203日目 人口何人?
アッシェ:調薬担当の三つ目族の女の子。伸ばし気味の喋り方が特徴。いつも楽しそう。
コンカッセ:魔法具担当の丸耳族の女の子。ぶつ切りの喋り方が特徴。いつも眠そう。
アスラーダ:アトモス支店監査役?グラムナードの次期領主なのに、こんなとこに居ていいのかな?
トーラス:アトモス村の村長さん。熊人族。兎耳族の可愛い奥さんが居る。
2017/1/17 誤字の修正を行いました
迷宮に2層目を追加した日から、あっという間に1カ月が経った。
結局、迷宮で2層目が発見されたのは、追加してから3日目の事で、発見された時には探索者協会はハチの巣をつついたような大騒ぎだったらしい。
店からは離れているから、実際にそれを見た訳じゃないんだけど、ルナちゃんとスルトが見て来て教えてくれた。
その他にも『騎獣』の平原と言う名前から、内部の動物たちを手懐ける方法をいろいろ試行錯誤していたのが実を結んだとかで、迷宮産のウサギや走り鳥の背に跨った人が現れ出している。
オオカミやイタチに乗った人はまだ現れていないものの、狙っているらしい会話は聞くのでその内現れるんだと思う。
「最近、2層に行く人が増えたみたいです―」
「お客さんに聞いたの?」
「いやいや、高速治療薬が動き出したですよ。」
「成程。」
補充作業をしている時に、アッシェが不意に2層の事を話しだした。
何回か2層に行ったスルト曰く、アリが結構タチが悪いらしい。
2層に行った時に、早めに見つけてアリを減らしておかないと、倒したばかりの獲物をあっという間に骨にされちゃうんだって。
血の匂いに反応するから、自分が怪我したのを放っておくと、いつの間にかアリの群れに囲まれてるとかもあって、全身の毛が逆立ったらしい。
…私も想像しただけで鳥肌が立った。
アリの群れ、怖い。
「アリが良い仕事してるねぇ…。」
「ですー。」
「それだけじゃなく、人口もまた大分増えて来てる」
「そうだねぇ。もうすぐ、町に認定される1000人を超えるんじゃないかな?」
魔法具の細工に集中していたコンカッセも話題に入ってきた。
最近、王都近辺での仕事にあぶれていた建築家達がやってきてくれたお陰で、住宅やらなんやらを急ピッチで増えて来ているんだけど、そのお陰もあって住民の流入が増えているらしい。
村が発展していくのは喜ばしい事なんだけど、ちょっとだけ困ってしまうのは、そのお陰で飲食店がいつも満員だという事。
お休みの日に外食に行くと、結構待つようになってしまったのが難点なんだよね。
前は、混んではいても10分位で座れたんだけどなぁ…。
「人口なら、今はもう1200人越えた筈だな。」
「おお、すごいですー!」
「いつの間に」
丁度、家庭用デラックスの調薬を終えたアスラーダさんが今の人口についてサラリと答えた。
彼は一体いつ、そういう情報を仕入れてくるんだろう…。
結構、一緒に居る時間が多いのになぁ…。
「そうすると、トーラスさんって下流貴族じゃなくていきなり中流貴族になる事になるの?」
「いや。一足飛びで中流貴族に任命される事はないから、まずは下流貴族だな。」
「段階を踏まないとだめなのですー?」
「ああ。」
「でも、クマさんが貴族になるというのもなんだか不思議なのですー」
私の疑問に答える彼に質問を足しながら、今度貴族に叙任される事になっている熊人族のトーラスさんを思い浮かべてアッシェはふふふと笑った。
トーラスさんは、ざっくばらんな性格で気取ったところがないからね。
貴族のイメージに合わないって言うのはなんとなくわかる。
実際には貴族と言っても色んな人が居るんだろうけど、どうしても私達のイメージだと『高飛車』とか『気取ってる』とかそういうイメージがあるんだよね。
そう思いながら、アスラーダさんにチラッと視線を走らせた。
『貴族』も、色々なんだよねぇ…。
ちなみに、噂のトーラスさん。
最近何故だか午後になると工房に良く顔を出して行くんだよね。
特別な用事がある訳でもないみたいなんだけど、なんでもないような雑談を1時間位して帰っていく。
なんでか、事ある毎に頭を撫でられるのが、子供扱いされてるみたいでちょっぴり悲しい。
向こうは親愛の情を示しているつもりなのかもしれないけど、一応私も成人した身なんだけどなぁ…。
そこまで考えたところで、アスラーダさんの情報源は彼か、と気が付いた。
そういえば、帰り際によく話してるっけ。
あの時に聞いてるんだなぁ…。
大した謎じゃなかったけど、ちょっとだけ謎が解けてすっきりしなーと思っていたら、噂の人物・トーラスさんが訪ねてきた。
「よう、リエラ!」
「トーラスさん、こんにちは。」
いつも通りの挨拶に、いつも通りに応えつつ中に案内してお茶を用意する。
「今、人口が随分増えたって話をしていたんですよ。」
「ああ。さっき確認して見たら、1300人を超えてたよ。」
「ふお!?」
「随分と、人が増えるのが早い…。」
「本当になぁ…。迷宮ってぇのは、凄い経済効果だなぁ…。」
コンカッセの言葉にトーラスさんも頷いた。
正直、私も迷宮が一つ出来ただけでこんなに人が流れてくるとは思ってなかったクチだから、思わず一緒に頷いてしまった。
「それでだ、明後日の昼にまた商工会議をやるから集まって欲しいんだ。」
「分かりました。人数に制限はありますか?」
「お前さんとこは、いつもの4人だろう?」
「そうなります。」
「なら大丈夫だ。」
「ありがとうございます。」
「後、昼食会も兼ねるから昼飯は食わないで来てくれ。」
「はい。了解しました。」
トーラスさんは、その返事に目を細めると、私の頭をわしわしと撫でまわした。
トーラスさん!
リエラはもう、大人なんですよぉ~!!!
なにはともあれ明後日はお休みだから、商工会議に出掛けるのに特に問題も無いかな。
議題は、前に話していた新規店舗の誘致の件だろうとアタリをつけておく。
一応、トーラスさんが帰った後に、アッシェ達と意識のすり合わせをしておく事にしよう。




