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7日目 アトモス村2

アッシェ:新工房の調薬担当(予定)。ちょっと変わった多眼族の女の子。

コンカッセ:新工房の魔法具担当(予定)。いつも眠そうなマイペースさんの丸耳族の女の子。

アスラーダ:王都以外に拠点を構える事になってなんだか嬉しそう。


2017/6/11 言葉回しの修正を行いました。

 処置が早かった事もあって、死者は3名で抑えられた。

死亡した3名は加勢する前に倒れた人達で、戦闘が終わった時にはすでに事切れてしまってた。

いつの間にか馬を人に預けたアスラーダさんも治療に回ってくれたのも、死者を増やさずに済んだ要素だったかもしれない。

一人でやるより、二人。二人よりも三人・四人でやった方が早く治療を終える事ができるんだから。

 怪我の治療によって動ける様になった人は、意識を失っている人を運んだり積み重なる様に倒れたおびただしい魔獣の死骸の仕分けをし始めた。

 しばらくして、仕分けられた魔獣の死骸の中でも素材を扱う為には損傷がひどすぎるものは一か所に集められて火に掛けられた。その血の匂いに釣られて、他の野獣や魔獣が来てしまうかもしれないからだ。

戦闘後の後処理をそこまで手伝ったところで、後ろから静かな声が掛けられた。


「…皆を助けてくれて…礼を言う。」


 振り向くと、最初に言葉を交わした熊人が立っていた。

その口調に、感謝以外の何かも感じて、隣に立つアスラーダさんの外套をキュッと摘まんでしまう。


「礼よりも、今日の宿を頼めないか?」


 そんな彼の答えは、熊人の言葉への返答じゃなかった。


「馬での移動に加えて、今のだ。彼女等も疲れているだろうからな。」

「あ、ああ…。分かった。なら、俺の家に来てくれ。俺はこの村の長をしているトーラスだ。」

「アスラーダだ。」


 熊人…トーラスさんに答えた後、視線で自己紹介を促されて私も名乗る。


「リエラです。」

「アッシェでーす。」

「コンカッセ。」


 トーラスさんは、口の中で名前を繰り返してから先に立って歩き出した。


「こっちだ。ついてきてくれ。」


 彼の後に続いて歩き出したところで、炎麗ちゃんがアスラーダさんの肩にふわりと舞い降りた。

アスラーダさんが甘える様に頬をすりよせる子竜の顎の下を歩きながらくすぐると、嬉しそうな声を上げてから、再び空に舞い上がって森の方へと飛び去っていった。




 外から見て、ある程度は想像がついていたものの、村の規模は随分と小さいものだった。

村に入ってすぐの場所にある大きめの建物に、損傷の少なかった魔獣の死骸が運び込まれて行くところを見ると、そこが解体所として利用されているらしかった。

建物はどれも木造で、建てられてからそれほど時間が経っていない様に見える。

それぞれの家には小さいながらも庭があり、殆どの家がそこで細々と野菜が育てているみたいだ。

道路は広くとられていて、建物の配置も適当に建てたい場所に建てた風ではなく、きちんと建てる場所を考えて村づくりを行っているように感じる。

トーラスさんは結構、几帳面な性質らしい。

 私達が連れて行かれたのは、村の奥の方にある他よりは大きい家だった。

玄関を入ったところは大広間になっていて、集会所の代わりに利用されている事がみてとれる。

中に入ると、パタパタと足音がして奥の扉から兎耳族の可愛らしい女性が飛び出してきた。


「あなた!お怪我は!?」


 ピョンと、トーラスさんに飛び付きながらその体に怪我がない事を確かめ、ほっと溜息をついたところでこちらに視線が向いた。


「ぴゃ?!」


 耳をピンと立てて垂直に跳ね上がると、トーラスさんの陰に隠れる。


「あ、ああ…。その、妻のミーシャだ。」

「…ミーシャ、です…。」


 なんとなく気まずそうに彼は奥さんを紹介してくれた。

ミーシャさんは恥ずかしげにうつむいた状態で、名乗ってくれる。

見た感じ、20代半ば位だと思うんだけど、なんだか随分と可愛らしい印象だ。

トーラスさんの反応も相まって、なんだかほほえましく感じる。


「ミーシャ、さっきの魔獣の襲撃で加勢した上で治療までしてくれた方達だ。

今日はウチでもてなしたいんだが、頼めるか?」

「まぁ……!」


 彼女はトーラスさんの説明に両手を口に当てて驚きの声を上げると、ピョコンとお辞儀をして輝くような笑みを浮かべた。


「夫と、村のみんながお世話になったみたいでありがとうございます!」

「そんな……当然の事をしただけですよ。」


 周りのみんなに目をやると、アスラーダさんは苦笑を浮かべ、アッシェはニヨニヨ口元に笑みを浮かべ、コンカッセは胸を張って頷いているという状態。

ええと、このまま歓待を受けた方がいいという事なのかな?

なにはともあれ、可愛いお姉さまの歓待はなによりのご褒美なんだけど…。

結局、ミーシャさんの熱心なお言葉に甘えて歓待を受ける事になったのでした。

…やっぱり、私はどういう訳か年上のお姉さまに弱いんだよね。

アッシェにニヤニヤされながら突かれたのも、全てはミーシャさんが可愛いのがイケないという事にしておこう。

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