにはフライ返しを持ち焦げないように度々ひっくり返す。


「カニさんすご~い!お母さんみたい!」


 任せといて!人間の手より器用になったこのハサミで料理ぐらい楽勝だよ!


 いい色に焼き上がってきたのでフライパンを火からおろし土に押し付けて温度を一気に下げて焦げないようにする。


「お~!すごく美味しそう!」


 カチッとハサミを鳴らし、魚を突き刺していた棒で一切れ突き刺して幼女へと差し出した。


「ありがとうカニさん!」


 美味しそうに食べる幼女を見てボクも魚を食べ始める。


 塩分と油!最高!カニ生活を始めてから一番うまいご飯だ!


 気分が良くなってハサミをカチカチと鳴らす。


「そうだね~美味しいね~」


 お腹いっぱいになったボクは是非お礼をしたくなった。しかしどうやってお礼すれば良いのだろうか?うーん……そうだ!薬草をあげよう!


 魚に夢中な幼女のそのままにしてボクは木の穴まで行き癒やし草を一束掴み川まで戻った。


「あっ!もう!急にいなくならないで!」


 ゴメンの意味を込めてハサミを一度鳴らした。


「あれ?それ何?」


 ボクは癒やし草の束をぐいっと差し出した。


「くれるの?何の草かわからないけど、ありがとうね!」


 ありゃ……わからないか、まぁ仕方がない親御さんがきっと分かるだろう。


「ごちそうさま!今日はお昼から病院に行かなきゃいけないからまた明日ね!」


 ん?すごく元気そうだけど、どこか病気なのかな?うーんそうだ!瓶を持ってきてもらおう!えっとどうやって伝えようか……そうだ!


 ボクは塩の瓶をコツンコツンと叩いてアピールしてみる。


「なに?塩がどうかしたの?」


 カチッカチッ!


「違うの?じゃあ……瓶?」


 カチッ!


「瓶ね!瓶がほしいの?」


 カチッ!


「わかった明日空き瓶を持ってくるね!」


 カチッ!


 無事に意思が伝わったようで明日瓶を持ってきてもらえることになった。そうと決まれば明日の準備だ。


 ボクはフライパンを川できれいに洗った後に癒やし草をまな板岩の上で処理し始めた。硬い葉脈を取り除き葉の柔らかい薬効が高いところだけを丁寧に切り取る。


 切り取った葉を小さいハサミで細かく刻む。人間より作業がしやすく驚くほど早く下ごしらえが終わってしまった。


 フライパンで湯を沸かし、刻んだ癒やし草を入れて超弱火でコトコトと煮詰めていく。ときどき薪を足しながらフライ返しで混ぜ続けること6時間……ついにマキシポーションが完成した。


 ふむ!腕は衰えていない!それどころか下ごしらえのが早く終わったから前より早く作れたな!まだ瓶がないのでフライパンに入れたまま大きな木の葉っぱで蓋をして、木の穴に潜り込みポーションの出来に満足しながらゆっくりと眠りについた。


「カニさーん来たよ~」


 ボクは幼女の声で目を覚ました。どうやらだいぶ疲れたらしく寝坊してしまったようだ。ハサミをカチカチ鳴らしながら川へと出ていく。


「あっ!来た!どうしたの?寝坊した?」


 カチッ!


「夜更かししてたの?お母さんに怒られちゃうよ!」


 カチッ!とハサミを鳴らしフライパンの上の葉っぱをどかした。


「なにこれ?綺麗な緑色だね」


 底が見えるほど透き通った緑の液体を見て幼女は綺麗だねと喜んだ。ボクは塩の瓶をコツンと叩いた。


「あっ!これを瓶に入れたかったのね!」


 カチッ!ハサミを鳴らし瓶を受け取るとボクはフライパンの縁をハサミでぐいっとつかみ尖った形状に変形させ注ぎ口を作り慎重に瓶へと注ぎ込み蓋をして幼女に渡した。


「すごくきれい!」


 うっとりと眺める幼女……もしかして眺めるものだと思ってる?ボクは塩の瓶を持って飲むような仕草をしてみる。


「え?これ飲み物?」


 カチッ!


「そうなんだちょっと飲んでみようかな」


 幼女は恐る恐るマキシポーションを一口飲んだ。すると幼女は弱い光りに包まれ体にあるあらゆる怪我を治療した。


「うわわ!なにこれすごい!擦り傷がみんな治っちゃった……」


 どうやら成功したようだ。これでフライパンの恩返しは出来たかな?


「ありがとう!病気のお母さんに飲ませてあげるね!」


 幼女はそう言って走って帰ってしまった。


 なんだ病気なのは母親だったのか、まぁいいか喜んでたし。


 彼女が帰ってしまったのでボクはまたいつもの日常へと戻った。


 魚を食べて草を集めて眠る。


 

