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リエラと創ろう迷宮都市!  作者: 霧聖羅
騎獣の平原
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12日目 教えて?アッシェ先生!

アッシェ:新工房の調薬担当。ちょっと変わった多眼族の女の子。

コンカッセ:新工房の魔法具担当。いつも眠そうなマイペースさんの女の子。

ラヴィーナ:王太后。アスラーダさんの叔母さん。ソウルフードはきゅうり。


2016/12/17 誤字の修正を行いました。

 小首を傾げつつこちらを見つめるラヴィーナさんの表情は、ただただ純粋に好奇心だけが浮かんでいる様に見える。ついでに、聞きたそうにしているのは彼女だけじゃなくて、アッシェとコンカッセの二人も朝から彼女の事をしきりに気にしていて、説明を待っている状態だ。

そりゃあ、昨日の夜いきなり押しかけて来た人が、当たり前の顔してお店のお手伝いをしてれば不思議にも思うだろう。

本当はもっとこっそり、ラヴィーナさんに気付かれないうちに広めようと思っていた新薬も、バッチリお手伝い中にみられている事だし変に隠さない事に決めて、説明しようとして方針を変える事にした。


「ラヴィーナさんに、一度お店を見て貰った方がやろうとしてる事をご理解いただけるかと思って。」

「ふぅん?」


 私の言葉に、更に首を傾げる。

ピンとこなかったらしい。


「それじゃ、質問させてもらいたいんだけど…。」

「はい。どうぞ。」

「なんだか、魔力の多いのやら少ないのやら、私の記憶にない魔法薬が随分とあるみたいだけど、それは何故?」

「じゃあ、これは調薬担当のアッシェから説明して貰います。アッシェ、先生役をお願い。」


 調薬全般は、ここではアッシェの担当なので彼女に説明役を譲る。

私が説明してもいいんだけど、彼女に『教える』練習をして貰う為だ。

まるで知識のない相手よりは多少なりとも予備知識のある人を相手にした方が、練習にはいいだろう。

…逆だったらごめんね、アッシェ。

 彼女は一瞬戸惑った顔をしたものの、すぐに気分を切り替えて「ちょっと待ってて下さいです―」といいながら、サンプルを用意しに行った。



「おまたせですー!」

「…アッシェ、その格好は?」

「おお、新境地。」


 戻ってきたアッシェをみて、思わず思考が止まった。

サンプルを取りに行ったんだと思っていたら、服まで替えてきたんだから当然じゃないかと思う。

いくら、『先生役』を頼んだからと言って、女教師風の服装に替えてくるとは誰も思わないだろう。

彼女は、長い髪の毛を後ろに高く結いあげてお団子状に纏めた上で、銀縁のレンズのない鼻眼鏡を掛け、白い胸元の開いたブラウスの下にはピッチリとしたタイトのロングスカートといういで立ちで戻ってきた。恰好だけを見るなら、お色気のあるデキル女教師的な雰囲気だ。

あ、胸に谷間が…。いいなぁ…。


「では、はじめるですよー。」

「この年で生徒だなんて、新鮮だわぁ。」

「アッシェの先生見届ける。」


 …私以外の二人は結構ノリノリだ。

仕方がないので何かを言おうとパクパクしてた口を閉じて、見守る事にした。

アッシェは台の上に新薬を効果の弱い物から順に左から右に並べる。


「さて、ここに並べたものがグラムナード錬金術工房・アトモス支店でのメインの商品になっている新治療薬になります。左から、家庭用・家庭用デラックス・治療薬になるですよ。

あ、家庭用は魔法薬じゃないのです。」

「はい、先生質問。」

「ラヴィーナさんどうぞです。」

「高速治療薬があるのに、それよりも効果が低い様にしか見えないものを売ってるのは何故ですか?」

「はいー。大変いい質問ですー。でも、その前に治療薬がどんなものかを復習したいと思うです。」

「高速治療薬を掛ければ、大体どんな傷も直るんじゃないかしら?」

「そうですねー。高速治療薬ならそうですが、この新薬はちょっと目的が違うです。」

「傷を治す以外に目的は必要?」

「傷は治すですよー。でも、高速治療薬は、すり傷に使うのには過剰な治癒力があるですよ。」

「……?」


 直すのにどう違いがあるのかでやっぱり引っかかったみたいで、ラヴィーネさんが首を捻る。


「高速治療薬は、ちょん切れちゃった腕も残ってさえいればくっつく程の治癒能力があるです。」

「そうねぇ。潰れてても治るわよ?」


 試した事あるんですか…?

