359日目 難航中
アルン:エルドラン領主の孫娘。弟子入りしてきたものの、芽が出ない。
アッシェ:調薬担当の三つ目族。甘えた口調で毒を吐く。
コンカッセ:魔法具担当の丸耳族。ぶつ切り口調が特徴。アッシェと仲良し。
ラエル:魔力操作指導の先生で、リエラの疑似おじいちゃんな小人族。
2017/2/8 誤字の修正を行いました。
アルンの属性が確定した事によって、教えられることが随分と増えた。
彼女が『地』の属性だったから、『魔力水』さえ使えれば『高速治療薬』を作る事も出来る。
とはいえ、まずは魔力の扱い方を教えるところから始めないといけないからね。
先はちょっと長いかな。
……なーんて、思っていた時もあったんだけどなぁ……。
「お師匠様、どうですか?」
そう言って彼女が持ってきたのは、擂り潰した薬草。
彼女は現在、魔力を込めながら擂り潰す練習中だ。
魔力視がまだできないのもあって、挑戦し始めてから1カ月が経つ今でもまだ成功はしていない。
ただ少しづつとはいえ、薬草に魔力を含ませる事が出来るようになって来ているから、もうそろそろ魔力視も身に付けられる頃合いなんじゃないかと思ってる。
というか、そう思いたい。
なんにせよ、魔力視が出来るのと出来ないのとでは魔力の使い方も随分変わってくるから、早めに習得できてくれると良いんだけど……。
「さっきよりは良くなってるかな。」
「そうですか……。」
私の言葉に彼女は肩を落とした。
このやり取りを結構な回数繰り返してるから無理もないよなぁ……。
そう思いながらも、彼女の気持ちを引きたてる為にも明るめの声を出す。
「少し休憩を兼ねて、他の人の作業中の魔力の動きを見てみようか。」
「はい。お師匠様。」
彼女は一度目を瞑るって気持ちを切り替えると、コンカッセの作業を注視し始めた。
まぁ、コンカッセの作業の方が目新しくて見ていて楽しいかもしれない。
アッシェの方は、彼女がさっきまでやっていたのと同じ作業をやってるだけだし。
一方で私は作業をしながら、熱心にコンカッセの作業を見詰めている彼女の、魔力の流れ方に注意を払う。彼女の魔力量は、今まで見ている感じだと平均よりは多め位で決して魔法に対する適性が低い訳ではないと思う。
丁度、基礎課程を卒業した時点での私よりは少し少ないかな? って程度に見えるから、割と向いてる方と言えるんじゃないかな……。
その魔力は今は普通に体の表面を循環していて、どこかに集中する気配はない。
これを、目に集中させる事が出来れば魔力が見えるんだけど……。
実は、彼女の魔力操作についての指導はひどく難航している。
ただ、どうしてもその原因が良く分からなくて困っているんだよね。
仕方がないから最近になって、魔力操作を専門に研究しているラエルさんに手紙を書いて相談し始めた。
私は魔力操作の指導力にはちょっと難があるんだけど、グラムナードでにいる他の兄弟弟子に教えた時でも、ここまで指導の手応えが無かった事が無くって途方に暮れてしまう。
確かに未だ、魔力の扱いが苦手な人が引っかかるナニカというのが良く分からないんだよね。
これが分かる様になったらすんなりと指導が進むんだろうと思うと、自分の力不足が恨めしい。
まぁ、アルンも魔力操作にばかりかかずらっているのは憂鬱だろうし、魔力が関係ない調合も教えて行く事にしようかな。
私は彼女に休憩終了を言い渡すと、美容クリームの作り方を教え始めた。
一通り手順を教えると、早速作業を始めるその姿を見ながら自分も調薬を始めた。
春になってやっと、新しいトゥルマ錬金術工房が開店したものの、それでもまだ魔法薬の売れ行きが良すぎるんだよね。商売繁盛は有難い物の、売れ行きが良すぎるのも考えモノだなぁと最近思い始めた。
そろそろ、次の迷宮を発見して貰おうと思っているんだけど……。
今発見されてしまうと、村で対応できるキャパシティを超えちゃうんじゃないかと、そこに少し不安があるんだよね。トーラスさん辺りが過労死しちゃうかも。
毎朝、アルンを工房まで送り迎えしているだけでも大変そうだもんなぁ……。
忙しい中、彼女を毎日送り迎えしているトーラスさんなんだけど、毎日顔を合わせる度にあれこれとお喋りをして帰って行くのが習慣になっている。
その時に聞いた最新の人口情報を思い浮かべると、やっぱり一度ラヴィーナさんに相談して見た方が良い様に思えてきた。
私がグラムナードに戻っていた1カ月と、アルンが来てからの1カ月の合計2ヶ月間の間にこの村の人口は既に1800人を超えているんだよね……。
この村の近辺に迷宮を置く事その物を止めた方がもしかしたらいいかもしれない。