 次の日の朝、魚を取って幼女を待つ、すっかり日常にあの子が入ってしまったな。


「あ!カニさんお薬ありがとう!お母さんの体調少し良くなったみたい」


む?少し?あれは最高級のマキシポーションだぞ?そんじょそこらの病気なら一発で治るはずだけど……


「あのね……お母さんの病気はね”死魔黒病”なの……」


 幼女は目に涙をためて泣くのを我慢している……


 死魔黒病は、長らく不治の病とされていて治療法を見つけたのは最近だ……


 突然ガサガサッと大きな音がしたので、さっと岩陰に行き石に擬態する。どうやら大人の男性が来たようだ。


「アニエ!こんなところにいたのか!母さんの容態が急変した急いで病院へ行こう!」

「え?お父さん!お母さん死んじゃうの?」


 お父さんと呼ばれた男はぐっと唇を噛みしめしばらく黙った後に


「とにかく急いで母さんのところに行こう……」


 そう言って二人は走り去っていった。


 死魔黒病か……天の露草もあるし……やるか……


 まずはフライパンに水を張りマキシポーションを作る。出来上がった後もさらに煮詰めて水分を全て飛ばしわざと焦がし”マキシ焦げ”を作る。


 次に毒抜き草の根っこだけを細かく刻み”マキシ焦げ”とよく混ぜ合わせる。すると焦げの成分が中和され凝集された緑色の粉末の”マキシ粉薬”になる。


 もったいないけど瓶がないので仕方なく塩を捨てよーく水であらい空き瓶を作りマキシ粉末を入れる。


 次にフライパンにグツグツと煮えたぎるほどの高温のお湯を用意し天の露草を3秒半湯通しする。


 湯通しした天の露草をマキシ粉末の入った瓶に一緒に入れ、その後フライパンと葉っぱを使い蒸気を集めて蒸留水をポタポタと瓶に入れていく……


 瓶が一杯になったら蓋を締め川の水に晒してじっくりと冷やす。


 後は天の露草が分解され溶けて奇妙な虹色になれば完成だ。


 ボクはしばらく仮眠を取った後に祈るような気持ちで川で冷やしている瓶を覗き込んだ。バッチリ薬ができていた。


 その名も”天使の雫”ボクが”死魔黒病”に対抗するために開発した完全回復薬だ。


 さて……もう朝になってしまった久しぶりに徹夜したな……時間もなさそうだしボクが直接持っていくしかないな……


ーーーーーーーーーーーーーーー


 個人が運営する小さな病院のある一室で医者と幼女の父親が話しをしている。


「妻の容態は……」

「体調はかなり回復していたので昨晩は乗り切れましたが残念ながら死魔黒病の進行は止まっていませんでした」

「なにか!なにか手立ては!」

「大錬金術師キャンサ様が開発なされた”天使の雫”以外での治療例はないのです……」

「”天使の雫”というのはどれぐらいの値が……」

「実はキャンサ様はレシピを公開しないまま急に姿を消してしまい”天使の雫”がこの世にたった6本しかありません」

「この世に6本……」

「しかもその6本は王族が管理していて入手は実質不可能なのです……それどころかキャンサ様の薬は王族と貴族が独占していて……」

「それでは妻は!」

「残念ながら……」


 幼女の父親は部屋から出ると妻の病室の前で不安そうにしている娘が目に入る。幼女の父親はどうしようもない怒りと絶望を抱え今にも感情が爆発しそうになりながらも娘を気遣い頭をそっとなでた。


「お父さん……お母さん大丈夫だよね」

「ああ……きっと……きっと……」


 大丈夫だよ……そのたった一言の優しい嘘を幼女の父親は声に出せなかった。


 感極まっているところに妻の病室からカチャカチャと妙な音が聞こえてくる……幼女の父親は急いで妻の部屋に駆け込んだ。


 父親の目に飛び込んできたのは妻に襲いかかる大きなカニの姿だった!


「妻から離れろ!」


 彼は近くにあった花瓶を手に取ると溜まりに溜まったった怒りと絶望を乗せてカニを思い切り殴りつける。


「お父さんだめーーーーー!」


ーーーーーーーーーーーーーーー


 ああ……しくじっちゃったな……


 頭が割れるようにいたい……いや割れている……カニ味噌もでちゃってるしもうだめだな……


 でも……薬は無事に飲ませられた……幼女の母親はもう大丈夫なはずだ……


 搾取するだけの汚い貴族や王族なんかより自分が好きな人を助けたい……最後にその願いが叶えられてよかった……


 ああ!幼女が泣いている……母の不幸にも涙をこらえた彼女がボクなんかのために泣いてくれている…‥


 なんだか申し訳ないな…‥


 短かったけど良いカニ生だった……


 もう目が見えなくなってきた……




 暗いなぁ……




ーーーーーーーーーーーーーーー


 ある家の庭には珍しい祭壇がある。


 グレーの丸い変わった形のカニを守り神として崇めてあるのだ。


 その祭壇に手を合わせてお祈りしている少女がいた。


「アニエ~!そろそろ出かけますよ!」

「はーいお母さん!」

 

 少女は返事をするとお祈りに戻った。


「カニさんお母さんはすかり元気になったよ!これからあなたがいた小川にお供えを持っていくからね」


 少女はお祈りを終えると家族3人で山中の小川へ向けて斜面を登っていく。彼女のリュックには、塩とバターとフライパンとフライ返しそして空き瓶が入っている。


「この少し上だよ!お父さんお母さん早く!」


 明るく振る舞う少女をみて両親は昔を思い出しながら話をする。


「アニエが明るくなってよかったわね……あなた」

「ああ……私の失敗で娘はひどく落ち込んでしまったからな……」

「私もアニエから話を怒っていたんですよ、でも不幸な事故でしたからね……」

「すまなかったな……」

「いいのよ祭壇も立ててくれたし私もアニエも許そうって決めたの」


 少女は二人を置き去りにしてカニと初めて会った場所へと急いだ。


 そこには……石で作った小さなカマドで火が燃えていてその火では棒に刺さった魚が焼かれている最中だった!


「ねぇ!カニさんなの!?カニさん居るの!?いたら返事して!」


 静かな森にカチッ!カチッ!と2回ハサミの音が響いた。


 否定の合図だ!


「いるじゃないの!嘘つき!」


 少女は人生で初めて嬉し涙を流した。




 END



 

 なんとなく短編を書いてみました。

 感想お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