049 新たな体
「どうですか、どうですか、私はいいと思います、可愛いと思います、もうソフィアって呼んでいいですか、いいですね、呼んじゃいます!」
そう言われて目を開けば、視界一杯に、ものすごい興奮したミシェルが飛び込んできた。美少女と言えど、この至近距離と興奮具合は少し怖い。
「お待ちください、ミシェル様!」
ミリアがそう言うなり軽々と私を抱き寄せてミシェルから引き離す。
「何ですか、私を邪魔をするのですか!? ソフィア強奪罪ですよ! ソフィア独占禁止法違反ですよ!?」
どんな罪と法律かはあえて聞かないけど、そんなものは存在しない。
「いえ、そうではありません。こちらに」
そう言って私を抱えたまま、ミシェルの手を引いて、客間の隣にある小部屋へと先導していく。
「ミリア、先に説明をして下さい、そしてソフィアを返してください!」
プクッとまたもリスのように頬を膨らませるミシェルに、ミリアは「実は私に試してみたことがあるのです」と言いつつ扉を潜り抜けた。
部屋のサイズ的にはミシェルの私室とそう大きくは違わなかったが、いくつか並ぶワードローブの中にある、壁面に固定された大きな姿見の前に私を下ろした。
そこへミシェルが小走りで駆け寄ってくるが、さっとミリアがそこに手を差し出して接近を阻止する。
「もう! 何ですか!?」
プンプンと怒りの度合いを上げてもなお可愛いミシェルだが、ミリアは私へと視線を向けながら言う。
「人形のサイズを写したので、見てくださいソフィア様のサイズは、少し大きな赤ちゃん、おおよそ2歳児くらいの身長しかありません」
背を押されて今度は私の横にならばされたミシェルとお互いにお互いの顔を見合ってから鏡を向く。
確かに言われた通り、とんでもない身長差だし、普通に横を向けば、ミシェルのドロワーズどころか、太ももがやっとといった目線の低さだ。
「これでは、折角のお揃いのドレスなのに、ソフィア様のモノはベビードレスになってしまうと思いませんか?」
そうミリアに言われて、ミシェルは素直に「確かにそうね」と頷いた。
「ですので、今のソフィア様の体なら、できるかと思ったのです」
「できるって?」
私が首を傾げかけたところで、ミリアが「身長110へ伸びよ」と私というよりは私の体に囁きかける。
直後、振り向きかけてもいた私の視界は、ミシェルの太ももから、ドロワーズおへそと瞬く間に駆け抜けて、やや膨らみかけた胸元で止まった。
「え、うわ、なに!?」
慌てて何が起こったのかと鏡を見れば、そこにはミシェルの肩ほどの背丈まで急上昇した私の姿が映っていた。
「やはり、できましたね!」
ふぅとばかりに袖で額を拭うそぶりを見せるミリアの顔は、全面に安堵が滲んでいた。
確かにさっきのちょっとおかしかったミシェルを思えば、失敗してたら悲惨なことになりそうだったのは間違いない。
そして、そのミシェルは鏡に映った姿を見つめたまま固まっていた。
「み、ミシェル?」
「すごい、すごいわ、ミリア! 貴女天才だわ!!!」
そう言って私に抱き着いてくるミシェルは、ほのかに温かい。
「あ、あれ、もしかして……」
ミシェルに抱き着かれながら、手を伸ばして鑑に触れれば、触れた指がほのかにひんやりとした感触を伝えてくる。次いで、少し申し訳ないけど、ミシェルのお尻をドロワーズ越しに触れてみた。
密着されているので他に障れる場所がなかったのだから仕方ない。仕方ないと言ったら仕方ない。
「そ、ソフィア?」
恥ずかし気な、でも少し甘い声が私の頭に振ってくる。顔を上げた私は、そんなミシェルに向けて、喜びを爆発させてしまった。
「感触があるのよ、ミシェル!! この体は触った感触だけじゃなくて、熱の感触も、布越しに徐々に伝わってくるミシェルの熱までわかるのよ!」
たぶん、だいぶはしゃいでいたんだと思う。それがミシェルにどう映ったのか、私の言葉がどう聞こえたのかはわからないけど、ミシェルは顔を真っ赤にしてフリーズしてしまった。
「許容量を超えてしまったようですね」
ひどく冷静な声でミリアはそう言うと、ミシェルを鏡の反対側の壁に置かれていたスツールに腰かけさせてから、私に振り返った。
「隠すものはないとはいえ、さすがに淑女として何も履いていないというのは問題ですので、こちらをお召しください」
そう言って、いつの間にかこの部屋を覗き込んでいたメイドを手招きしたミリアは、真新しいレースで飾られたドロワーズを持ってこさせる。
ミシェルのモノはアクセントとして、水色の爽やかな色合いのリボンが所々飾られていたが、私の前に持ってこられたものはピンクで装飾されたミシェルとの色違い。お揃いだった。
メイドさん達に言われるまま、片足ずつドロワーズに足を通して、お腹の前でリボンを締めて貰う。すこし布と肌に隙間があるので、現代の下着の感覚から行くと少し心もとないもするけど、まあ、人形の頃とそう変わらないので、違和感というほどのことはない。
さらに室内履きの布の靴を履かせてもらう。
それが終わると、再び私はミリアの前に立たされるようにして、鏡と向き合わされた。
「それでは、より姉妹に見える様に微調整をさせていただきますね」
ミリアの宣言と共に、腰に、胸にとミリアの手が這いまわる。
「接触調整、膨らめ」「接触調整、縮め」
次々と放たれるミリアの言葉に反応して、私の体がブルブルと震えながら、変形していく。
とても言えない場所にも平気で手を伸ばしては、接触調整とやらでいじられていく体は、あっという間にジュニアアイドル顔負けのスタイルに仕上げられてしまった。
最後に、ムニッと私の胸に触れたミリアは満面の笑みで「まだ、お姉さんを越えさせるわけにはいかないし、もう少し大きくなったらね」と笑って見せた。
えーと、私成長するんでしょうか……。
思わず口から乾いた笑いが零れてしまったが、ミリアには気にならないことだったらしい。
「では、次は髪の長さや肌の色合いを調整しましょうね」
そう言って微笑むミリアに、なんだかミシェルに似たものを感じた私は、新たに獲得した温感がお仕事をしたせいか、すごく背が冷えた。まだ、私の改造は続くらしい。




