7日目 アトモス村3
アッシェ:新工房の調薬担当(予定)。ちょっと変わった多眼族の女の子。
コンカッセ:新工房の魔法具担当(予定)。いつも眠そうなマイペースさんの丸耳族の女の子。
アスラーダ:王都以外に拠点を構える事になってなんだか嬉しそう。
トーラス:アトモス村の村長さん。でっかい熊人。
ミーシャ:村長さんの奥さん。可愛い兎耳族。明るい薄茶の毛並みをもふもふしたい。
トーラスさんは、ミーシャさんに私達の事を頼むと後処理をしてくると言って家を出て行った。
亡くなった3名の葬儀の手配やなんやらで、村長である彼が居ない訳にもいかないらしい。
「でも、本当に皆さんが居て下さって良かった。」
そう言いながらミーシャさんは、兎耳を揺らしてほんわりと微笑む。
でもそう頬笑む瞳は、死者が悼む悲しみの色を浮かべていた。
その様子に、聞くのをためらいながらもどうしても確認しておかなくてはいけない質問を口にした。
「森からはいつもあんなに魔獣がやってくるものなんですか?」
「いいえ。ここに村を作り始めてから2年になるけど、今回の様な事は初めてよ。」
「そうですか…。」
「最初は獣が森から出て来はじめたみたいなんだけど、あれよあれよという内に『魔獣が出てきたー!』って誰かが叫んだの。ウチの人もそれを聞いて飛び出して行ったっきり戻ってこないし…。」
胸を抑えつつ「本当に怖かった」と呟いてほっとしたように肩の力を抜く。
私はその言葉に笑顔で返しつつ、内心ではホッと胸をなでおろしていた。
この村も工房を出店する候補地である以上、ある程度は安全であるというのは大事なことだ。
毎日、今日みたいなんじゃ困るけど、月に一度位なら許容範囲内…な気がする。
「丁度、この村の最高戦力の二人が王都に行ってしまってたから、余計不安だったわ。」
「ありゃりゃ。それはタイミング悪かったですー。」
「本当に。」
ミーシャさんは話しながらもお茶を用意してくれた。
お茶請けは蒸かしたお芋だ。
湯気の立つそれを手に取り、皮を向いてかぶりつく。甘くてほくほくしててとても美味しい。
はふはふと頬張る姿をニコニコしながら見ていたミーシャさんが、不意に首を傾げた。
「そういえば…。皆さんはこんな場所までなんのご用事でいらっしゃったの??」
「アッシェ達はお店を出す場所を探してるですよー。」
「ん。色々作る。」
「お店…!どんなお店かしら??」
ミーシャさんの疑問には即座にアッシェが答えた。
コンカッセはそこに微妙に情報を追加。
それを聞いたミーシャさんは、目をキラキラさせて食い気味に質問し出した。
「アッシェはお薬と服を作るです。」
「私は魔法具と細工物。」
「リエラさんは?」
「え、あ、私はどっちも作れますけど、どちらかと言うと調薬の方が好きですね。」
「りえらせんぱいはこんなにちまっこいけど、しはんなんですよー。」
「デザインはイマイチだけど、魔法具も作れる。」
「お薬がメインのお店になるのかしら?この村は大森林で狩りをして生活してるから、出店して貰えると助かっちゃうんだけど…。」
お祈りポーズで小首を傾げつつ、上目遣いでうるるっと…。
うわ。キュンと来た!
ミーシャさん、色仕掛けはヒキョウですよ!?
思わず助けを求めてアスラーダさんを見上げると、なんだか生温かい笑顔でこっちを見守ってた。
いやいや、笑ってないで助けて下さいよ。
「今はあちこち回って検討してる段階なので…。」
「是非…!ウチの村に…!」
この一行の代表が私だとアッシェの言葉から察したミーシャさんからの猛アタックに、クラクラきながらもなんとか時間を稼ぐための言葉を口にしたものの、彼女も引く気配がない。
結局、この問答はトーラスさんが戻ってくるまで繰り広げられたのでした。
い、一応、お姉さまのウルウル攻撃はなんとか凌ぎました…。
うう、いっそ『ここに決めた!』って無責任に言えちゃえば良かったのに…!




