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3日目 話してくれますよね?

アスラーダ=リエラに凄く良くしてくれる、師匠のお兄さん。

 翌日は休日で、朝食を食べ終わったら一日自由行動。

スルトとルナちゃんの夫婦は町中デートに出かけて行き、アッシェとコンカッセはポッシェを護衛役代わりにして町中の色々な物を眺めに出かけて行った。

きっと、コンカッセがあちこちの建物の飾り彫りを舐める様に見てくるんだろう。

なんだか、その様子が簡単に頭に浮かんで、出かけて行く皆を見送りながらニヤニヤしてしまった。

 皆、夕飯も食べてから帰ってくる事になってるから、明日の朝まではアスラーダさんと二人、自由時間って事になる。

食器を『洗浄』した後、ざっと離れの中を掃除するとアスラーダさんと一緒に、久しぶりにリエラの『素材回収所』に入った。



 今日訪れたのは、『春』の回収所。

柔らかい陽光が降り注ぐ優しい緑色の丘陵地に、ふんわりと優しい風が渡って行く。


「今日はどうするんだ?」

「んー…。まだちょっと疲れてるし、草の上でごろんとしたいかな。」


 少し笑いを含んだ声に応えながら、彼の手を引いてお気に入りの日向ぼっこポイントに向かう。

丘の半ばのせせらぎを見下ろせる場所が一番のお気に入りだ。

二人で並んで座ると、宣言通りすぐにごろんと転がった。


ああ、逆光になってアスラーダさんの顔が見えないや。

逆の位置にすれば良かったと残念に思う。


 転がった状態で見上げてがっくりしてると、彼も横になって頬杖をついて覗き込んできた。

その表情が凄く優しげで、心臓がきゅっとした。

ドキドキするのを気付かれないように、一瞬視線を逸らして気を落ち着けた。


「アスラーダさん、スルトには説明した?」

「ああ…。ルナが自分から説明するそうだ。」

「それって、ルナちゃんが説明できる内容なの?」

「グラムナードの民なら、子供の頃から教えられる内容だからな。

考えを巡らせてれば、十分想定できたはずだった…と言ってた。」

「ふーん…。」


 不意に手が伸びて来て、頬に触れた。

思わずビクッとすると、苦笑いをしながら頬にかかっていた髪を横に避けてくれる。

触れられた頬が熱をもっていくのを見て、アスラーダさんは目を細めた。


こういうのは、勘違いしちゃうからやめてほしい…!


 心の中で文句を言いつつ、背中を向ける。


やだもう、恥ずかしい!!!


「悪かった。こっちを向いてくれないか?」


 暫くして、少し戸惑った様声が背中に掛けられた頃には少し落ち着いてきたので、彼の方に向き直った。


「お触り、厳禁ですよ?」

「………。」

「さっきみたいのは、やーです。」

「…分かった。」


 返事がないのでじーっと見つめながら、再度伝えるとため息混じりに頷いてくれた。

なんだか、一瞬目を逸らして文句らしい言葉を呟いたみたいだけどよく聞こえなかった。


「…で?」

「話してくれますよね?」



 聞きたいのは、王都での錬金術の状況についてなんだけど、スルトにどういった事を説明するつもりだったのかも聞いておきたかった。

錬金術の状況に関しては…、ちょっとだけ想像が付く気はするんだけど念の為の確認だ。


「少し、長くなる。」

「明日の朝まであるし。」

「そんなに喋れるか。」


 しれっと言った言葉に毒づきながらも、彼が話してくれたのは500年位前の話だった。


500年前。

 グラムナードの民は、他種族の迫害から逃れて同胞と盟友である竜人族と共に、住み慣れた土地をはるか南西に下りこの大陸にやってきた。

竜人族の背に乗っての移動に耐えられなかった老人や子供達がその旅によって多数失われ、辿り着けたのは出発した時の5分の1以下だった。

 辿り着いたこの大陸は、彼等の使っていた技術がまだ未発達であり、彼等の中のある者はその技術を教えながらその地に残り、それ以外の者達は安住の地を求め旅を続けた。

大陸の中央にある岩山に隠れ里を作ることを決めた彼等の王は、魔法の技を使い山中に居住地を創り上げた。生きて行く為に必要なものは、彼の王が創り出し、彼等は安住の地を得る事が出来た。

