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2日目 報告会-工房組

アッシェ:新工房の調薬担当(予定)。ちょっと変わった多眼族の女の子。

ポッシェ:新工房の採集担当(予定)。女の子が大好きなクマ耳族の男の子。

コンカッセ:新工房の魔法具担当(予定)。いつも眠そうなマイペースさんの丸耳族の女の子。

スルト:リエラの幼馴染のネコ耳族。ルナちゃんと結構お熱い感じ。

ルナ:リエラの友達。スルトにラブラブ。

アスラーダ:王都育ちのはずなのに、なんだか居心地が悪そうに見える。

 全員で夕飯をしっかりと堪能した後は、互いの報告会の始まりだ。

応接間のソファに思い思いに腰掛けると、報告会の開始を宣言した。


「さて、では今日の報告会を始めます。

まずは私達、工房組から報告させてもらうね。」


 そう言いながら、卓の上に買ってきた『高速治療薬』を並べて行く。

まず並べるのは、『グラムナード産』を3本だ。

今、ここに居るメンバーはグラムナードで修業してきた仲間達だから当然の事の様に魔力を視認する事が出来る。魔法が相変わらず苦手なスルトも他のメンバーほどスムーズにではないものの、きちんと見る事が出来るようになっている。

だから、この3本を見た探索者組の3人は揃って息を呑んだ。


「これって…。」

「みんながグラムナードで作ったやつ…?」

「ひでぇ…」


 愕然とした表情のルナちゃんに、泣きそうな顔になるポッシェ。

スルトはあまりの事に表情が抜け落ちている。


「これが、どれも『グラムナード錬金術工房謹製』の最高級品として1万ミルを超える価格で売られています。」


 あまりの事に、3人ともが押し黙る。

暫くの沈黙が落ちたところで、ルナちゃんが重い口を開いた。


「左の期限間近なのは仕方ないわね。グラムナードからだと荷馬車で運ぶなら半月近くかかるもの。

 真ん中のが期限が切れた後も商品として店にあるのも…劣化しているのが分からないなら…と言えなくもないかもしれない。一番良い状態は一月しか保たないから、ベストの状態じゃないにしても、二月までなら治癒にかかる時間が増えるだけだものね。この状態がベストな状態だと思ってる可能性もあるし。

同じ理由で期限内に売り切れない可能性を考えると値段も仕方ないと言えなくもないかもしれない。

でも…。」

「右のは、ひどすぎるよ!こんな、こんなの…」


 ルナちゃんの言葉をさえぎるように、涙声で叫んだのはポッシェだ。


「水でカサ増しした上で、薄まった色を誤魔化す為に着色料でも入れたってとこか。」


 ポッシェの言葉の後を引き取ったのはスルトだ。

大分怒っているらしくて、その声にはいつもの陽気さは欠片も見当たらない。

工房組も、これを見た時には気が遠くなったからその気持ちはとてもよく分かる。

工房の仲間達が、これを作るのに払った努力も労力も馬鹿にしてるとしか思えないからね。

 次に出すのは、王都の錬金術師たちが作ったと言うモノだ。


「これは?」

「アッシェが最初に作ってたみたいなヤツだね。」


 新しく出した『高速治療薬』と言う商品名の品物を見て、ルナちゃんとポッシェは戸惑った顔をした。


「これは、王都の錬金術師さん達が作った『高速治療薬』と言う名のナニカなのです。」

「「え…。」」


 アッシェが何とも生温かい笑みを浮かべて説明すると、二人は口をポカンと開いて絶句した。


「師匠は、その辺の事情も全部知ってるんだろ?」


 スルトは憮然とした表情でルナちゃんを抱きよせると、その頭をワシワシと少し乱暴に撫でまわした。

その視線はリエラの隣に座っているアスラーダさんに向いてる。


「ある程度は。」

「知ってる分だけでも話せよ。」


 ベシバシとスルトの尻尾が苛立ちを示してソファの手すりを叩く音の中、アスラーダさんは肩をすくめるとスルトに質問し返した。


「どこから聞きたい?」

「ぜんぶ。」

「それだと随分と長くなるな…。」


 そう言ったアスラーダさんは、どこから話すか悩んでいるみたいだった。


「スルトせんぱい。そんな事は全部聞いても意味ないです。」

「なんで?」

「アッシェ達は、魔法薬の相場をグラムナードの外町レベルに近づけるのがお仕事です。

他の工房がゴミを量産してても、そこはどうでもいいお話なのですよ?」

「なんだよ、それ。」

「猫兄は、これを使ってるかもしれない探索者の立場で見てる。でも、今流通してる分は私たちではどうしようもない。どうしてこうなってるか考えるより、今はどうすれば良くなるかを考えるべき。」


 工房組の二人の、聞き様によってはあんまりな言葉にスルトは毒気を抜かれた様に目をぱちくりさせた。スルトの腕の中から抜けだしたルナちゃんがその頭を撫でる。


「スルトん、ごめんね。ビックリしすぎちゃって…。」

「別に…。」


 ルナちゃんに視線を向けて、スルトは少し表情を和らげた。

それを見て、アスラーダさんが一番身近な血縁者でもある筈のルナちゃんに、こういう状態だと言う事を説明していなかったらしい事に対して怒っていたのかと納得した。

いつも明るくてあっけらかんとしたルナちゃんがこんなにショックを受けたのが心配だったぽい。

 ただ…、教えなかった事に理由があるような、そんな気がする。

何と言うか、偏見のない状態で自分の目で見てどうするかを決めさせようとしている…そういう印象だ。

もし、その考えが正しいなら、アスラーダさんの意思じゃない。

どっちかというと、ラヴィーナさんの方がやりそうな感じがする。


「師匠、後できちんと教えて。」

「分かった。」


 さっきよりは柔らかくなった口調でアスラーダさんに言うと、ルナちゃんを抱きしめ直す。

アスラーダさんがやけに素直に頷いてるところを見ると、この予想はそう遠いものじゃなさそうだ。

スルトは随分と現金なことに、さっきまで機嫌悪くひじ掛けを叩いていた尻尾をルナちゃんの腰に巻きつけて、機嫌良さそうな様子になってる。

ラブラブなのは分かったから、いちゃいちゃするのは二人きりになってからにしてほしいなぁ…。

アッシェ:スルトせんぱいは、ルナちゃんの事しか見てないです~。

コンカッセ:チ…。リア充滅びろ。

リエラ:コンカッセ、怖いよ^^;

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