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リエラと創ろう迷宮都市!  作者: 霧聖羅
大きくなる村と迷宮
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278日目 夏の箱庭

「ふわぁ~!!!!」


 今日は久しぶりに、アスラーダさんと『素材回収所』にやってきた。

やっと寒さが緩み始めたとはいえ、まだまだ雪がちらつく事もあるから思い切り暑い季節が恋しくって、今日やってきたのは『夏』を選んでしまった。

あらかじめ、暑くなるのは分かっているから、下に夏物を着ていたからさっさと冬物を脱ぎ捨ててしまう。


「あっつぅううううい!!」


 後ろで、アスラーダさんも冬物を脱いでいる気配がした。


あ。

下にきちんと着ているとはいえ、せめて衝立くらいは用意してから脱げばよかったかも…。


 とはいえ、もう脱いでしまったので後の祭りだ。

チラッとアスラーダさんの方を見ると、いつもと変わらない表情だった。

……でも、耳がほんのり赤くなってピョコピョンと揺れてる。


……動揺させてしまった……。


「『夏』がこんなに暑いって、たまに忘れちゃうね。」

「確かにな。」


 まだ都合が悪いから、彼の動揺には気付かないふりをする事にした。

多分、気付かない方が良いに違いない。私はニブい子なんだということで。

 今日は、風通しの良い7分丈のふんわりしたブラウスに、一見スカートにも見えるゆったりした足首まであるキュロット。それからネコミミの付いたつばの広い麦わら帽子。

髪はいつもお下げにしてるから、たまには気分を変えようと流しっぱなし。

……慣れない事をするからか、髪の毛がなんだかうっとおしい。

せめて、サイドを括る位はした方がよかったかも。


「それにしても……。」

「ん?」

「髪をおろしてるのは珍しいな。」


 アスラーダさんの声に振り向くと、彼は私の髪を一筋手にとって口付けた。


ふひょ!?


 言葉にならない声が脳内に響き渡る。

いや、今の口から出てないよね!?

出てたらめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!!!

実際のところ、一瞬で火を噴くんじゃないかと言う程真っ赤になって口をパクパクしてただけだったみたいなんだけど、彼はそんな私を見て嬉しそうに目を細めた。


「……何をやっても通じていないのかと思ってたんだが、そう言う訳でもないんだな。」


 その言葉で思わず両手で頬を押さえると、思っていた以上にそこは熱を持っていて、より一層恥ずかしさを感じて俯いてしまった。


「リエラ」


 呼ばれて、視線だけを上に向けるとそっと手を差し出された。

おずおずとその手を取ると、彼はリエラの手を引いて東屋の方に向かって歩き出した。

暫く、互いに黙ったまま手だけを繋いで丘を登っていく。


どうしよう。

ばれた?ばれた??

アスラーダさんに、私の気持ちがばれちゃった???


 彼に手を引かれるままに歩きながら、私の頭の中は焦り過ぎて混乱の極致だった。

そうこうしている間に、私の心臓もいつもアスラーダさんと手をつないでる時と同じ程度まで落ち付いてきてくれる。ほっと一息ついたところで、いつもの東屋に辿り着いた。

 東屋は4方に柱があって屋根と木製のテーブルとベンチがあるだけの物だ。

土手の上に作ってあるから、小川から良い具合にひんやりした風があがって来るようになっている。

二人でそこに入って行くと、ごくごく自然に、いつもと同じようにベンチに隣り合わせで腰掛けてしまった。いつも、ここに来るとそんな感じだったから何にも考えずに誘導されるままだったんだけど…。

さっきのアスラーダさんのセリフを反芻していて、それに気付かなかった私は気が付いた瞬間に心臓がドキンと跳ね上がった。


「どうした?」


 普段と変わらない風に問いかけてくる彼にチラリと視線を向けたものの、まだまともに顔を見れなくって帽子のつばを引っ張って自分の顔を隠してしまう。


「その……あの……」

「うん?」


分かっちゃいましたか?

気付いちゃいましたか?

いやいや、なんて聞けばいいのか分からないよ!!!


 何をどう聞けばいいものかを決められずに「あのその」言い続けている内に、彼の方で何かを察したらしく、帽子越しにポンポンと頭を軽く叩かれた。


「……流石に、なんとなく理解した……と思う。」

「……そう……ですか……。」

「気付かれたくなかったのか……。」


 どことなくがっかりしたような彼の声に、思わず顔を上げてその胸に縋りつく。


「嫌とかそう言うんじゃなくて、まだ、「うん」って言えないからってだけなんです!!!」


 私の言葉に、驚いたようにアスラーダさんは目を見開いた。


「……」

「……」

「…………」

「…………」

「………………」

「………………」

「……きょ」

「きょ……?」

「……きょ……」

「きょ?」

「……今日はここまでで~!!!!!!!!!!!!!!!」

「!?」


 そこまで言って、私はアスラーダさんを箱庭から弾き出した。


うわぁぁあぁああああああああああ

なんてことを!!!

なんて事を口走っちゃったの、私ってば!!!!!!

明日から、アスラーダさんとどんな顔をして会えばいいのか分からないよ!?

どうしようぅううううううううううううううう!!!!!!

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