彼等はその地に『グラムナード』と言うかつての国と同じ名を付けた。

盟友達は彼等が安住の地を得ると、再会を約束して大陸内に散って行った。



「500年前の話なんだよね?」

「ああ。大体そうだな。」

「竜人族って?」

「身近なところだと、炎麗だな。」

「あの子、竜人族なの?」

「…言ってなかったか?」

「ほぼペットの竜だと思ってたけど…。そう言えばそうだったっけ。」

「まぁ、今はペットと大差ないな。」


 今は屋根の上でお昼寝してるはずの炎麗ちゃんだけど、その内人間になったりするんだろうか…。

うーん?想像が付かないな…。

そう思いつつも、話を本筋に戻した。横に逸れるときりがない。


「未発達だった技術って?」

「魔法の類は殆ど使われてなかったそうだな。」

「彼の王って?」

「うちのじいさんだ。」

「…アスラーダさん達って…」

「今年27だ。」

「おじいさま、長生きだったの?」

「800近くまで生きたな。偉大な魔法使いであり錬金術師だった。

ただ、王として…親としてはどうだったんだろう…とは思う。」

「そっか…。」


 魔法の使い方を教えたのが、逃げてきたグラムナードの人?

そう言えば、グラムナードではひどく普通の事の様に魔法が使われていたっけ。


「錬金術ももしかして…?」

「見よう見真似で始めたらしい。」

「…見よう見真似が形になりだしたのが今…だとか?」

「らしいな。イニティ王国の錬金術師の殆どは、魔法学園での元研究員だな。」


『魔法、と言うのはまだ新参の技術でね。

イニティ王国は、ここに追いつく為に魔法学園に人を集めて必死に研究している、と言うのが現状だね。』


 皮肉屋の小人族の先生の言葉が耳に蘇ってくる。

なんだか、パズルのピースが集まってきた様な気がする…。


「もしかして、迷宮でしか育たない植物って、逃げ出してきた大陸とか言うところが原産だったり?」

「らしいな。」

「必要なものを創ったのって、迷宮で?」

「そうだ。」


 偉大な魔法使いで錬金術師が連れて逃げてきたグラムナード民。

その人達が旅の途中で現地の住人と交わって行くうちに、魔法や錬金術が伝わっていって…。

きっと、間違えて伝わったり、魔力が扱えず形だけ真似した結果、魔力の込められていない『高速治療薬』が巷にあふれる様になった…と。


「魔法具は意外ときちんと伝わってますよね?」

「あれは、魔法学園が必死で手作業で作る努力をした結果だ。

あと、有効期間が短い魔法薬と違って、形が残るからな。」

「そっか…。なら、魔法薬もきちんと材料を供給していけば。時間が掛かってもちゃんとしたものが作れるようになるのかな…。」

「可能性はあるとは思う。」


 結局、最終的にはラヴィーナさんの計画に一部は乗らざるを得ないっていう寸法らしい。

とはいえ、彼女の希望を100%叶える訳でもないけどそこは妥協して貰わないとね。

その為もあって、エリザも置いてきた訳だし。


「まぁ、なんにせよ。まずは箱庭を早急に一つ創らないとダメだね。」


 考えを纏め終わったところで、ため息混じりに決意表明。


「今日はもう、お仕事は抜きにしてのんびりしましょうか…。明日から、アスラーダさんにも頑張って貰いますからよろしくね?」

「じゃあ、明日からがんばる為に、昼寝用の抱き枕になってくれ。」


 彼はニヤリと笑って手を伸ばしてきた。


「リエラは、抱き枕じゃありません!お触りきんしー!!!」


 キャーキャー言いながら追いかけっこをして、結局最後には抱き枕にされて一緒にお昼寝をした。

グラムナードの人達が逃げ出してきたという、もう一つの大陸はどんななんだろうと思いながら…。

コンカッセ:リア充滅びろ。

ポッシェ:急にどうしたの?!

アッシェ:きっと、毒電波が飛んで来たですよ…


2016/11/29 矛盾点の修正を入れました。

修正前)「ほぼペットの竜だと思ってた…。」

修正後)「ほぼペットの竜だと思ってたけど…。そう言えばそうだったっけ。」

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