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4日目 アエトゥス村 3

アッシェ:新工房の調薬担当(予定)。ちょっと変わった多眼族の女の子。

コンカッセ:新工房の魔法具担当(予定)。いつも眠そうなマイペースさんの丸耳族の女の子。

アスラーダ:王都以外に拠点を構える事になってなんだか嬉しそう。

 教えて貰ったお薦めの料理屋さんは港沿いにあるらしい。

お腹が空いたと力なく呟くコンカッセの背を押しながら『渡り鳥亭』を出ると、海の方から冷たい風が吹き上げてきた。


「風が寒いですぅ。」

「フレトゥムールの海風とはまた違う…。ここは無理…。」


 風に髪を巻き上げられながら、アッシェもコンカッセも身を縮める。

私の2本の三つ編みも肩の辺りまで持ち上がるんだから、随分な風の強さだ。


「いつもこんなに風が強いのかなぁ?」

「たまたまだろう?」


 私の疑問にいつもの調子で答えてくれたアスラーダさんを振りかえって、その佇まいの普段通りさに思わず絶句した。

なんで、アスラーダさんは髪の毛が風に煽られてないの?!

口をパクパクさせていると、アッシェも振り返って目を丸くした。


「アスラーダさん、ずるいです~!魔法で何とかできるならアッシェ達にもプリーズ!!!!」

「ん?ああ…悪い。」


 アッシェの猛抗議に驚きつつも、アスラーダさんはみんなに自分と同じ術を掛けてくれた。

私が掛けてた、『周りの空気を暖める』モノとは違って、『自分を中心に周りの空気を回転させる』って言えばいいのかな?

吹きつけてくる風を、ふんわりと周りを回る風が受け流してくれるのか真ん中に居る私はとっても快適。


「これ、いいねー。」

「自分だけやるとは卑怯。」

「風属性使えないのが残念ですぅ。」

「殆ど反射的に使ってるからな…。気付かなくて悪かった。」

「風が強いところでは、次からよろしくですー。」

「気を付ける。」


 やたら辛辣な文句を呟くコンカッセの頭を撫でながら、アッシェが能天気を装いつつ大げさに自分にない属性を嘆く。

少し気まずそうに謝るアスラーダさんに、さり気なく次のおねだりをする辺りは流石だな、と苦笑を浮かべた。アッシェはなんだかんだで、甘え上手なんだろうなぁ。


「それにしても、こう言う使い方は思いつかなかったなぁ…。」

「なら、今度色々教えよう。」


 横にアスラーダさんが並ぶのとほぼ同時に、コンカッセがいつもの呪いの言葉を呟いた。

はっとして手元を見ると、ごくごく自然にアスラーダさんの手に包み込まれた自分の手がある。

一瞬悩んだ物の、振りほどくのも失礼だろうと判断してそのままにする事にした。

 港に向かって歩いて行くと、海に向かって伸びる幅の広い緩やかな階段が現れた。

視界いっぱいに、濃い蒼色の海が広がる光景に思わず息を呑んだ。


「…そう言えば、本物の海って初めてみるかも。」


 緩やかな階段を下りながらも、白い建物と海の青の対比の美しさから目が離せずにいるとアッシェ達に笑われてしまった。


「そういえば、りえらせんぱいは内陸出身だったですねー。」

「グラムナードでも見た事あるはず。」

「確かにあるけど、天然のとはなんか違うよ?」


 グラムナードの中町にある迷宮は『海の迷宮』だ。

そこで塩を採ったり、海の魚を捕まえたりしているから勿論私も行った事がある。

でも、目の前に広がるこの光景とはまた違った感じがするんだよね…。

うーん。

上手く表現ができない!


「王都にも港はあるんだが、そっちには結局足を延ばしてなかったな。」

「工房が落ち着いたら、王都にまた遊びに行くですよー!

可愛いお洋服が一杯だったです。スカートの丈が短くってビックリしたです。」

「ん。もっと建物を観察したい。」

「確かに王都ももっとみたいねー。」


 そう言えば、王都の若い女の子がひざ上のスカートを穿いてるのを見て、物凄く驚いたんだよね。

グラムナードは勿論の事、エルドランも含めて道中の町のどこでもそんなに短いスカートなんて無かったし。王都から近いこの村でも、すれ違う人にあんなに短いスカートを穿いた人はお目にかかってない。


「最近流行り出したらしいな。」

「寒そう。」

「ええ~!可愛かったですー!アッシェも欲しい!!」

「足が出るのはなんだか恥ずかしくない?」

「そこも含めて、オシャレなのです。」


 コンカッセの端的な言葉には私も激しく同意だ。

アッシェは結構、服飾に興味あるみたいだからその内自作し出すかもしれない。


「元々、縦に長かった村を横に広げてる最中?」

「そうみたいだね。港に向かって蛇行してる道沿いに建物を増築してるし…。」

「最初からその予定で道を作ってる…?」

「王都から人が流れてくるのをアテにしてですかね。」


 などと、村の印象を話しあいながら歩いて行くと、思いの外時間をかけずに料理屋に辿り着いた。

港の目と鼻の先にあって、結構な賑わいだ。

どうやら、漁に出ていた船が帰ってきた後らしくて覗いてみたものの、随分と混んでるみたいだった。

話しあった結果、少し港の方を見てからもう一度来る事にする。


「個人が買える市場もあると思うですよー!」

「いざとなったら、それをアッシェが焼くといい。」


 港町出身の二人のこの言葉が決め手だ。

お腹が空いたと何度も言ってるコンカッセは、「いざとなったら」と言ってはいるものの、完全にアッシェに料理させる気満々なのが丸分かりで思わず笑ってしまった。

 魚を買いこむのは二人に任せる事にして、アスラーダさんと二人で情報収集に勤しむ事にしようかな。

買った魚は後でこっそりと『しまう君』に入れる事にしよう。

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