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リエラと創ろう迷宮都市!  作者: 霧聖羅
逃走植物と虫の森
94/200

442日目 燃える!

アッシェ:三つ目族の女の子で、調薬担当。「~ですぅ」とちょっと甘え口調。

コンカッセ:丸耳族の女の子で、魔法具担当。ぶつ切り口調。

アルン:エルドラン領主の孫娘で、調薬の勉強の為に弟子入り中。


2017/2/18 誤字の修正を行いました。

 お昼御飯を食べ終わった後は、予定通り工房に向かった。

お店の方ではなく、裏の工房に直接入ると調薬の下ごしらえをしていたアッシェが真っ先に私に気が付いて笑顔になった。


「あ、おかえりですぅー!」

「お師匠様、おかえりなさい。」

「ん。良く帰った。」


 工房で作業していたのは、アッシェ・アルン・コンカッセの3人でどうやらフィフィはお店の方に出ているらしい。まぁ、順番でお昼に入る時間だからあちらに人が足りないんだろう。


「3人はお昼休憩取った?」

「私はいただきました。」

「じゃ、アッシェはコンちゃんとご飯食べに行ってくるですぅ」

「今日は何を食べるか……。」


 今から何を食べるか悩むコンカッセを引っ張って、アッシェはお昼を摂りに出かけて行った。

出掛けて行くアッシェにお小遣いを握らせて、さっき食べた高級屋台でお昼にする様に持ちかけるのも忘れない。ウキウキしながら出て行ったから、間違いなくあそこで食べてくれるはずだ。

コレで彼女のメニューにまた一品増えると思うと、私もウキウキしてしまう。

是非とも、あの味の再現に取り掛かって欲しい。


「お師匠様、グラムナードはどうでしたか?」

「良くも悪くもいつも通りだねぇ。」


 アッシェの作業を引き継ぎながら、アルンと他愛のないお喋りをはじめる。

彼女が今作ってるのは、美容クリームみたいだ。

魔力水で、肌に優しい成分の含まれたハーブを煮出したものを、植物性の油を乳化させたものに混ぜ込んで作っている物で、トロトロしたそれを塗ると肌がしっとりする。

お化粧をすると肌が乾燥するから、これを下地に使ってる人も結構いるらしくって、ウチのお店でも割と売れ筋の商品なんだよね。少し甘い匂いがするのも人気の秘密らしい。

 魔力をまだ上手く扱えていない彼女には、目先を変える意味も含めてこう言ったモノをアレコレ作って貰っている。

そうは言ってもこれって、小手先の誤魔化しでしかないから、この状態を早く改善できると良いんだけど……。まだ帰ってきていないらしいルナちゃん達が連れてくるという人が来たら、この状態が改善されるんだろうか?


「そういえば……」

「ん?」

「お師匠様って、お付き合いされてる方がいらっしゃったんですね。」


 アルンの突然の言葉に、手元が狂いそうになる。


危ない!!

危うく大惨事!


 ひっくり返しかけた大鍋にドキドキしながら、深呼吸をして気持ちを落ち着けてると、申し訳なさそうにアルンは頭を下げてきた。


「ごめんなさい。聞かれたらまずい事でしたか?」

「あー……、いや。ううん、大丈夫。」


 何とか気持ちを落ち着けて、彼女に顔を向けるとホッとした顔になる。

どう答えようかと少し悩んでから、普通に正直に話す事にした。


「そう言う意味で、お付き合いをしようって改めて言われた事は無いんだけど、『プロポーズするまで待ってくれ』……って言ってくれた人はいるよ。」


 自分で言ってなんだけど、これ、口にするのめちゃくちゃ恥ずかしい。

アスラーダさんは良く照れもせずに言えたものだと、場違いながら思ってしまう。



ああ、ほっぺが熱い。



 自分の言葉で熱を持ってしまった頬に手を当てると、自分の手が少し冷たくてちょっと気持ちいい。

アルンはそんな私を見ながら、ゆったりと頬笑みを浮かべた。


「ふふ……。相思相愛なんですね。」

「え、そう……かな?」

「凄く、幸せそうな顔してますもの。」


 確かに、言われてみるとあの時の事だけじゃなく、アスラーダさんの事を色々思い返してる時のリエラは、いつもなんだかとっても幸せな気分でいる様な気がする。

その傾向って、去年の年越しのお祭りでの事があってからより顕著かも。

そう考えると両想いだって言う事が分かったのが原因としか思えない。

アルンも良く見てるなぁと感心しながら、照れ笑いを浮かべる。


「……言われてみれば、そうかも。」


 自分で気付かない辺りに残念さを感じてしまうけど、まぁ、恋愛とかに疎いからなぁ……。

でも、こういう話題を彼女の方から振ってくれた事だし、色々聞くチャンスかもしれない。


「そういうアルンには、居ないの?」

「私は、自分の気持ちで決められる立場じゃありませんから……。だから、恋物語を読んで空想するのが精一杯ですの。」

「ああ……。貴族だとそう言うのがあるのかぁ……。」

「はい。でも、お師匠様の相手の方って……」

「貴族だよ。」

「……燃えますね!」

「…………そ、そう?」

「最高のシチュエーションです。」


 キラキラと目を輝かせて拳をぐっと握りしめ、鼻息荒くする彼女の姿はとてもじゃないが演技をしているようには見えない。

私は意外な思いで、彼女をまじまじと見つめた。

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