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第6章 水子

皆んな〜♫ 元気かなぁ〜♫

夏だよ〜♫ 納涼だよ〜♫

怪談話だょ〜〜ッ♫


これは…実話です。

20歳の夏。


私は、専門学校を卒業後、当時、関西初のバイク便会社に就職しました。


専門学校では、航空貨物学科という、訳のわからない学科を専攻していました。

親戚が、シンガポールエアラインで働いていていたのもあって、毎年の暑中見舞いや年賀状を英語でスラスラ書けるようになったら、採用してやる…っと、言われたのが、きっかけで…ご多分にもれず、幼少期から飛行機好きの男の子であった私は、興味もあって、この専門学校に決めました。…しかし、やってる授業の多くは、ECCスクールさながらの、英会話と英文タイピスト…昔は、PCも普及して居なかったので、英文タイプライターです。


…はぁ、つまんね。

英語は、中学生から大の苦手科目でした。

楽しかったのは、飛行機を誘導する手旗信号の授業ぐらいでした。


専門学校を出て、スグに大阪の伊丹空港にあるAGSエアグランドサービスという会社でアルバイトを始めました。


まだ、関西国際空港が、無かったので、伊丹空港は、大阪国際空港という名前でした。


ここで、貨物輸送機から運ばれてきた荷物の仕分け作業をしていました。


…手旗信号で、飛行機を誘導。


…なぁんだ…バイトでも、できるのか。


専門学校行く意味ねーじゃん。


それでも、F1グランプリの開催なんかがあると、色とりどりのF1マシンが運ばれてきて、興奮したのを覚えています。


ジェットエンジンの巻き上げる、砂塵は、凄まじく、真っ白の作業ツナギやマスクが、1日で、真っ黒になります。


次の日、また新しい作業ツナギがロッカーに準備されます。


そんな折…たまたま、走り屋仲間が、当時、関西初のバイク便会社の面接を受けるということで、興味半分で、同行したら、面接で、友人が落ちて、私が受かってしまいました。


今のバイト先に不満は、ありませんでしたが、飛行機の巻き上げる砂塵が凄まじく、長く勤務する所では無いと思っていたので、渡りに船で、転職しました。


この頃、私は、ミニバイクレースにハマっていました。50ccのミニバイクを改造したレース。

比較的、お金を掛けないで、楽しめる事から、一時、ブームになりました。


昼間は、バイク便。


夜は、ミニバイクレースの練習と

バイク漬けの日々を過ごしていました。

ミニバイクの夜間練習??


…そうです。


私は、よく夜中のレーシングカートコースに忍び込んで、練習していました。

練習場にしていたのは、大阪府の山奥にある、関西カートランドという場所で、F1ドライバーの野田英樹選手や鈴木亜久里選手が、巣立った場所として、有名になりましたが、当時は、国道沿いから一歩入ると、草がぼうぼうに生えていて、道無き道をかき分けながら進むと、山の斜面を切り崩した高台にポツンとある、片田舎のレース場でした。


夜の10時。

その日も、友人と2人でレース場に向かいました。…当然、入り口は、閉門しています。胸の高さくらいの門でした。


私たちは、いつもの様に、2人で協力して、70kg程のミニバイクを、よいしょと持ち上げて、門をクリアします。


門からアスファルトの坂道を駆け上がると、目の前にレースコースが拡がります。


私たちは、あらかじめ用意しておいた、工具や着替え、万一時の応急手当セットなんかをピットレーンに置いて、コースを走り出しました。


何周か練習すると、ピットレーンに戻ります。

辺りは、真っ黒ですが、満天の星空です。

近くに民家も無く、…夏虫の音色が耳に心地良く響きます。


…さて、もう少し、練習するか!


腰を上げて、バイクにまたがり、コースへと、飛び出します。


…ふと…首すじに…ぴちょん。

水滴が流れます。


…ん?…雨か?…上を見上げも、満天の星空しかありません。


…おっかしいな。


次の瞬間、


うわっ!!


右コーナーの出口辺りに誰かが立っています。


人影が、走っている私に近づきます。


やべぇ…。


私は、サーキットの管理人だと思い、ピットレーンに戻ります。


このサーキットには、夜中に時々、見回りが来ます。私は、過去に1回捕まった事のある不法侵入者です。その時は、警察沙汰にならず、もう2度としないと、誓いを立てて、許してもらいました。


…やべぇ。


怒られるのを覚悟しました。


…あれ?


