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リエラと創ろう迷宮都市!  作者: 霧聖羅
異世界の穴
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651日目 現状確認と、次の目標

アスタール:リエラの師匠の耳長族。色々うっかりさんだと思う。

アスラーダ:リエラの婚約者。アスタールさんの双子の兄。彼を思い浮かべると、ついついにやけちゃう。

ラエル:リエラの疑似おじいちゃんな小人族。物言いがきっつい。


2017/4/4 誤字の修正を行いました。

 さて、アスタールさんが調べ物をしている間に、私は現状確認を済ませておこう。

そう決めると、部屋に戻りノートに現在の状況を書き出していく。


 書き出すとするなら、3年前。

アスタールさんが要望を聞いたところからか。

たまたまその前は、私がアスタールさんの部屋に何かを聞く為に訪ねて行った時に、アスラーダさんに沢山の縁談が来ているらしい事と、グラムナードの次期領主として他の町の貴族との婚姻を求められている事を聞いてしまって、ショックを受けて部屋に籠ってた時だった。

何にショックを受けたって、アスラーダさんが貴族だって事をその時まで私はすっかり頭の隅に追いやっていて、『いつか結婚できるなら、アスラーダさんみたいな人が良いな』なんて思ってたりしたから。

その、縁談話を聞いて、『アスラーダさんじゃないと嫌』だと思ってた事に気が付いて、でも、身分が違い過ぎると言う事を叩きつけられた状態になった訳だ。

簡単に言うなら、いわゆる『失恋』状態。

ラエルさんが、様子がおかしい私を心配して看病してくれてたんだよね。

アスタールさんが訪ねてきたのを見た彼は、厄介事だと察して追い返そうとしてくれてたんだけど、私の希望で結局話を聞く事になった。

 

 アスタールさんが要望の内容は、私にグラムナードの『錬金術師』を継いで欲しいと言う物。

理由は彼が12歳の頃に、育てすぎた賢者の石を経由して開いたと言う『異世界への穴』。

その『穴』を経由して、彼は異世界とやらの知識をアレコレ入手したらしいんだけど、その過程でそちらの世界に居る女性と心を通じる様になったんだそうだ。

こう、なんというか……究極の遠距離恋愛的なかんじなんだろうか?

文章だけの遣り取りを続けている内に、いつの間にかそんな気持ちを抱く様になったんだって。

それが、私がグラムナードにやってきた翌年には、かの世界の『疑似世界』とかいう『ぶいあーるげーむ』への接触だか接続だかによって彼女との疑似的な触れ合いを可能になったんだとか。

疑似的な触れ合いって何だろうって思ったんだけど、説明を聞いてもやっぱり良く分からなかった。

出来る事なら私も体験してみたいものだ。

 さっき、実際に『異世界の情報』とやらの欠片を見せてくれたけど、あの文字が読めない事が悔しいと思った位に私も興味を惹かれたから、きっと最初にあの情報を目にしたアスタールさんもそうだったんだろうなと思う。

 まぁ、そこから1年かけて、実際にその世界へ行く事が出来るのではないかと言う展望が見え始めてきて……そうしてから私に、錬金術師を継いで欲しいと頼みに来る事に繋がったらしい。

『異世界』と聞いて、ラエルさんは「馬鹿らしい」と一笑に付したけれど、私はそれに同意することができなかった。

 実は、アスタールさんは頭は良いんだけど、想像力というか創造力に著しく欠ける。

調薬みたいな事は得意だけど、新しい意匠を作ったりとかは出来ない感じ。

調薬で必要なのは、元になる素材の効果と副作用を組み合わせた場合の仮定の組み立てだから、創造とはちょっと違う……気がする。

ちなみにそういう所は、私もちょっと、アスタールさんと似たようなところがあるんだけどね。

そして、そうなるとどうしても、『異世界』なんて荒唐無稽なものをリアリティ満載に説明するなんて事が出来ないんだよね。私や彼が話したり、説明したりできるのは『実際に見たモノ』だけなんだ。

だから私は、彼の言う話をその時点で信じて、グラムナードの面倒を一生涯みるという事に同意した。

その時の状況では、アスラーダさんを手に入れる為の最短ルートだったからって言うのもあるけどね。



今考えると、短絡的にも程があるな。



 思わずその時の自分に突っ込みを入れたくなったけど……。

まぁ、どうせアスラーダさんと結婚するのなら、グラムナードに骨を埋める事になるんだから同じ事だなとは思う。『錬金術師』としてだと、どうしても責任の重みが桁違いだけど……、領主夫人と言うのだって、一般的に見ればやっぱり重責だよね。


 アスタールさんは、自分の要望を聞いてもらう代わりにと、私が好きな事をする為の『自由時間』を用意した。

それは私が、10年の契約期間が終った時に出来たらやってみたいな、と口にしていたお店を開く機会と、そのお店を引き継いでくれる仲間達。

ついでに、ラヴィーナさんの希望も叶えて貰えると助かるとは言われたけれど、特に強制された訳でもなく、例え叶えられなかったとしても、『力量不足でごめんなさい』で済みそうだったから気楽なものだった。それでも、話を聞いた時点で彼女の希望に近い形を実現出来る方法は考えて、その為に新薬の開発もしたけれど……アレはなんというか、まぁ、半分方趣味だから……。

新しい薬を開発するのって、めちゃくちゃ楽しいんだよね。

こっちに完全に戻ってこれたら、またやれるなぁ。楽しみすぎる。

 ……と、話が逸れた。

なにはともあれ、アスタールさんの用意してくれた『自由時間』のお陰で、私がやりたいと思っていた事は割と達成されている。


その1 アスラーダさんとの婚姻は、特に問題が無ければ秋に成立。

その2 新規でお店を立ち上げて、経営を軌道に乗せた。後はアッシェとコンカッセに任せればいい。

その3 お題付きだったとはいえ、自分の趣味に則った迷宮をグラムナード外に2つも作れた。

その4 孤児院への寄付は、お給料からせっせと仕送り出来ていて問題ない。

その5 学校の普及の為の寄付みたいなものも、行えた。

その6 孤児院出身者の就職とかの斡旋とかできないかと思ってたのも、工房に弟子入りして貰う他に、迷宮都市アトモスの方で、結構な雇用が発生している。


 なんというか、その5と6は予定外の事態ではあるけど、妄想はしていた話だったから……。

うん。感無量?

予定外だった分は、この後はグラムナードからでも働きかける事はできるだろうかし、こっちに拘束される事になっても問題はあんまりない。

これだけ、私自身の欲望と言うか妄想を実現させて貰ったんだから、是非ともアスタールさんの、『異世界の彼女の元』に行くと言う夢も実現させたいと思う。

次の私の目標は、『アスタールさんを想い人の元に行かせる。』事に決定だ。

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