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7日目 アトモス村

アッシェ:新工房の調薬担当(予定)。ちょっと変わった多眼族の女の子。

コンカッセ:新工房の魔法具担当(予定)。いつも眠そうなマイペースさんの丸耳族の女の子。

アスラーダ:王都以外に拠点を構える事になってなんだか嬉しそう。

 アトモス村は、規模からすると随分と頑丈そうな外壁を擁している。

というのが外から見た第一印象だった。

村の周りは、高さ3Mはあるんじゃないかという石壁に覆われていて、頑丈そうな門が備え付けられている。

近づいて行くにつれ、なんだか様子がおかしい事に気が付いた。

西の方の石壁の上に人が何人も並んで立っていて、その手に持った弓で何かを射ている。

視線を更に西に向けると、大森林の方角から剣戟の音が聞こえてきた。


「まずいな。」


 アスラーダさんは言うが早いか、馬の腹を蹴ってそちらへ向かわせる。

追従して来ていた炎麗ちゃんが、上空からそっちの方へ矢の様に飛んで行くのが目の端に移った。

前方の剣劇の音が近づくのと共に、魔獣と戦う人達が見えてきた。


「リエラ、目はしっかり瞑ってろ。」


 そう言いながら、手綱を片手だけで持ち直すと腰に差した剣を抜き放ち、今にも魔獣に切り裂かれそうになっていた人との間に切り込んだ。

目を瞑っていろと言われた物の、そんな事を言っている場合じゃない。

私も息を大きく吸い込むと、戦っている人達に補助魔法を掛けていった。

途中、チラッとアッシェ達が魔法で上手く魔獣の相手をしているのが目の端に映る。

あの二人もいるから大丈夫だな。と、安心する。

アッシェは手綱を上手に捌きながらも魔法で器用に迎撃しているし、コンカッセは攻撃しつつも危なそうな人の前に土壁を作って保護してる。

私は何故か、他者を傷つける事に強い忌避感があるせいで攻撃には参加できないものの、コンカッセみたいに守る方はできそうだ。早速参考にさせて貰う事にする。

 戦闘の終わりは、必死で補助をしている内に突然おとずれた。


「お疲れ。」


 そう言って頭を撫でる彼の顔の方がよっぽど疲れてる。

私というお荷物を乗せたまま、戦闘行為を行ったんだから当然と言えば当然だ。


「アスラーダさんもお疲れ様です。」


 そう労いつつ、周りを見回すと大量の魔獣の死体が転がっていて、その相手をしていた人達は、後処理を始めているものの、動けない人が何人もいるみたいだった。

アッシェが馬を横に並べると、一人の熊人がこちらにやってきた。


「助勢、助かった。」


 そう言って、熊人は口角を上げた。多分、笑ったんだと思う。

熊人って言うのは、ポッシェみたいなクマ耳族とはちょっと違う。

ポッシェは人間にクマの耳と尻尾を付けた感じなんだけど、熊人は大きな区分だと獣人族に分類されていて2足歩行で喋る熊といった方が近い。

とは言え、本物の熊とは体型が違うから間違われる事はない。

あまり獣人族とお近づきになる機会がなかった私には、さっきの彼の表情が笑ったのかどうかの区別をきちんとつける事が出来なかった。


「大したことはしていない。」

「いや、あんたらが来てくれなかったら全滅しかねなかった。礼を言うよ。」


 熊人さんと話しつつアスラーダさんが馬上から降りたので、私も補助をして貰って下に降りた。

アッシェ達も馬から降りる気配がした。


「あの、けが人の手当てのお手伝いをさせて下さい。」

「ああ…。だがなぁ…」


 怪我をした人もいるだろうと申し出ると、奥歯に物が挟まった様な返事が返ってきた。


「今、立ててるヤツ以外は…なぁ…。」


 悔しさがにじむその言葉を聞き終える前に、足が勝手に動かない人に向かって動いてた。


「どうするです?」

「薬は惜しまず、重症者から。」

「了」

「おっけーでーす。」


 アッシェの質問に簡潔に答えると、すぐに二人から期待した通りの返事が返ってくる。

二人はさっと横を走り抜けると、周りの人の手を借りつつ治療を開始した。

私も息のある人を見つけると治療を始めた。

 その人は、片方の腕を失った上でお腹を抉られていて内臓がはみ出して来ていた。

私は下唇をぎゅっと噛みしめると、ぎゅうぎゅうと内臓を中に押し込んで『高速治療薬』傷口にドバドバと降り注いだ。内臓が出て来ない程度に傷がふさがったのを確認してから手を離す。

次は、腕。早くしないと失血死してしまう。

焦りつつも周りに視線を巡らせると、運の良い事に切り離された腕が転がっているのが見つかった。

魔獣に齧られた形跡もないなんて、随分と運がいい。

その腕を拾ってくると元あった場所に押しつけながら『高速治療薬』をバシャバシャと掛ける。

腕がくっつくまでの間に、うつろな目で治療を眺めていた彼の口に『治療丸』を放り込む。


「飲んで。」


 そう言うと、もごもごと口が動いて中の薬を飲み下した。

程無く、彼の口から洩れていた変な音が無くなる。

ほっとしながら彼に自分の腕を抑えておくように指示をして、次の患者に向かった。

 その後ろで、さっきの熊人が蒼くなったり白くなったりしてる事には全く気付かなかった。

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