待てど、暮らせど、人影は、こちらに来ません。友人は、相変わらず、素知らぬ顔で、走り続けています。


…おかしいなぁ。


私に気づいた友人が、ピットレーンに戻ってきます。


…どうしたの?

友人が、不思議そうに尋ねます。


私)…奥の4コーナー辺りに誰か居なかった?


友人)…え?、誰も居なかったよ。


私)あれ?…おっかしいな〜。


しばらく、2人で、人影を探しましたが、誰も居ません。


私)…気のせいか?、でも、管理人じゃなかった。ラッキーかも…。


友人)よし!…もう1回練習して、引き上げるとするか。


友人が、勢いよく、コースに飛び出して行きます。走る友人のヘッドライトの先を見ながら、人影を探しましたが、見当たりません。


私)よし!…俺も行くか。


ピットレーンを走り抜け、コースに合流しようとした瞬間…。


ピピピピピーッ!


友人が、ホーンを鳴らしました。

私は、慌てて、コースを逆走して、ピットレーンに戻ります。


今度は、私が友人に。


私)…どうしたの?


友人)ダメダメ!…やっぱり、誰か居る。


私)えっ?


言い忘れていましたが、友人は、幽霊のたぐいを全く信じていません。霊感も無く、どちらかと言えば、鈍感な方です。…その友人に言われた事で、やっぱり、錯覚じゃ無いと思いました。


しばらく2人で、人影を探します。


私)どこで、見た?


友人)あの4コーナー辺りに。


私)やっぱり、見た?


友人)…うん。近寄ってきた…。


2人で、4コーナー辺りを凝視します。

…すると、また…首すじに…ぴちょん。

水滴が、流れます。


友人)うわっ!…あ、あれ!


友人の指差す方向に、切り崩した山の斜面。

…山肌のあちこちに、松の木が生えています。

その…松の木を猿のようにつたいながら、斜面を誰かが、降りてきます。手には、懐中電灯を持っているようで、時々、チラチラと光っています…。


私)…誰だ?


2人で、凝視します。

人影は、下まで降りてくると。


…ざっ。


長いアシが、ぼうぼうに生えている場所に着地しました。…そのうち、葦の葉をかき分けながら、こちらに来ると思っていたので、2人で身構えます。


友人)…管理人?


私)…それにしては、小さくなかった?


私には、小学生くらいに見えました。


私)…来ないね?


私が、言葉を発した、次の瞬間。


ぼわっ……先ほど、人影が着地したであろう地点が、光出しました…草場の影に隠れて、よく見えませんが、確かに光っています。


…まるで、提灯ちょうちんのように、ぼんやりと…。


2人で、目を凝らして、その様子を見ていると…今度は、ふーっ…っと、光が大きくなりました。


…ぼわっと、薄暗く光る球体は、遠目から見ても、直径1m以上あるように見えます。


ぼわっ〜ぼわっ〜ぼわっ…。

その光の玉は、こちらに向かうでも無く、ゆっくり上下しながら、横に移動しています。


まるで、大きな風船が、跳ねるようなイメージです。


私)あっ!……消えた!


私)…なんだったんだろ?


私)…見た?


……。友人の返事が、ありません。


あれ?…横にいた、友人がいません…よく見ると、真っ黒闇のピットレーンで、荷物をまとめて、もう、ヘルメットを被ろうとしています。


私)…ちょ、ちょっと、待てよ!


友人は、素早く、エンジンを掛けると、バイクに乗ってこちらにやって来ます。


友人)うおりゃ〜!

なぜか、ライトをハイビームにしたままで、眩しいったらありません。


…この時…友人は、別の存在に気づいていました。先ほどの4コーナー辺りにあった人影が、こちらに近づいて来ていたのです。


…しかも…水平に…異動しながら…。


私)どうした?

私は、まだ、気づいていませんでした。


友人)さっきのヤツが、近寄ってきた!


慌てて、友人のヘッドライトに照らされた先に人影を探します。…何も映りません。


…でも…この行為が…逆効果でした。

光にさらされて、暗闇が、益々、色濃くなってしまい、よく見えません。


私)ちょっと!…ライト消して?!

