279日目 言っちゃった
アッシェ:調薬担当の三つ目族の女の子。もうすぐ成人。
コンカッセ:魔法具担当の丸耳族の女の子。もうすぐ成人。
ルナ:スルトの奥さんでアスラーダさんの従妹。リエラの親友。
アスラーダ:リエラの想い人…だとうっかり本人に暴露してしまった…。恥ずかしくて顔が見れません。
2017/1/23 誤字の修正を行いました
アスラーダさんにうっかり発言をしてから、2週間。
結局、翌日からまともに顔を見れなくって、店内での護衛役をルナちゃんに交代して貰った。
ルナちゃんが言うには、交代に関してアスラーダさんはなんだかひどく納得してたらしい。
「なんか、ラー兄がやたらと浮かれてるみたいだったんだけど…?」
と不審げに覗きこまれて、仕方なくアッシェ達も交えた上で事情を話すと、爆笑されてしまった。
笑ってないのは、コンカッセだけだ。
「ううぅ…。二人ともひどいよぉ…。」
涙目でアッシェとルナちゃんに抗議したものの、二人とも聞こえていなそうだ。
コンカッセだけが、私の背中を同情を込めてポンポンしてくれた。
「…顔を合わせづらいという気持ちは分かる…。」
「コンカッセ…。ありがとう」
思わず彼女に抱きつくと、やっと笑いの発作から復帰した2人から質問が飛んできた。
「リエラん、うっかりすぎ!でも、これからどうするの?」
「ですぅー。まだ、目標達成には程遠いですぅ」
「それは確かに問題。」
「そうなんだよね…。」
自力で『名誉貴族』の称号を手に入れてから…って言うのが目標だったんだけど、それの『め』の字も無いうちに自分から白状してしまうなんて本当にどうかしているとしか言いようが無い。
「でもさ、気持ちを伝えたのは逆に良かったんじゃないかと思うよ?」
「ええ…?」
「まだ『うん』って言えないからだって言ったんでしょ?」
「そうだけど…。」
「ラー兄さ、浮かれてはいたけど…。少し悩んでる風でもあったんだよねぇ…。」
「なにをですぅ??」
ルナちゃんは、「う~ん」と呟いて天井を仰ぎみる。
「上手く言えないんだけど、『まだ』の内容じゃないかと思うんだよね。」
「おお。進歩。」
「今まで、あすらーださんはりえらちゃんの気持ちを自分に向ける方に熱心すぎて、事情の方はほっぽってたですし、確かに進歩ですぅ。」
アッシェもコンカッセも、アスラーダさんの事をそう言う風に見てたのか…。
…ちょっと申し訳ないけど、そんな事は無いって言えないかもしれない…。
多分、アスラーダさんにとってはグラムナード内が納得すれば問題ないと思っているせいだと思うけど。
「ラー兄も、王都で育ったんだったら分かっていそうなものなんだけど…。」
「見ないふり?」
「いざとなったら、アスタールさんに領主をおしつけるつもりです??」
「それは無いと思うよ。」
「あー……。無いねぇ……。その気がありそうだったら、私も悩まなかったかも。」
「良くも悪くも、頭堅いもんね。」
「だねぇ。」
私が気にしている身分云々は、多分彼の中では大した事が無いものなんだろうな、と言うのは言葉の端々から感じているんだけど、幼少期はグラムナードで育ったって言うのが関係しているんじゃないのかな?と個人的には思ってる。
ただ、領主と錬金術師を兼任していたお祖父さんを見ていた時期に思うところが合ったらしくて、領主の仕事と錬金術師の仕事は別の人間が担当するべきだと思ってるって、前に話してたんだよね。
その上で、他にやりたいって言ってくる人間が居ないなら、父親が領主をやっている立場上、自分がなるしかないんだろうとも口にしてる。
だから、彼が私の事でその立場を投げ出すなんて思えないし、思いたくもない。
そう言うところも込みで、彼の事を好きになったんだから。
「…まぁ、それでもいいですけどぉ…」
「まずは2週間後に、グラムナードに里帰りする時の事を考えた方がいい。」
「また、アスラーダさんと年越しの踊るです?」
「いつもリエラんは、殆どラー兄とばっかりだもんねぇ」
「そう言うルナちゃんは、スルトか家族だけでしょ~!!!」
ここぞとばかりにからかってくるルナちゃんに、怒ったふりをしつつチョップを入れる。
ケラケラ笑いながら、その手を受けとめると「ごめんごめん」と謝ってくるのをいつも通りに寛容な振りをして許す遊びをしながら、2週間の間に、せめて普通に話せる程度に自分の気持ちが落ち着いてくれないかなぁと小さくため息を吐いた。