ちょっと、想像したくないシチュエーションに冷や汗が垂れる。


「そう言う時には迷わず使いたいですが、そこまで強力なものだと分かると出し惜しみしたくなるのが人情というものなのです。」

「えええ~?」

「そこで登場するのが、家庭用治療薬!」


 ジャジャーンと口で効果音を付けながら魔力の籠っていないそれを高く掲げる。


「これは、普通のお家のお母さんが常備薬として作っている、その辺の薬草を煎じて作った塗り薬なのです。」

「魔力は籠ってないわよね?」

「お母さんの手作りですから。」

「…そう、お母さんの…。」


 アッシェのもって行きたい方向性が見えなくて、ラヴィーナさんが戸惑ってるのが見て取れる。

概ね予想通りかな…。

アッシェは、大事な事だからともう一度念押ししつつ説明を続ける。


「お母さんのです。で、これを塗ると2~3日で擦り傷や包丁でサクっとやっちゃった程度の傷なら治るですよ。」

「ほぼ自然治癒じゃないの?」

「まぁ、これを塗ると化膿はしないので効果はあるのです。」

「へぇ…」


 ちょっと、ただの煎じ薬を見る彼女の目が変わった気がする。

架空のお母さんを尊敬する眼差しだ。


「ですが、この煎じ薬も、魔力水を使って煎じるとコレこの通り。家庭用デラックスに早変わり~!なのです☆」


 今度は家庭用にと作った、現在試供品としておまけに付けている予定価格300ミルの一番効果の弱い治療薬を高く掲げるとクルリと1回転する。

コンカッセはそれを拍手をしながら囃し立てる。

一々、アクションが大きい。


「魔力水?」

「はいです。裏の湖から汲んで来たものですよー。」

「そんなところに湧いてるなんて知らなかったわ。」

「アッシェ達もビックリしたですよ。拠点の決め手だったです。」

「成程。」


 ここの湖で魔力水が手に入るのは彼女も知らなかったらしい。

感心した風に頷くと先を促した。


「ちなみにですね、ラヴィーナさん。」

「はいはい?」

「お母さんの煎じ薬。煎じる時のお水をただ魔力水にするだけじゃダメなのです。」

「あら、何故??」

「この煎じ薬なのですが、実はたーくさん塗った状態で日光浴をすると塗った場所が炎症を起こして、ぐずぐずになっちゃうのです。」

「!?」

「こわいですねー。おそろしいですねー。」

「お母さん、それでいいの?!」


 ラヴィーナさんは、虚空に居る架空のお母さんに思わずといった風に拳を握りしめ問いかけた。

中々、ノリがいいですね…。


「良くないので、塗った後はお日様が当たらない様に包帯を巻いたりするのですよ。

ですが、魔法薬にする時にただ魔力水に替えただけだと、包帯位じゃ防げなくなるのです。」

「ソレじゃ使えないじゃない。」

「そこで、研究した末出来上がったのがこちらの家庭用デラックス!」

「もったいぶらないでさっさと教えて頂戴。」

「はいです。メインになる薬草に更に炎症止めなどを配合する事により、塗った後の『お日様こわーい!』を無くしました。」

「凄いじゃない。」

「凄いのはそれだけじゃないですよー。」

「まだあるの?」

「なんと、治るのに2~3日掛った傷が、翌日の朝には治っています。」

「画期的!」


 私はアッシェの説明を聞いてるのが段々と面倒になってきたんだけど、ラヴィーナさんの受けは悪くない。仕方ないのでこのまま続けさせる事にしよう…。

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