普段から、幽霊なんて、信じ無いような友人が、小刻みに震えています。


友人が、ライトを消します。


だんだんと、暗闇に目が慣れてきます。


……うわっ!!


山の上から、また、人影が、降りて来ます、1人…2人…3人…、10人、どんどん増えます。明らかに、子供です。


あ・あ・あ…。

今度は、逆方向から声が聞こえました。

距離にして、50m、人影が見えます。


声の主から、凄まじい怒気を感じました。ココから出て行けっ!っとでも、言わんばかりの意思がビリビリと伝わってきました。


次の瞬間。


わっ!…その人影が、猛烈な勢いで、こちらに向かって来ます、走るでも無く、水平に移動しながら!


…近づくに連れ、よく見えます…真っ黒です!…まるで、影のかたまり…目も耳も口も何にもありません。意思を持った人影です。


やばいっ!…どんどん囲まれる…逃げよう。

そう思い、急いでバイクに跨ると、エンジンを…、え?、エンジンが掛かりません。


パニックです。

友人の姿もありません。


わーーーっ!

バイクを足で、こぎながら、アスファルトを下ります。


ドンッ!


前輪が、閉門にぶつかります。

門を飛び越えて、反対側から、バイクを引っ張りあげようとして、断念します。


…やっぱり、1人じゃ、無理だ。


次の瞬間。

…信じられない光景が目に飛び込んできました。


わーーーーーーーーーーっ!!


叫びから、友人が、バイクに乗ったまま、断崖を駆け下りています。レース場横の断崖…傾斜45度は、あります。草もぼうぼうに生えていて、大小の岩が転がっているので、転倒すれば、大怪我は、まぬがれません。


なぜ…そこまでして、彼は…その道を選んだのか?…すぐにわかりました。


アスファルトの坂道の上…何十人もの真っ黒な人影が見えました。…ココから出ていけ!…っと、言わんばかりの凄まじい怒気です。


…わーーっ!…今度は、私が、パニックです。右手でバイクのハンドルを掴むと、全身全霊の力を使って、バイクを引き上げ、右腕一本で、バイクを門の外へ運び出しました。(火事場のバカぢからというヤツです。)


今度は、上手く、エンジンがかかりました!

…どこをどう走ったのか、覚えていないくらい、慌てふためいて、なんとか、国道まで、脱出しました。


助けて!…やばいっ!…早く!…わーーっ!


先に逃げたと思っていた友人は、奇跡的に転倒をまぬがれて、私のすぐ後ろについていたようで、逃げてる間じゅう…わめき散らしていました。


必死の思いで、国道に出ると、そこに1本だけある街灯に照らされて、白い立看板が、目に写りました。


立看板には、こう書かれていました。

…水子供養祭…と。

…絶句しました。


今まで、このサーキットを何度となく、訪れましたが、山を切り崩した高台の裏山には、斜面に沿って、無数の水子の墓が立ち並んでいたのです。


…知らなかった。


お盆にかえってきた霊体は、うるさいバイクのエンジン音に、怒気をぶつけてきたのでしょう。。私達は、水子の墓を確認すると、後悔と懺悔の気持ちひとしきりで、そのまま、帰路につきました。


地元のいつも、たまり場になっているコンビニの前に到着。…3人の後輩が居ました。


私達は、先程の体験を話して聞かせました。

…すると、1人の後輩が…面白そうですね〜もう1回行きませんか?


…続いて、他の後輩も、…行こう〜行こう!

なんだか、遠足にでも行くような雰囲気です。


しかし、今まで、霊体の存在を信じなかった友人は、ガンとして、断ります。


…もう、あんな体験は、2度としたく無いと。



…翌日の夜…興味半分で、行った後輩達が、同じように、返り討ちにあった事を書き添えて置きます。


彼らの場合、真っ黒の人影は、見なかったようですが、風も無いのに、トイレのドアが、開閉したり、近づいてくる、無数の足音や耳元で、「で…て、い…け〜」と、囁かれた者まで、いたらしく、2度と行きたく無いと、震えていました。


最後まで、お読み頂き、感謝致します。


私が、実際に体験した、実話です。


幼少期から、今に至るまでの恐怖体験をできるだけ忠実に再現出来る様に、執筆しています。


もしも、共感できる方がいらっしゃいましたら、レビュー投稿頂ければ、幸いにございます。

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