171日目 夜中の訪問者 上
アッシェ:調薬担当の三つ目族の少女。話し方が特徴的。
コンカッセ:魔法具担当の丸耳族。いつも眠そうで、発言はぶつ切りした感じ。
ポッシェ:探索者組のクマ耳族。食いしん坊で女の子が好き。
スルト:ルナちゃんと結婚したばかりの幼馴染のネコ耳族。
ルナ:親友と言って良いと思う友達。スルトと結婚してラブラブ。
アスラーダ:私にとってとても大事な人。
2017/1/12 誤字の修正を行いました
文章を一部修正しました。
二人きりでお留守番をする1週間は風の様に過ぎてしまい、アッシェ達が王都から戻ってくると今までと変わらない生活にあっという間に戻ってしまった。
週に2回の外食の日を設けた以外は前と変わらない。
アスラーダさんはがっかりしたような、ホッとしたような、微妙な表情だったんだけど…。
何にホッとしたのかは考えない方が良さそうだと、それは見なかった事にした。
今は帰ってきた彼女達とお茶を飲みながら、ルナちゃん達と一緒にお土産で買って来てくれたお菓子を食べながら土産話を聞いているところだ。
随分と王都を満喫して来たらしく3人ともご機嫌で、身振り手振りを交えつつ色々と話してくれている。
アッシェは荷物を増やす訳にいかないからと、王都で服を買う代わりにスケッチブックに沢山の意匠を描きとめて帰ってきた。
これを元に休みの日に自作するらしい。
見せて貰うと、どれを見ても足の露出が多くって、デザインを見るだけでドキドキしてしまう。
一緒に見ていたルナちゃんは私とは違う意見みたいで、アッシェに「時間ができたら私のもお願い!」と言って気に入ったデザインを頼んでいた。
とりあえず、私に似合いそうなのは無い…ような気がする。
うーん…でも、ひざ下丈のワンピースはちょっと可愛いかな?
長めのブーツと合わせれば、露出も気にならないかも。
ちなみにコンカッセもアッシェの真似をして、沢山の意匠を書き留めたモノを持ちかえった。
魔法具を作る際の参考にするらしい。
こっちは、奇抜なものから繊細で優美なモノまで安心して楽しめた。
…まじまじと見てしまっても、それを着せられたりする危険性がないからね!
「王都もにぎやかだったですけど、こっちも負けてないですー!」
「活気はこっちの方がある。」
「屋台の質も悪くないみたいだよね。」
それが帰ってきた3人組の率直な感想だった。
王都もにぎやかではあるものの落ち着いた雰囲気で、今から大きくなっていく場所に特有の活気はないんだとか。成程と頷きながら聞いていたら、ポッシェが最後に爆弾を落とした。
「それに何より、可愛い女の子が増えた!!!」
物凄く嬉しそうにガッツポーズと共に口にされたポッシェの言葉に、コンカッセが光よりも早く反応して、無防備な股間に彼女の拳がめり込んだ。
声も無く悶絶する姿に、唾でも吐きかけそうな冷たいまなざしを向ける姿が恐ろしい。
思わず、隣に座っているアスラーダさんの袖を掴んでしまう。
アッシェとルナちゃんは、その二人を苦笑交じりに眺めていた。
「アレは……痛い……。」
「……痛いな……。」
スルトは眉を寄せつつ、アスラーダさんは目を逸らしながら小さな声でポッシェへの同情を口にした。
「なにはともあれ、お休みを満喫して来たので明日からまた頑張るですよー!」
「ん。お店がんばる。」
未だ蹲ったままのポッシェは放ったらかしで、二人は明日からのやる気を見せる姿に、私は苦笑を浮かべるしかなかった。
「あー…。うん。がんばろーね…。」
その夜、そろそろベッドに入ろうかと思っているところにアッシェがやってきた。
「りえらちゃんー。寝る前ですけどちょっとお話できるです?」
「良いけど…こんな時間にどうしたの?」
彼女には珍しい事に、『せんぱい』ではなくて、友達扱いする時の『ちゃん』付けだから、私的な話らしいとアタリを付けた。
秋になって、夜は冷え込む様になって来てもいるし、聞かれたくない話かもしれないから部屋の中に入れて椅子を勧める。
あまり人を入れる事のない部屋ではあるけれど、書き物をするのにも使っている机は2人が対面で座ってお茶位は飲めるサイズで、そういう時の為に椅子も二つ用意してある。
今までにこの部屋に来た事があるのはルナちゃん位なんだけどね。
部屋に用意してあるティーセットでカモミールティーを淹れてあげると、アッシェは嬉しそうにお礼を言って早速口をつけた。
そのまま、お茶を冷ますフーフーという音だけが部屋に響く。
何か言いにくい事なのかと思いつつ様子を窺がっていると、やっとアッシェは話す決心が付いたらしく、私の事を正面から見た。
「ちょっと言いにくいお話なのですけど……」
「うん。」
「アスラーダさんの事なのですー……」
そう前置きをしながら彼女が口にしたのは、アスラーダさんの事だった。
「りえらちゃんがどこまで知ってるのか分からないですが……。王都で、結構アスラーダさんの噂を聞いたのですー。」
「うん。」
「アスラーダさんが、王子を排除する為に王都に戻ってきてるとか根も葉もない噂もあるですけど、貴族との婚約の噂なんかもあって、でもでも、りえらちゃんにあんなにあからさまに言い寄ってるじゃないですか。姫はもうなにがなんだか分からなくて、でもでも、りえらちゃんが知らないでいたらお付き合い始めちゃうかもと思って姫は、姫は…」
「うんうん。アッシェは心配してくれたんだね。ありがと。」
話し始めたアッシェは、途中で何を言ったらいいのか分からなくなったらしい。
しまいには泣きだしてしまったので、彼女を慰める為に席を立った。
泣きじゃくりながら言葉を続けようとする彼女を抱きしめて背中をポンポンすると、ぎゅっと抱きつかれる。少し落ち着いたところで、知ってる分だけは彼女に話す事にした。
「あのね、去年アスラーダさんに大量のお見合いのお話が来たのは知ってるよ。」
「…そうなのです?」
「うん。たまたま、アスタールさんに用事があって部屋に行った時にね、聞こえちゃった。」
「……。」
「物凄く怒っててねぇ…。全部断ったらしいけど、アスラーダさんの立場を考えると、きちんとした相手もいないのに断れる訳がないんだよね。」
「…分かってても、好きなんです…?」
「うん。」
「なら、貴族の人とのお見合いをぶち壊す方向で頑張るです。」
私の返事に、彼女は変なスイッチが入ってしまった。
「いやいやいやいや!そういうのはしちゃダメだから!!!」
「だって、リエラちゃんを差し置いてなんて輩は放っては置けないです!!!」
「やーめーてー!!!それじゃあ、アスラーダさんの立場が悪くなっちゃうでしょう~!!!!!」
「いっその事、グラムナードから追い出されてくれれば全ては円満解決かもです。」
「それは円満とは言わないから!!」
「邪魔は入らないですよ?」
「今までの関係性にはヒビが入りそうだよ?!」
今度はお見合いをぶち壊す話から、アスラーダさんの立場を崩す方法を考える方にシフトしてしまったのを必死で止める。
それ!
私も望んでないからね!!!!
アッシェ、ちゃんと私の話も聞いて~!!!!




