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8日目 開店準備

アッシェ:新工房の調薬担当。ちょっと変わった多眼族の女の子。

コンカッセ:新工房の魔法具担当。いつも眠そうなマイペースさんの丸耳族の女の子。

アスラーダ:なんか、ちょっと焦ってる?

トーラス:アトモス村の村長。熊人。

 翌日、アスラーダさんは拠点に探索者組の3人を迎えに、1人で王都に戻って行った。

貸し馬も返却してきてくれるそうで、何と言うか…頭が上がりません。


 私達も彼を見送った後、早速開店する為の準備をする為にお店に向かった。

お店は中央広場のすぐそばにある、一等地と言っていい場所だった。


「思ってたより、大きいお店ですー。」

「色々置けそう。」


 2人が口にした通り、思いの外広い2階建ての奥行きのある木造の建物で、これを貰ってしまったのかとちょっとどころでなく驚いた。

中に入るとガランとした空間が広がっていて、奥に2階へ上る階段と、地下へ降りる為の階段に、裏へ出る為の扉があるのが見えた。

先に、地下室を覗いてみると建物の割には控えめではあるものの、しっかりとした作りのもので、在庫を置くのに問題なく使えそうだ。

地下から出て、2階を覗く前に裏口と思える扉を開けて外に出てみると、小さな庭に厠が設置されていた。


「おトイレはちょっと遠いですー。」

「2階から降りてくるのには丁度いい。」

「あ、なるほどです。」


 庭から戻ると、最後になる2階へ向かう。

階段を上がって右手にある扉を開けて中に入ると、リビングとして使う事を想定されているのか、大きめの空間になっていて、奥に扉が二つとその扉のちょうど真ん中あたりに大きめの暖炉が設置されていた。


「一応、住み込みできるようになってるんだね。」

「2部屋だと、二人だけですー」


 奥の扉を開けると、丁度リビングの暖炉がある辺りに小型の暖炉が付いていた。

グラムナードで貰ってた部屋からするとせまく感じるけど、この広さなら、2人寝起きするのには十分だろうと思う。


「あっちも同じ広さ。」

「雑貨屋さんが夫婦で住み込むのが想定されてた感じだね。」

「なるほどですー。」

「さて、どこから手を付けよう。」

「んー…。家の方も見てからにした方がいいかもです。」

「同意」

「じゃ、家の方に行こうか。」


 2人の意見に従って、購入した家に向かう。

家は、さっきのお店と比べても然程変わりがない大きさで、2軒100万ミルで本当に良かったんだろうかと思ってしまった。

…大分値引きしてくれたんだろうなぁ…。

そう思うと有難いけど、申し訳ない気持ちもわいてくる。

大森林が近いせいかこっちも木造で、がっしりした印象の建物だ。

こっちは、最初から住むのが目的だからか1階はリビングに台所におトイレ。

台所には地下への階段があって、食料を貯蔵しておけるようになっていた。

2階は個室が4つにベランダと分かり易い。

隣り合ったもう一軒は同じ作りだ。


「お風呂はやっぱりないですー。」

「しょんぼり。」

「自分達で作るしかないねぇ…。」

「家具もないですし、やる事沢山です。」

「…腕が鳴る。」


 結局、アレコレ話し合った結果、最初はお店の準備を整えることから始める事にした。

アッシェが2階から『洗浄』した場所に、私とコンカッセがまずは当座必要になる寝具を用意する。

素材は私の『回収所』であらかじめ集めておいた木材だ。

ベッドの枠組みを私がざっと作ると、機能性一辺倒なその形にコンカッセが不満げな顔をした。


「今は時間がないからね。時間を見て手を入れてくれる?」

「了解。」


 ベッドを取り敢えず3つ作って設置すると、アッシェが掃除を終わらせて戻ってきた。


「お布団敷くですよー?」

「お願いー」


 さぁさぁ、布団をよこせと手を広げるアッシェのそばに『しまう君』から取り出した布団を積み上げる。ベッドは部屋の大きさによって、ある程度サイズを考えないといけないと用意してこなかったんだけど、布団は多少大きくても平気だろうとグラムナードで用意してきたから、出すだけで済む。


「これで今夜は、ここでお泊まりできるですねー♪」


 ご機嫌で布団を運ぶアッシェに思わず笑ってしまう。

今日からここが私達のお店になるんだから、そこに寝泊まりできるなんてなんだか心弾むのは同じだ。

お店の用意が終わったら、家の方にも家具を入れて行かないといけないから、効率よくやっていこう。

 暖炉の前に、毛皮の敷物を出してから、はたと手が止まる。


「ね。食卓の大きさどうしようか?」

「大きいのはあっちの家だけでいい。」

「4人でいいのでは?」

「了解ー。」


 そんなこんなで、ずんどこ開店の為の準備が進んで行った。

途中で様子を見に来たトーラスさんが、床に置いた木材から壁が生えてくるのをみて素っ頓狂な声を上げていたと言うのはご愛嬌。

「なんじゃこりゃー!?」って、ただの壁ですよ、壁。

なんて見られちゃったのを軽くスルーしたけど…きちんと、戸締りを確認してからやらないとダメだったなぁ…と後で反省した。

知らないで見たら、そりゃあビックリするよねぇ…。

 そんなこんながありながらも、夕方には開店できる程度に作業は進んだのでした。

最後の仕上げは看板。

グラムナードの皆で頭を寄せ集めて作った物を『しまう君』から取り出して、『アトモス村支店』とこの村の名前をコンカッセが、指定のロゴで追加したら出来上がり。

出来上がったばかりのそれを、入口のすぐ上に取り付ける。


『グラムナード錬金術工房 アトモス村支店』


 夕暮れの中、取り付けた看板を見上げると、なんだか胸に込み上げてくるものがある。

開店は、週明けの紫月。

明日は家の整備に、明後日は丁度休養日で宿以外のお店はお休みの日になる。

 最速とは言わないけど、拠点を決めるのが思いのほか順調だったお陰で最初の月から収入が得られそうなのはタイトな資金からすると、とてもありがたい。

でも、今はともかくここまで来た事を喜んでおきたい。


「アッシェ、コンカッセ」

「はいですー」

「ん。」

「今日はお疲れ様!明日から、また頑張ろう―!!!」

「「おおー!!!」」


 3人、顔を見合わせハイタッチを交わして笑顔になると、狩り帰りのおじさん達が思わず振り返るくらい大きな声で歓声をあげた。

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