298日目 成果
エリザ:リエラと一緒に育った妹分。セリスさんと新薬の研究に明け暮れている。
セリス:リエラにとっての女神さま。変な病気にかかったと聞いて心配してました…。
アスタール:グラムナードの『錬金術師』。私の師匠で悪友?
ラエル:魔法理論教師の小人族。わたしの大好きなおじいちゃん。
2017/1/29 誤字の修正を行いました。
2017/1/30 加筆・修正を行いました。
一時帰還の挨拶をアスタールさんとラエルさんにすると、一旦久しぶりの自室にひきとる。
定期的に掃除もしてくれていたようで、部屋の中は私が出発した時から変わった様子もなく、『帰って来たんだなぁ』とホッと肩から力が抜けるのを感じた。
アトモス村に向かう時に置いて行くつもりの荷物を出してから、お茶を飲んで寛いでいると、扉を叩く音がする。
「はーい?」
返事を返しながら開けると、そこにはエリザが立っていた。
「リエラちゃん、お帰りなさいませ。」
「エリザ!元気そうだね。」
エリザは、私と同じ孤児院で育った2角族の少女で、アッシェ達と同い年。
濃いめの茶髪に、少し垂れた若草色の目が優しい印象だ。
『火』以外の3属性持ちで、今はセリスさんと新薬の研究に明け暮れている。
「はい。リエラちゃんもお元気そうで安心しました。」
「立ち話もなんだから、中に入って?」
ほんわか微笑む彼女を部屋に通そうとすると、首を横に振られてしまった。
「セリスお姉さまが、一刻も早く研究の成果を見て貰いたいとおっしゃっているので……。差し障りがないようでしたら、研究室にいらして頂けませんか?」
彼女の言葉に、ポンと手を打つ。
確かに、お茶を飲みながらお話をするのも悪くないけど、そっちの方がもっと有意義かも。
飲みかけのお茶を片づけると、早速一緒に研究室に向かう事にした。
私が最初にこのグラムナードにやって来た時、ここにはそんなに沢山の弟子は居なかった。
そもそもが、私が外の町から始めて採用された弟子だったくらいだしね。
今は、14人の弟子が住み込みで学んだり実践したりしている。
一般的に見習いとして働き始める、12歳~14歳の子だけが14人もいるので、前と比べると随分と賑やかなものだ。今日と明日はお休みの日だというのもあってか、弟子用の部屋からはお喋りの声や、自発的に何かの実験をしているらしい物音が聞こえて来ている。
弟子入りして来てから、ほんの3年しか経っていないというのに随分と変わるものだと感慨深く思った。
ちなみに、弟子が一気に増える事になったのを受け入れる時に、今まで使っていた施設だと広さが足りなくなってしまうからといって、大掛りな増築工事を行った。
前は1階にあった工房はお引っ越しして、『調薬工房』『魔法具工房』『座学部屋』の3種類の部屋が今は2階に、3階と4階は弟子用の個室で、師範の部屋や研究室はその上層になる。
研究室に向かう道中、結局『リエラ欠乏症』なる病気はなんなのかとエリザに聞いてみると、私を何とかグラムナードに里帰りさせたくてセリスさんが考え出した仮病だと、しれっと説明してくれた。
「私もセリスお姉さまと一緒に考えたんですの。」
「エリザも一緒に考えたんだ……。」
「はい。早くリエラちゃんに、研究の成果を見てもらいたかったですから。」
私の半ば呆れ気味の言葉に、彼女はそう応えてほわっと微笑んだ。
ここに来たばかりの頃はおどおどしていた彼女も、ここで様々な技術を覚えていくうちに自信をつけて、堂々と立ち振る舞う事が出来るようになった。
それでいて、何故か未だに私に認めてほしいような素振りを未だに見せてくるんだけど……。
これって、子供の頃からの刷り込みによるモノなのかな?
小さな頃から、良く私の服の裾を握って付いて歩いていた、小さな彼女を思い出す。
エリザも大きくなったよなぁ……。
そりゃもう色々と。
と、すらっと伸びた手足や、服の下からでも主張されている胸元を見て、心の中でため息を吐く。
なんというか、私とは雲泥の違いだなぁと思っちゃうんだよね。
既に身長は伸びるのを止めて久しいし、胸も……。
いや、考えるのは止めておこう。
頭を振ると、ちょっと悲しくなり始めた考えを心の中から追い出した。
「あの後の研究成果、手紙では少し読んではいるけど随分頑張ったみたいだよね。」
「はい。セリスお姉さまも私もそりゃあもう頑張りました!なので、早速見て頂きたいと、セリスお姉さまは先に用意をして待ってるそうですわ。」
私がグラムナードを出発したのは、10ヶ月ちょっと前の事になる。
そこから先は、セリスさんとエリザの2人で新しい薬の配合や調合方法の模索をして貰う事になっていて、元々はその進捗状況の確認を行う必要もあって年に4回はここに戻ってくるという事にしていたんだよね。だから、2人がやっている開発は私が希望したもののみでもなんの問題も無かったんだけど……。
目の前に置かれた実物サンプルや、調合レシピの数には言葉を失った。
どうみても、これは出発の時に頼んだ物の倍ではきかない。
どれだけ精力的に研究をすれば、これだけの物を創りだせるのかは想像する事もできない。
セリスさんとエリザの2人が交互にしてくれる報告に耳を傾けながら、資料をめくる。
それだけで十分に売り物になる完成品。
単品で見ると売り物にはならないけれど、他の物と上手く組み合わせる事ができればひどく有用な物。
有用そうに見えるものの、実際には使いものにならなそうな物。
大まかに分けるならその3種類になるのだけれど、それらを研究して、きちんとした効果が出る事を確認する為に掛けられた労力を思うと、自然と頭が下がる。
私は資料を確認しながら、これらをどう利用すれば最も人に喜んで貰える魔法薬に仕上げられるかを考える事に集中しはじめた。
その日は結局、3人で討論するのに夢中になってしまって、食事時になっても姿を現さない私達を探しに来たアスラーダさんからお説教されてしまった……。
でもね、元々調薬が一番好きなのもあってか、『今までにない魔法薬』だと思うだけで心が踊ってしまうんだもの。仕方ないんじゃないかと思う。
結局その日は、夕飯を早々に食べ終えると私達は新薬研究室で夜を明かしてしまうのでした。




