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リエラと創ろう迷宮都市!  作者: 霧聖羅
大きくなる村と迷宮
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251-258日目 ジョエル魔法薬工房

マーティン:最近出店して来た魔法具工房の店主さん。鼠耳族の男性で妻子持ち。

ジョエル:王都近郊の町で魔法薬工房をやっていたはずの人。アトモス村に出店して来た。

アスラーダ:二人きりにならなければ、リエラの精神安定剤替わりのお兄さん。

コンカッセ:魔法具担当のいつも眠そうな丸耳族の女の子。

 マーティン魔法具工房が開店してからほぼ1週間後。

雪が本格的にチラつく様になってきた頃に、少しだけ懐かしい気がする人が工房に挨拶に現れた。

柔らかく波打つ茶色の髪に翡翠色の瞳の彼は、見る人に爽やかでとっつきやすそうな印象を与える特技を持っているんじゃないかと思う。

3カ月近く前に、この村までやってきてうちの工房から熱心に情報を引き出そうと頑張った人だ。

彼は強引な手口を使う訳ではなく、世間話のフリをしてさり気なくだったので私も暫く気が付かなかったんだけどね…。

王都近郊の町にお店を出していると言っていたから、まさかアトモス村に出店してくるとは思わなかったんだけど…。

そっちのお店はどうしたんだろう?

そう思いながら、目の前でお茶を飲んでいる彼を見て心の中で首を傾げた。


「それにしても、出店されてくる方の名前にジョエルさんの名前を見付けた時には驚きました。」


 不思議に思ってるだけじゃ、何も分からないなと思いながら当たり障りの無さそうな話題を振ってみる。彼は優雅にお茶の香りを楽しんでいたのを中断して頬笑みを浮かべた。


「『また、お会いしましょう』、と申し上げたじゃありませんか。」

「こんなに早く、同じ町の一員としてお会いするとは思いもよりませんでしたので…。」

「そうですか。」


 今、彼と向かい合っているのは2階の居間にあるソファーセットだ。

本当はルナちゃんとスルトの新居なんだけど…、こう言う時には『遠慮なく使ってね』と言うルナちゃんのお言葉に甘えさせて貰っている。

トーラスさんなんかはもう、工房の方でもいいやって感じになっているけど、お客様をおもてなしするのには流石に工房は何とも微妙だからね…。

ルナちゃん、スルト。いつも助かってます…。

アスラーダさんも今は隣に居てくれているから、何があっても安心です。


「前の店は、管理を後輩に任せる事にしたんですよ。」

「…後輩、ですか。」

「ええ。スフィーダの魔法学園で、調薬を学んでも中々出店する事はできませんからね。折角学んだ知識を活かせない者も結構な数いるんですよ。」

「ああ…。なるほど。」

「なので、その中で店を経営している幸運な卒業生は、たまに学園から人材の斡旋を受ける事があるんですよ。」

「お断りする事って出来ないんですか?」

「それが…斡旋された生徒を拒否すると、品質監査が厳しくなるんですよ…。」


へぇ。

品質監査なんてものがあるのか…。


 ジョエルさんの言う『品質監査』って、厳密には何を調べるのかがちょっと気になる。

王都で売ってるレベルの物で良いんだとすると、きちんとした検査をしている様にはとても思えないんだけど…。


「品質監査と言うと、どのようなものなのかお伺いしても良いですか?」

「勿論。とはいえ、『魔力視』を使える教諭が各店舗を周って、どの程度の魔力が込められているかをチェックするだけなんですけどね。」


 苦笑しながら彼はあっさりとどんなものか教えてくれる。


「もしかして、既定の魔力含有量は結構幅が広いんですか?」

「きちんと学園の意思に沿っている限りはどんな物を作っていても、品質監査に引っ掛かる事はありませんよ。…卒業生の受け入れさえしていれば。」


 私は実際に、酷いと思う品も見てしまっているからそれを聞いて納得するしかなかった。

『品質監査』と言う名目の元に、卒業生を手の上で転がすような真似は許されるものじゃないと思うけど、今はそれがまかり通ってしまっているらしい。

アスラーダさんも同じ様な事を思っているのか、苛立たしげに耳をピコピコ揺らしてる。


表情に出さないようにすると、耳が動くんだなぁ…。

可愛すぎる。


「今回の出店にあたって、また3人卒業生をあてがわれる事になってまして、頭が痛いところです。」


 苦笑するジョエルさんに、同情交じりの笑みを返す。


王都のおじさん達のところも、やっぱり卒業生の押しつけとかあるのかな?

もしあるんだったら、それこそ『地』の属性の人は『水』属性の卒業生を受け入れるとかでまともな魔法薬を作れるようになると思うんだけど…。


「グラムナードでは、まだそんなに弟子が居る訳ではないので今のところは縁のない話ですが…。

将来的には考えておかないといけない問題ですね。」

「そちらのお弟子さんは、皆さん優秀そうですから悩まれる必要もないでしょう。私も、またこちらで勉強させて頂きたい位です。」


 そう言う彼に、私は苦笑を返すしかなかった。

暫くの間世間話に花を咲かせた後、丁度1週間後に開店すると言いながら、コンカッセ特製の樽をいくつか注文してから彼は帰って行った。

コンカッセ特製の樽は、中に入っている液体の魔力を逃がさない加工を施してあるから魔法薬の保存に便利なんだよね。前にチラリと話したのを覚えていたらしい。

作り方は私達的には簡単なんだけど…。

グラムナードのやり方を踏襲できないと作れないから、今のところこの店とグラムナードの店でしか取り扱いがない。

作り方のレシピは王宮に献上してあるんだけどね…。

早めに作れる人が出て来てくれないかなと願って止まない。


 なにはともあれ、その翌週の紫月。

ジョエル魔法薬工房・アトモス支店が開店した。

それにしても、毎日ジョエルさんの顔を見る事になるなんて、この時は思いもしなかった。

今日は残念会

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