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617日目 通知

アッシェ:工房の調薬担当の三つ目族。

コンカッセ:工房の魔法具担当の丸耳族。

トーラス:リエラの養父になった熊人族。

ジュリアンヌ:スフィーダ領主夫人。お作法の先生をしてくれてた。

「そう言えば、昨日の午後に王宮からの通知がきたのですぅ。」


 アッシェが思い出したようにそう口にしたのは、昨日の報告が終って在庫の確認を始めた時だった。


「詳しい事はコレを見て欲しいですけど、エルドランにも魔法学校的なのを作る予定らしいですよぉ。

そんでもって、その教師になれる人材を募集したいって言うのが趣旨なのです。」

「エルドランに?」

「北にある大都市のちょうど中間だからって言うのが理由みたいデスけど。」


 ソレを聞いてチラッと、アルンの姪っ子ちゃんとやんちゃな王子さまの婚約の事が頭をかすめる。


「……成程です。王子の婚約者にアルンちゃんの姪っ子ちゃんが決まったんなら、その実家に華を持たせる的な意図もあるんじゃないですかねぇ。」

「王子様の婚約者って……。一体、どこから聞いたのそんな話。」


 アッシェがペロリと口にしたのは、まだ正式には発表されていない話だ。

この間、アスラーダさんがこっそりと私に教えてくれた事だけど、トーラスさんはおろかジュリアンヌさんにも内緒にしているのに、なんでアッシェが知ってるの??

内心、驚きながらじっとアッシェを見詰めると、彼女の額の目が気まずげにツッと視線を逸らした。

暫くの間、彼女と無言でそうしていると、作業に集中していたコンカッセが不思議そうに顔を上げた。


「……喧嘩?」


 心配を滲ませるその声に我に返る。

コンカッセを安心させるように微笑みながら、心の中で、アッシェに対しての警告を思い浮かべると、彼女はそっと視線を逸らした。



そういう事か……。



 今まで、アッシェの行動で不思議に思う事はあったんだけど、察しが良いのかと見逃してきたのは、間違いだったらしい。


「アッシェのそれって、ヒカルさんも同じなの?」

「姫と違って、じゃんけんに負けない程度ですぅ。」

「?」


 首を傾げるコンカッセには悪いけど、彼女もコレは知らない方が良い様な気がする。

アッシェは、彼女の一番の理解者と言うだけで十分だろう。

じゃんけんに負けない程度って事は、ある程度の先読みが出来ると言うのと同義だろうと言うツッコミは横に置いておく。そういや、三つ目族って呼んでしまってるけど、もしかしたら。アッシェ達の出身の島の中では他に正式な呼称があるのかもしれない。

 それはともあれ、今この場にコンカッセしか居なかった事に感謝するしかないなと思う。

王子の婚約者が決まったなんて話、フィフィじゃいつ、誰に話してしまうか分かったもんじゃないから。

情報源がここだって言うのは、あっという間に広まってしまうだろう。


「何の話?」

「ふふふ。ソレは内緒です。」

「ずるい。」


 コンカッセは頬を膨らませたけど、ゴメン、話せないや。

本人が話す気になったのなら別だけど……。

そう思いつつ、心の中で謝罪しておく。

コンカッセの場合、この事が分かったとしても、アッシェとの今の関係が崩れる事は無さそうだけれど、私が口にしていい話じゃないだろう。

チラリとアッシェを見ると、彼女は苦笑を浮かべて「近いうちに。」と口パクで伝えてきた。

 後は本人が上手くやるだろうと納得して頷くと、先程渡された封筒の中身を出して内容を確認する。

大量に印刷されたらしいそれは、概ねアッシェが言っていた通りの内容だ。



教員の募集かぁ……。



 実技を教えられる人間って事で、こう言った工房にも配布しているらしい。

実技はイマイチでも、教えるのは上手だって人も中にはいるからそういう人を探してるのかな?

まぁ、ウチの工房には縁のない話だなと思いながら書類を仕舞う。


「ウチからは出せる人はいないですけど、ジョエル魔法薬店さんのところとか、トゥルマ錬金術工房さんとかは食指が動く人も居そうですねぇ。」

「後は、王都で店を閉めるか悩む年代とか?」

「そうかも。でも、工房との10年契約をしてなくて、結婚の予定とかもなかったら私も応募したかったなぁ……。」


 そうは言っても、年齢で弾かれるかな。

あんまり若すぎる教師も、信頼を得られないから仕方ないけど。

本来なら10年契約が終ってからっていう手もあったんだろうけど、グラムナードに骨を埋める事にしちゃった今となっては教師の道はないんだよね。

グラムナードに戻ったら、地道に弟子の育成に努めよう。

その中から、新たな伝達者を育てればいいのだ。


「来年の、どれ位までリエラちゃんはこっちにいられるです?」


 グラムナードに戻った時の事を考えたせいか、アッシェが不意にそう訊ねてきた。


「前にも言ったと思うけど、早くて秋。遅ければその次の春みたい。」

「もっと早くにあのヤローに引導渡せばよかったですぅ……。」

「言えてる……。貴重な時間を……。」

「結婚準備を始めるとなると、来れる時間が更に減りますもんねぇ……。」


 私の答えに、2人は肩を落とす。


「まぁ、グラムナードに戻っても、ちょこちょこ様子を見に来ると思うよ。」

「師範のちょこちょこは……」

「アテにならないですぅ~」



……良くご存じで……。

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