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リエラと創ろう迷宮都市!  作者: 霧聖羅
騎獣の平原
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12日目 事の発端

アッシェ:新工房の調薬担当。ちょっと変わった多眼族の女の子。

コンカッセ:新工房の魔法具担当。いつも眠そうなマイペースさんの女の子。

ラヴィーナ:王太后。アスラーダさんの叔母さん。ソウルフードはきゅうり。


2016/12/19 誤字の修正を行いました

 アッシェの新薬講座が盛り上がってる中、静かにお茶を淹れて回る。

なんだか、聞かされてるラヴィーナさんは楽しそうだし完全にまかせちゃおう。


「さ・ら・に!画期的なのはこちらのお薬…。なんと、な・ん・と…」


 もったいぶるアッシェの次の言葉を待つラヴィーナさんの喉がゴクリと鳴った。


「魔力水さえ手に入る環境下だったら、誰にでも作れてしまうのです…!」

「!!!!!」


 パフパフパフーシャランラシャランラ♪

突然の楽器の音にびくりとそちらを見ると、コンカッセがラッパみたいな楽器を吹きながら、鈴が沢山付いた物を激しく振り回してる。

何してんの…?

ラヴィーナさんは、賑やかしの音も気にならない様子で椅子を蹴倒し立ち上がる。


「お?」

「わた…」

「わた?」

「わた…」

「綿」

「私もつくりたい…!」


 キラキラ瞳を輝かせてアッシェを見つめる姿を見ては、否というのは難しい。

どうしたものかと視線を寄こしたアッシェに頷いて見せると、作り方の説明を始めた。




 アッシェの指導の元、無事に家庭用デラックスを完成させると、彼女はそれの入った容器を大事そうに胸に抱きしめた。


「私の作った初めての治療薬…!」


 うっとりした顔で容器を抱きしめたり眺めたりしている姿は、とてもじゃないが100歳を超えてる様には見えない。彼女は100年以上にも渡って抱き続けていた願い事を、ついさっき、一つ叶えたところなんだからこんな夢見る乙女状態になってしまうのも仕方のないところなのかもしれない…と、少し離れた場所から3人でお茶を飲みつつ見守る。


「それにしても…」

「きっかけが」

「転んだ子供だったとは。」


 調薬をしながら、彼女はタガが外れたかのように色んな事を思いついた順番に喋り出した。

思いつくままだから、内容はあちこちに飛んでるんだけど繋げて行った結果、今回の『高速治療薬の価格正常化』依頼の大本の原因というか理由というかが分かった。


「ところで、なんで『高速治療薬』の市価調整にのりだしたです?」

「市価調整…?ああ、値段が高すぎるってヤツね?」


 彼女に調薬を教えながら、アッシェが軽い調子で今回の依頼の発端を聞いてみたら、特に秘密にするつもりもなかったのかあっさりと話し始めた。


「あれは、5年くらい前だったかしら?まだ、お父様が生きてらしたからもうちょっと前かも。

私、夫が亡くなってから、対してやる仕事もなくなったから良く城下に降りるのよ。

あの時はお城のご飯が不味いから、お小遣いを1万ミルポケットに突っ込んで買い食いに出掛けたの。」

「そんなにひょいひょいお出掛けできるものなのですか」

「ふふ。私を閉じ込めておくのには練度が足りないわね。護衛兼お目付け役を昏倒させたに決まってるじゃない。」

「まさかの力技発言。」


 奥さん、笑顔で嬉しそうに言われても、なんだか反応に困ります。


「で、買い食いで『高速治療薬』を売ってるお店に行ったです?」

「串焼きを食べてるところに走ってきた男の子がぶつかって来て、転んで怪我しちゃったのよ。

慌てたわぁ…。狩りに行くつもりはなかったから、お薬は持ってきてなかったし。」

「狩りも一人で行くです?」

「そうよぉ。だから、2~3本くらいはいつも持って行くの。医務室から貰って。」


 ああ、お城の在庫から拝借という事ですね。

と思いつつ、容器を開発するまでの間はグラムナードでも、お城に納める用の魔法薬を月に2回作っていた事を思い出す。

あれも、移動で劣化するからあの頻度で作ってたんだろうと今なら解るけど、なんでこんなにしょっちゅう必要なのかと思ってたなぁ…。


「それで仕方ないから、買おうと思ったんだけど高くって買えなくって…。

2万ミルだなんて、高すぎるわよね?」


 そこから、値段が高過ぎるじゃないかと王都に居た兄…アスラーダさんのお父さんに抗議を入れてみたら、グラムナードでの値段を教えられ驚いた。

なんとかしろとゴネ続け、苦節5年(?)やっと、条件付きで試して貰える事になって派遣されてきたのが私達なんだそうだ。

 ちなみに、運転資金1千万ミルと賢者の石3つ分の魔力石は、お小遣い(国のお金)ではなく個人的に稼いだもので提供するのと、出来る協力は全てする事が条件だったらしい。


「でもまぁ…。アッシェとコンカッセは強力なバックアップの元、無料でお店を貰える事になってるですし、文句は言い辛いですー。」

「むぅ…。仕方がない。」

「それも、問題なくこのお店が経営出来るようになってからだよ。

間違いなく、厄介事はアレコレ起こるのは覚悟しておかないと。」

「その分の代金と諦めるです…。」

「それにしても、ゴネ続ければ我儘が叶うと言うのは教育に良くない。」


 コンカッセの最後の言葉に、顔を見合わせて乾いた笑いを浮かべるしかない。

当のご本人は、自分で作った家庭用デラックスを掲げたり抱きしめたりを未だ繰り返していて、しばらくはこっちの世界に戻ってくる気配がない。

ただ、これは彼女の我儘を上手く利用したんじゃないかという気もするんだけど…。

穿って見過ぎかなぁ…。

 取り敢えず今日の成果は、『効果は劣るが一般的には十分なレベル』の安価な治療薬について、

ラヴィーナさんの一定の理解を得られた…と思われる点かなと思う。

事の発端を考えるなら、家庭用デラックスで十分だと言うのは分かって貰えるだろう…。


 後日、この件でラヴィーナさんはアッシェにひどく懐いてしまって、どこにでもくっついて行く様になってしまい、彼女が悲鳴を上げる羽目になるんだけど…。

まぁ、それは別の話、だよね。

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