292日目 進展ってなぁに?
ルナ:リエラの親友でスルトの奥さん。
スルト:同じ孤児院出身のネコ耳族。ルナちゃんと結婚してラブラブ。
アスラーダ:最近、まともに顔を見れていないリエラの好きな人。
2017/1/24 誤字の修正を行いました。
結局グラムナードへ出発する予定の日になっても、私はアスラーダさんの顔をまともに見れないままで、ついつい道中の用意をしていてもため息が止まる事は無かった。
「リエラんー! ウサギの用意、終ったよー!」
「ありがと! 今行く!!」
ため息混じりに用意を終えたタイミングで、階下からルナちゃんの呼ぶ声が上がる。
今日はお店がお休みの日だからと、アッシェ達は朝早くから出掛けていて既にいないのでお見送りは無い。
今回の旅は迷宮産の騎乗ウサギに乗って行く事になっている。
その為の騎乗ウサギは、私の『素材回収所』で別口で用意した。
あ、用意したのは騎乗『魔獣』ウサギだ。
見た目は普通の騎乗ウサギと変わらないんだけど、風魔法を操れるからいざという時の用心棒にもなれる……はず。
ちょこちょこ出掛ける事になりそうな探索者組4人と私の分として5羽なんだけど、『騎獣の平原』の物と違うのは自分の好きな色と模様をそれぞれで選べたところかな。
私のウサギは黒をベースに毛先が金褐色の空色の瞳。
彼には、『ディー』と名付けた。由来は…内緒です。
ルナちゃんが選んだのは、灰色をベースに、首元に白いスカーフを巻いた様な毛並みの子。
スルトは森で乗るのを想定したのか、濃いめの茶色と深緑のまだら模様。
ポッシェは銀色の毛並みに水色の瞳の雌のウサギを指定して来た。性別限定なんだ…?
アスラーダさんは、夏の空の色を思わせる青のグラデーションの毛色の子だ。
騎乗ウサギの為には、広めだった庭の一部を利用して厩舎を作ってそこで世話をしている。
迷宮産の生き物だからと言うのもあってか、賢くて言う事をとっても良く聞いてくれるから一人で騎乗する事も出来るという、私にとっては夢の様な騎獣だ。
今回の同行者は、アスラーダさん・ルナちゃん・スルトの3人。
ルナちゃんも、年に1度位は実家に顔を出さないとね。
ルナちゃんが里帰りするなら、勿論スルトも同伴っていうことになる。
みんなをあまり待たせちゃいけないと慌ててコートを羽織ると、私は階段を駆け降りた。
1階に下りて行くと、ルナちゃんとスルトが立ったままでお茶を飲んでいるところだった。
冬ももうすぐ終わるとは言え、まだまだ外は寒いからね。
外でウサギの準備をしていて冷えた体に、温かいお茶を飲んで暖をとっていたらしい。
「おまたせー!」
「走らなくっても大丈夫よー。」
「お前なぁ…。落ちて怪我でもしたら大変だから落ちつけよ。」
からかい半分、心配半分のスルトの言葉に舌を出して答えると、怒ったふりをしたスルトが「こらー!」と言いながら追いかけてきたので、暫く2人してルナちゃんを間に挟んでクルクル回った。
私は鈍くさいから、捕まらないのはただただスルトが手加減してくれてるからだと最近は分かってるけど、子供の頃は『スルトは意外と鈍くさい』って勘違いしていたんだよね。
今となってはなんとも恥ずかしい…。
ひとしきりじゃれ合ったところで、ルナちゃんの制止が入ってやっと外に出ると、アスラーダさんが4羽の手綱を持って少し呆れ顔で立っていた。
「一人で乗れるか?」
「うん。大丈夫…。」
手綱を渡しながら聞かれたものの、やっぱり目が合うと頬が熱くなってしまって目を逸らす。
ううう。
落ちつけ。
落ち着くんだ、私!
こんなんじゃ、アスラーダさんに愛想を尽かされちゃうと思いながら、自分に暗示を掛けてみる。
顔見ても赤くならない、赤くならない、赤くならない!
効果があった試しは無いんだけどね!
赤くなりながら1人でワタワタしていたら、頭をポンと叩かれた。
「やっぱり手伝うか?」
「うにゃー!?」
耳元に口を寄せて囁かれて咄嗟に奇声を上げてしまい、口を押さえるとアスラーダさんの方がプルプル震えだす。
わ、笑ってる!?
「か・からかうなんてひどい~!」
「いや、からかってない。」
思わずポカポカと背中を叩きながら抗議していたら、スルトから真顔でツッコミが入った。
「いや、イチャつくのは2人きりの時にしとけよ?」
「スルトが言っても説得力無いんじゃない?」
「そっかぁ?」
「うんうん。」
「えー…? 妹に目の前で手を出されると、なんとなくムカつくもんなんだな……。」
「スルトんもラー兄にそう思われてたって事?」
「だって、師匠はその頃にはリエラだったじゃん。
リエラに手を出さないと分かった時点で俺なんか、眼中にナイナイ!」
「言えてる~!」
そのツッコミにルナちゃんが即座に反応して、本人が居る前でとんでもない事を言い出したものだから、アスラーダさんの耳が赤くなった。
「馬鹿言ってないで、そろそろ行くぞ。」
「はーい!」
「了解、師匠。」
「あ、うん。」
誤魔化すように出発する事を告げると、アスラーダさんは有無を言わさず私をウサギの背に乗せて、自分のウサギの背に跨った。
「しかし、こんな調子で進展するのか~?」
「なるようにしかならないわよ。」
背後での会話を聞きながら、私とアスラーダさんは再び顔を赤らめた。
スルト、そういう目的でグラムナードに行くんじゃないんだからね!
そう言ってやりたい気持ちはあったものの、更に煽られるのが目に見える様だったので黙ってウサギの首を撫でて心を落ち着かせようと試みた。
ああ、フワフワスベスベで素晴らしい…。
ようこそ!モフモフの世界へ!!
人はこう言うのを現実逃避って言うんだよね、きっと。




