172日目 寝不足の朝
結局、昨日の夜は眠りに付けたのは明け方の事だった。
3人で一緒のベットに転がってすぐに意識を失うと、もう起きる時間だったって事で、物凄い寝不足です…。
「きょーおのご飯はフレンチトーストですぅ~」
「わ~い…」
「迷宮産の卵使うの?」
「ですぅ~」
アッシェは欠伸交じりにチャカチャカと軽快に走り鳥の卵に水牛の乳を入れたボウルの中を掻き混ぜている。走り鳥の卵というのは、最近になってアッシェの希望によって追加した採集物だ。
コレのお陰で、我が家の食卓がまた華やかになった。
卵料理って美味しいよね。
それはともかく、今日の朝ごはんはフレンチトーストらしい。
少し硬くなったパンも、フワフワの優しい口当たりになって美味しく食べられるので女の子だけのお昼御飯ではたまに作るんだけど、ポッシェやアスラーダさんが居る時にはあんまり作らないんだよね。
卵液に甘みをつけてないところを見ると、個々でハチミツを掛ける形らしい。
甘さ控えめが好きなアスラーダさんと、ハチミツだけでもいい位のポッシェでは好みが違いすぎるからかな?
「りえらせんぱいは、卵液につけたパンを焼いておいてくださいです―。」
「はい、了解。」
アッシェは私にフライパンを任せると、一緒に出すスープの用意を始めた。
じゃがいも・人参・玉ねぎ・セロリを一口サイズに刻んで、最後に腸詰肉と調味料をちょちょっと入れるとコンカッセに加熱を依頼している。
具にきちんと火を通すのには、普通に火を掛けるよりも魔法でやった方が早いんだけど…。
コンカッセがやっても大丈夫なのかなとちょっと不安になる。
次にとりかかるのはサラダ。
キュウリとトマトを薄く切って、レタスの上に乗せるとカリカリに焼いたベーコンを乗せて、ドレッシングを掛ける。
サラダの用意が終ると、私と並んでパンを焼き始めた。
その合間に、コンカッセに加熱の加減を指示しているのを見てほっとした。
コンカッセは、同じ材料を使っても何故か食べ物を作らせると味が落ちるから不安だったんだよね。
ポッシェが、出来上がったモノから食卓に運んで行く。
アスラーダさんはいつも、その食卓の用意の担当だ。
全部運ぶと、皆で席に着いて食事の挨拶をして食べ始めた。
1つ目のフレンチトーストはハチミツ無しで食べてみる。
迷宮産の走り鳥の卵は、ねっとりと濃厚で水牛の乳の風味に負けていない。
ハチミツを掛けなくても、ほんのりと優しい甘みがあってこのままでも十分美味しい。
口に含むとあんまりの美味しさに頬が緩んだ。
ハチミツを掛けたのも負けずに美味しい!
口直しにシャクシャクしたサラダを食べる。
ベーコンとドレッシングの塩気で甘くなった口の中がスッキリする。
レタスとキュウリのシャクシャクした歯ごたえもまた楽しい。
スッキリした甘味のトマトも素晴らしい。
再びフレンチトーストを口にしたら、最後はスープの番だ。
秋は昼間は暖かくても、朝や夜は冷えるから暖かいスープが身に沁みる。
ほくほくのジャガイモが口の中で解けて、程良く硬さを残したニンジンが食感に変化を加える。
スープに溶け込んでしまった玉ねぎの甘みが味わいをまろやかにして、セロリの香りが飲みこんだ後に清涼感を添える。
寝不足で食欲があんまりないと思ってたのに、フレンチトーストを3枚ぺろりと食べてしまった。
ポッシェは3杯目のポトフを御替わり中。
良く食べるなーと苦笑いしながら視線を移すと、コンカッセがスープの海で溺死寸前になっているところを発見して慌てて救出した。
寝ても寝ても眠たがっているコンカッセに、明け方までの夜更かしはきつすぎたらしい。
体調管理も立派なお仕事なんだけどなぁ…。
今日の彼女は裏方にしておくしかないかな、と心の中でため息を吐いた。
でも、それもこれも、私が2人に話しておかなかったからという面もあるんだよね…。
どれをどう話すかが難しいけれど、これからはもう少し彼女達に相談をしていく様にしよう。
まずは…直近でやろうと思っていた迷宮のテコ入れの相談から…かな。




