4日目 アエトゥス村 5
アッシェ:新工房の調薬担当(予定)。ちょっと変わった多眼族の女の子。
コンカッセ:新工房の魔法具担当(予定)。いつも眠そうなマイペースさんの丸耳族の女の子。
アスラーダ:王都以外に拠点を構える事になってなんだか嬉しそう。
窓口で移住について訊ねると、人数を見てなのか別の部屋へと通された。
全員が席に着くと、早速説明が始まった。
「移住についてとのお話ですが、ご家族でご移住をお考えでしょうか?」
「え?」
暫く沈黙が落ちた。
今いるメンバーは、
リエラ(15歳)・アッシェ(14歳)・コンカッセ(14歳)・アスラーダさん(27歳)。
うん。親子には見えない年齢構成だよね。
咳ばらいをしながら、役所で受付をしてくれた女性が口を開き直した。
「…ご家族ではいらっしゃらない…?」
「…はい…。」
今度は気まずい沈黙。
家族と勘違い…しづらいと思うんだけどなぁと思いつつ、続く言葉を待つ事しばし。
痺れを切らしたコンカッセが話を進めようと口を開いた。
「雑貨屋する予定。続きは?」
「あ、はい!申し訳ありません。」
フリーズしてたらしい受付の女性は、ハッとして謝罪すると説明を始めてくれた。
「雑貨屋と言う事は、商いを始めたいとの事ですね。それですと…」
彼女の説明を聞くと、「持ち帰って検討します」という事にして宿に戻った。
村役場で説明してくれたのは、要約するとこんなかんじだった。
商店開業補助金あります
・この村で新規に商店を開業すると、補助金として500万ミルが支給される。
・その時に、10年間以上この村を拠点に商いをする誓約書を作らされる。
内容としては10年に満たない間に拠点の移動もしくは、商いを継続する事が出来なくなった場合には、
違約金が発生するという物。
・違約金は経過年数によって変動するらしい。
・違約金の支払いが出来ない場合、村での肉体労働をその対価とする。
税金について
・国に納める税のほかに、村に治める税が店舗の敷地面積により税金が掛かる。
小型店舗は年に100万ミル。
中型店舗は年に300万ミル。
大型店舗は年に500万ミル。
・税の金額は各店舗の収益によっても変わる。
・従業員の所得にも、店舗とは別で税金が掛かる。
店の建設について
・町の美観を損なわない為、外装の塗装は白地に青で統一すること。
・うちの工房だと大型店舗の扱いになる。
・大型店舗の建築費用は、補助金を差し引くと500万ミル。
宿に戻って部屋に入ると3人でぐったりとベッドにダイブした。
この拠点探しの間は、女3人は同じ部屋でアスラーダさんだけが個室になってる。
お年頃の女の子と同じ部屋じゃ、流石の彼も困るよね。
「やっぱり、ここは無い。」
「海鮮は魅力ですー」
「まぁ、予算的にも難しそうだね。」
コンカッセは、なんだかとことんこの村が嫌らしい。
きっと、本人に詳しく説明して貰おうとしても説明が難しい理由なんだろう。
多分、なんとなく嫌ってやつだ。
アッシェは、美味しいものを作る材料があれば文句は言わないからここにこだわりはなさそうかな。
海鮮は…、リエラが居る間は『素材回収所』から提供すれば食べられるし、どうしてもって時は冷却の使えるポッシェに運ばせるって手もあるから気にする項目じゃなさそうかな。
私の判断としては、この村は難しいかなとは思ってる。
予算的なものもだけど、村役場で聞いた話が胡散臭くって。
収益によっても変わる税金とかなんですか…。
基準とかもころころ変えられそうな感じがして物凄く嫌だ。
そうは言っても、今回の私のお役目は、きちんとアッシェとコンカッセが経営できるようになるまでの監督役。
お店が軌道に乗ったら一旦グラムナードに戻る事になってるから、拠点にする場所の選択権は無い。
アッシェとコンカッセが気に入った場所ならなんとか軌道に乗る様にしなきゃいけないんだよね。
この町があまりお気に召さなかったみたいなのは、正直助かったなって思う。
「なにはともあれ、あと2か所見に行く事になってるしね。そっちも見に行った上で決めよう。」
「さんせーですー。」
「ん。そうする。」
「明日は次の村に向かうから、早めにご飯食べて寝よう。」
そう言って、私は二人を連れて1階の食堂に向かった。
ポッシェ:アッシェのご飯が恋しいなぁ…。
スルト:禁断症状早くないか?
ルナ:今朝食べたばっかりじゃない…。




