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リエラと創ろう迷宮都市!  作者: 霧聖羅
騎獣の平原
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19日目 起こりうること

アッシェ:新工房の調薬担当。ちょっと変わった多眼族の女の子。

コンカッセ:新工房の魔法具担当。いつも眠そうなマイペースさんの女の子。

ラヴィーナ:王太后。アスラーダさんの叔母さん。ソウルフードはきゅうり。

アスラーダ:アトモス支店の監督役?面倒見のいいお兄さん。

ポッシェ:探索者組のクマ耳少年。食い意地が張った言動が目立つ。

ルナ&スルト:新婚さん。ルナちゃんはアスラーダさんの従兄の長耳族で、スルトはネコ耳族。

 結局週末は、1週間の早起きがひびいてぐーたらと工房組の3人はゴロゴロして過ごした。

出来れば、『素材回収所』に行きたいなと思っていたので残念だった。

ご飯を作るのをサボって、酒場でご飯を食べたのは思いの外楽しかったからまた行きたいなーと思う。

ちょっと、出費は痛かったんだけど…たまには雰囲気も変わって良いよね。


 その翌日は、探索者組が『騎獣の平原』の下見に入った。

下見の結果は「問題なし」って事で設置場所の選定をする為に、その次の日にあたる今日はお店をアッシェとコンカッセにお任せして私はアスラーダさんと候補地にお出かけする事になった。

 二人の今日の予定は、薬の作り置きを用意した後は雑貨屋さんらしい商品の作成に取り掛かるらしい。

客層を考える様にとは一応伝えておいたけど、何を作るつもりなのか凄く気になる…。

まぁ、戻ってからのお楽しみって事にしておこう。

 アスラーダさんを除いた探索者組は、今日は酒場で意気投合した村の人達と一緒に大森林に行くらしい。

村の人が入る範囲なら、問題はなさそうらしいので心配はしないんだけど、ルナちゃんが意味深なウィンクをしていたのが気になる。




「それにしても、見渡す限り素材だらけって言うのは興奮しちゃうね。」


 草原の中を、良く育っている薬草を見つけては摘みながら歩いて行く。

この辺りは、水場の類が遠いからたまに野ネズミや野ウサギが駆け出して行く以外は平和なモノだ。


「迷宮が出現したら、この辺りも開発する事になるだろうな。」

「う…。それももったいないなぁ…。これもお宝の山だし。」


 この平原は、本当に私にとってはお宝の山なんだよね…。

治療薬に使う薬草だけじゃなく、お腹の調子が悪くなった時に飲むといいものや、のどの調子が悪くなった時にいいもの。その他諸々の体の不具合に対応できるモノが結構な種類生えているんだもの。


「箱庭を公開したら、本当にアスラーダさんの予想通りになっちゃうのかな…。」


 さっき、ポロっと彼が口にした『これから起こりうる事』を考えると気持ちが沈んだ。

拠点をここにする事にしたのは私だけど、彼の予想があたってしまった時の事を考えると、ひどく不安になる。


「金が動くから…な。」

「無理してでも、王都に拠点を作るべきだったと思う?」

「あっちはあっちで、面倒事が次から次へと出てきたと思うから、大差ないんじゃないか?」

「『新薬』関連で、だよね。」

「それは、ここでもこれから起きてくる話だろうな。」

「まぁ、王都の至近距離で箱庭を公開した方が、ラヴィーナさんにとっては都合が良かったんだよね。」


 そう言いつつ、空を見上げてため息を吐いた。

『騎獣の平原』を迷宮として設置してしまったが最後、アトモス村は今の状態を保つことは出来ないだろうと言う彼の予想は、多分正しい。

そこまで考えてなかった私の頭の中には、きっとお花が沢山咲いてるんだと思う。

 『貴族』になっていないトーラスさんは、村を追い出される事はないだろうけど村長としては居られなくなる、と思う。

 今の村の人達だって、村長が変わってしまったら今までの様には暮らせなくなるだろう。

もしかしたら、村を出て行ってしまう人も出てくるかもしれない。

 ここに暮している人達の暮らしぶりが悪い方に変わってしまうのは、私の本意じゃない。

本意じゃないんだけれど、良い人も悪い人も、迷宮からもたらされる富を求めてやってくる事になる。

その富を求めてやってくる人の中に、『貴族』が含まれてる事をなんで思いつかなかったのかとそれが悔やまれて仕方ない。

リュース村だったら、一応『貴族』の村長さんだったらしいのに。

 後2年経っていたらトーラスさんは『貴族』になってたかもしれなくて。

それならこの問題は無かったかもしれないけれど、実際にはそうじゃない。

『貴族』じゃない人間が治めている土地に迷宮が現れて、『貴族』が治めるべきだとそう言う話になった時にこの村はどうなるのかと、どうしても悪い方向に考えてしまって…。

 不意に、アスラーダさんの手に頭を撫でられて、体がビクッと震えた。


「手は打つから、お前は考え過ぎるな。」

「…考えが足りな過ぎたなって、どうしても思っちゃう。」


 そう言いながら見た彼は、なんだかひどく困った表情をしていた。

今の言い方は、なんだか愚痴っぽく聞こえちゃったからな、と後悔したけど口から出た言葉は取り消す事ができなくって、謝罪をこめて彼の手にそっと触れた。


「黙っておけば良かったな…。」


 言いながら、長い耳を肩の辺りまでしょんぼりと垂らす姿は、なんだかアスタールさんを彷彿させる。

表情も一緒にしょんぼりしてるところは違うけど、やっぱり兄弟なんだなぁと変な感心をしてしまった。


「教えてもらえて良かったと思う。」

「そんな顔をさせると分かってたら言わなかった。」

「言われる前に、自分で気付いてるべきだったんだよ。アスラーダさんは、過保護すぎ。」


 そう言って笑うと、彼も困った顔をしながら苦笑した。


「まぁ、過保護だな。」

「有難いことではあるんですけど、今回みたいなのはきちんと教えて下さい。」

「………。」

「同じ事でも、無自覚にしてしまうより、起こりうる事に対して理解した上で行う方が私にはいいですから。」

「……分かった。」


 結局、夕方近くまで予定地でグダグダと考え続けた挙句、対応策は一つしか思いつかなかった。

どの道、最初から『この平原のどこか』に迷宮を作って欲しいと言うのはラヴィーナさんから指示にあったものだ。王都からの距離についてはちょっと目を瞑って貰う事にする。

拠点をここにした事にも特に文句が出てないから、大丈夫…だと思いたい。




 その日、アトモス村の南東に15分程歩いた場所に『迷宮』が発見された。

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