表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リエラと創ろう迷宮都市!  作者: 霧聖羅
グラムナード
76/200

300日目 顔見せ

アスタール:表情筋が死んでるリエラの師匠。アスラーダさんの弟。


2017/1/31 誤字の修正を行いました。

 里帰り3日目。

今日のスケジュールは、午前中にアスタールさんと中町の氏族への挨拶回りで何箇所か回るらしい。

午後は後輩達への講習会。

これは、今回の出店に関連した話とかを聞きたいという要望があって行う事になったんだけど……。

正直、講習会とかで何を話したらいいものだかちょっと自信が無い。

なので質問方式でやろうかなと思ってるんだけど、聞きたい事が思いつかないって言われたらどうしようかな?万が一の為にも、一応話せる事も考えておかないと。


「毎日2か所づつ回って行けば、今週中に全氏族を回り切れる予定になる。今回の目的は、君の顔見せと箱庭の管理権限の共有の2つだ。」

「グラムナードにある迷宮って、外町の5個と中町に1個なのかと思ってたんですけど、氏族毎にも持ってたんですか?」

「氏族毎ではないのだが、『木材』『鉄材』『ガラス材』『糸』等を産出する物が欲しいという要望があった時に先代が作成したのだそうだ。」

「なんというか、甘やかしすぎじゃ……。」


 ラヴィーナさんからの依頼の解釈を捻じ曲げて、アッシェ達の為に迷宮を作ってしまっている私が言うのもなんだけど、ちょっと呆れてしまう。

欲しいって言われた物をその度に与えたとか、甘やかしとしか思えない……。


「……だから、『錬金術師』が彼等の中で特別なのだ。」

「成程。……随分と都合の良い神様モドキですね。」


 そう返答を返しながら、猫神様と違って実際に見る事も触れる事も出来て、言葉を交わすことさえもできるそんな身近過ぎる神様だな、と思う。

なんだか、それは凄く危うい存在の様な気がする。

アスタールさんが教えてくれたところによると、グラムナードの人達が穏やかでおおらかな人が多いのにも関わらず、外の人間に対して過剰な程の警戒心を持っているのは、そのとても過保護な『生き神様』が、外の人間に対する疑心を彼等に繰り返し教え込んでいたからなのだそうだ。

 そうはいっても、その『生き神様』が居なくなってもうすぐ10年。

その死によって、時の流れが他よりも遅いここにも変化が表れている様に思える。

 分かり易い変化を挙げるなら、3年前には見る事のなかったグラムナードの血筋では有り得ない、様々な種族の幼い子供たちの姿がそれにあたるんじゃないだろうか。

これは私が弟子入りした翌年、弟子の募集ついでに、孤児院に居た養子に出来る年齢の子供で複数属性持ちが居たら引き取ろうと言う話が出たのが切っ掛けだった。

グラムナードでは、ここ100年位の間で子供の出生率が落ちているらしくて、子供のいない夫婦と言うのも珍しくないらしい。そういった人達が、工房で引き取る事にした子供の養育を引き受けてくれただけでなく、自ら里子を探してきはじめたんだけど、その甲斐があってか今では町中で子供の駆け回る姿が見られるまでになった。

きっと、これは先代の『生き神様』が居た頃では考えられない光景だったんじゃないかと思う。


「……実際、『神』の様なものだったのだ。」

「え?」


 物想いにふけっていた私の耳に小さく、聞こえるかどうかという位小さな声で、ため息混じりにアスタールさんが呟くのが届いた。

聞き返す声に、首を小さく振ってそのまま先に進んで行く彼に戸惑いながら、私は後を追った。




  

 2か所目の氏族の箱庭を眺めながら、私は先代様の甘やかしっぷりに、開いた口が塞がらなくなっていた。こう、こんな事は言いたくはなかったんだけどね、ひどいよ?

まさか、『木材』の箱庭とやらが、木の生育環境ごとに別れているとか、ふざけてるとしか思えない。

いや、欲しいと言われる度に増やして行った結果なんだろうな……。

しかも、しかもだ!!!

維持魔力は、全て『錬金術師』が供給するのが前提と言う鬼設定。

20Mを超える木が林立するような箱庭だと、毎日の維持に3万を超える魔力が必要になる。

そ・れ・を!!!

全部、一人の人間に供給しろとか、キチガイ沙汰だと思います!

これを一人で供給してたであろう先代様って、一体どれだけの魔力保有者? って感じだよ?

魔力1000越えが当たり前のグラムナードですらも、1万超える魔力があったら大騒ぎになるほどなのにこれはおかしい……。

私はソレらに魔力を供給しながら、心の中で先代様に向かって呪詛をまき散らした。

 2か所回っただけで、私の40万ある魔力がなんだか底を尽きそうです……。

結局、1週間分を補給するのに私の魔力では足りなくて、アスタールさんにも手伝って貰う事になった。


「アスタールさん、せめて多少なりとも箱庭内で魔力を稼げるようにしないと、私だけでは維持が厳しいです。」


 帰りの道中でアスタールさんに正直に、その事を伝える事にした。

これじゃあ、私だけでこれらを維持するのは無理だ。


「そうかね?では、次に君がこちらに来るまでに少し調整を入れる事にしよう。」

「お願いします。」

「明日から回る場所でも、必要そうならいってくれたまえ。」

「助かります。」


 ただ、中に入る人に危険がないようにしないといけないから、どういった形で対処するかは各氏族に確認しないといけないらしい。

私がやる事になる時には、小さな変更をする場合にもきちんと断りを入れるようにと付け加えられた。


「それにしても、アスタールさんっていつも何してるんだろうって思ってたんですが……。」

「氏族毎の箱庭の維持管理作業で、大体1日がつぶれる。」

「……ですよねぇ。」


 1日あの作業だけをやるのって、凄く気が滅入ると思う。

だってね、なんの変化も楽しみもない、ただの作業なんだもの。

中々真似しづらい事だと、私の心の中でアスタールさんの株が少し上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