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625日目~632日目 平和すぎるのかな?

アッシェ・コンカッセ:アトモス村の工房を切り盛りする兄妹弟子。

ヒカル:アッシェの恋人っぽい美人のお兄さん。女の人だったらお姉さまと呼べたなぁ。

アスラーダ:リエラの恋人。仇名は『お父さん』だったりして面倒見が良い。

フィフィ・エイダ:アトモス村の工房の売り子さん。リエラと出身の孤児院が同じ。

ラヴィーナ:アスラーダさんの叔母様。王太后。

アスタール:アスラーダさんの弟で、リエラの師匠。

 何事もなく1週間が過ぎ、アッシェとコンカッセはポッシェを護衛代わりに連れて王都へと求人に向かって行った。無事に良い人が見つかる事を祈りたい。

まぁ、アッシェなら最初から悪い事考えてる相手は採用しないだろう……。

ソレはともかく、彼女等が出掛けて行くのを見送りに行った時、ヒカルさんがあれやこれやとアッシェに注意をしている姿はちょっと面白かった。

アスラーダさんがお父さん系だとしたら、ヒカルさんはお母さん系だと思う。


 彼女たちが居ない1週間はあっという間に過ぎていく。

コレと言った事件も何にもなくて、平和って良いねとフィフィと話した。

ディーナが居なくなった分は、フィフィがエイダと2人で頑張ってくれているから、大丈夫そうで一安心と言ったところかな。



それにしても……。

ラヴィーナさんが起こると思っているらしい事態は、本当に起こるんだろうか?



 その事態の為に、一刻も早く騎士団を鍛える為にディナド大森林に多いタイプの魔物がでる迷宮を欲しがっていた彼女が、何故それが起きると思っているかと言うのが、未だに分かっていない。

聞いても答えてくれないせいもあるんだけれど。

これだけ平和だと、そんな事件は起こらないんじゃないかとも思いたくなってしまう。

お養父さんのところで、念の為大森林に出る魔物の情報を調べては貰っているんだけど、私達がここに着いた時に起きてた様な兆候は特にないらしい。



もしかしたら、この村の近くじゃなくて他の場所で起きるのかもしれない。



 ふと、そう思ったのは何でだったのか。

良く分からないまま、私は北の方に目を向けた。






 それから、1週間経つと2人は沢山のお土産と共に戻って来て、求人の成果について報告してくれる。

新しく採用したのは全員女性。

売り子としてフィフィと同じ年の女性を2人と、今年までで学校を卒業予定の若い子を、新しい弟子として3人採用する事にしたらしい。

売り子として採用した人達は今週中にはこちらにやって来る予定なんだそうだ。

人員の補充が早くて何より。


「弟子入りしてくれる子は、地の属性が2人とぉ……」

「地と風の2属性の子が1人。」

「って事は、アッシェに2人とコンカッセに1人付く感じなんだね。」

「ですぅ♪」


 魔法薬を作れるメンバーが少なかったから、早く戦力になって貰えるように鍛えないといけないけど、まぁそれまでは何とか凌げるかな、と思う。


「姫も、やっと弟子持ちですぅ~♪」

「私の方が先に弟子を取るとは思わなかった。」


 アッシェはちょっぴり、その事に舞い上がり気味でにこにこしている。

まぁ、アッシェ達の年齢で弟子を持っているって言うのも中々稀有な事だと思うんだけどね。

まだ15歳……来年は16歳か。

うん、普通ならまだまだ自分が弟子どころか雑用係でもおかしくない年齢だなと思う。

私も大概だけど、彼女たちだって十分規格外だよね。

ええ。

私が大概だって言う自覚は、流石にあるんだよ……。

でも、それだってアスタールさんの工房に入ったからだって言うのもちゃんと分かってるけどね。

他のところに行ってたら、こうはなってなかっただろうと思う。

というか、その場合ってどうなってたんだろう?

きっと、アスラーダさんと会う事も無かっただろうし、もっというならこの村にやって来る事もなかったに違いない。

アッシェ達とも出会う事は無かったんだろうと思うと、アスタールさんとあの時出会えたのは本当に幸運だったなと思う。


「私達の年齢で、弟子が居るのなんか随分と異常な事なんだけどねぇ……。」

「「確かに」」


 アッシェとコンカッセの声がハモって、みんなで顔を見合わせて笑った。

今ある、このなんでもないような普通の日々がいつまでも続くと良いな、と改めて思う。

それにしてもその日の夜は、昼間に変な事を考えていたせいか妙な夢を見てしまって、「……パパじゃなーい!!!」って言う自分の叫び声で目が覚めた。

その夢は、妙なって言っても変な意味じゃなくって……。


「アスラーダさんは、お父さんじゃないもん……。」


 小さな私を抱っこしている誰かを、アスラーダさんが幸せそうに抱きしめてくれる夢。

アスラーダさんが私によく向けてくれる優しい表情を、他の人に向けるのを見て『私』が悲鳴を上げた。

ただの夢なのに胸が早鐘を打っていて、その事に、意外と私って執着心が強いんだな、と自己嫌悪に陥る。



だって仕方ないじゃない。

凄く凄く、大好きなんだもん。



 自分に言い訳しながら、真っ暗な部屋の中もう一度眠りを求めて布団を被る。

今度は、若草色のネコミミ族の女性と抱きしめあっているアスラーダさん?!-と思って良く見たら、アスタールさんだった-の夢を見た。

現実に有り得ない色からして、まさに夢だけど。

夢の中のアスタールさんが、随分と切羽詰まっている様に感じて妙な胸騒ぎを感じる。

それは、相手の女性の半ば伏せた眼差しのせいであったのか、アスタールさんの頬に光る物が見えたからかは定かではないけれど。

そういえば、アスタールさんの計画って、その後上手く行ってるんだろうか……?

現実じゃない筈なのに、やたらと現実感のあった夢を思い返し頭を抱える。



ここんところ、やたらと平和だからかな?

不安になる材料を無意識に探してるのかもしれない。



 無理矢理そう結論付けると、頭を振って湧きあがって来ようとする不安を振り払った。

そんな事より、もう、来週末に迫って来ている年越しの舞踏会の方を何とか乗り切らないと。

妙な夢を見て眠る前よりも微妙に気持ちが疲れているのを感じながら、私は身支度を整えた。

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