表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第4章 男の子

皆んな〜♫ 元気かなぁ〜♫

夏だよ〜♫ 納涼だよ〜♫

怪談話だょ〜〜ッ♫


これは…実話です。

私のウチは、貧乏だったので、母親は、私が小学1年生(6歳)になって、すぐにパートの仕事をしていました。私は、3人兄弟の長男で、2つ下(4歳)の弟と、生まれたばかり(0歳)の妹がいました。


ウチの家から、ほど近い場所に銀行があり、当時は、夕方の5時になると、その銀行から、大音量の子守唄BGMが、流れてきました。


ね〜んねん♫ ころ〜り〜よ〜♫ おこ〜ろ〜り〜よ〜♫


…このBGMが、聞こえてくると、決まって、0歳の妹が、ほんぎゃ〜♫…大音量で、泣き始めます。ちょうど、ミルクの時間のようで、母親が、残業で帰りが遅くなると、ひたすら泣き続けます…、ほんぎゃ〜!、ほんぎゃ〜!


コレが5分以上続くと、今度は、4歳の弟が、一緒に、うわ〜ん!…連鎖の大合唱が起こります。私は、どうする事も出来ずに、大泣きする2人から遠ざかるように、家の前の路地に座り込んで、母親を待っていました。


いつもは、母親が、この5時の子守唄BGMを待たずして、帰ってくるのですが、月のうち3、4回は、こういう日があって、どうすることも出来なかった私は、よく路地でうずくまっていました。


…だから、私は、今でもこの子守唄が大嫌いです。


そんな母親を幼少期から見ていたので、中学を卒業すると、すぐに新聞配達のアルバイトを始めました。近所で、オープンしたばかりの配達所だったので、すぐに働かせてもらえました。


最初は、配達する家を間違えないように、先輩配達員に同行して、場所を覚えます。


2、3回追走したら、自分で配達します。

その日は、冬の寒い朝でした。

まだ、5時前だったので、辺りは真っ暗です。

私は、いつものように、とあるアパートの2階にある配達先のポストに向いました。


トントントントンッ…


2階に上がる階段を駆け上がって、5件あるいちばん奥のおウチ。


…あれ?

…僕?…どうしたの?


パジャマ姿の男の子が、入り口に置いてある大きな丸いゴミ箱の上で、うずくまっています。


…寒くないの?


男の子は、私に気づくと、また、頭を下げてうずくまってしまいました。…親にこっぴどくせっかんされたのか?…どうしよう、こんな寒空の下じゃ風邪ひいちゃう。


私は、意を決して、おウチをノックしました。


…トントンッ!…すいませ〜ん!


…あれ?…返事が無い?


…トントンッ!、すいませ〜ん!


2、3回呼んでも、返事がありません。


…おウチの人…いないの?


男の子に聞いても返事をしてくれません。

私は、配達の途中だったので、男の子に後でまた来る事を告げて、大急ぎで配達を終わらせて、さっきのおウチに向いました。


…ん?…男の子が居ない…。

おウチに入れたのかなぁ?


パジャマ姿だったし、辺りをウロついてるような形跡も無かったけど、念の為、ひとしきり、辺りを探しまわって、居ないのを確認しました。


…ふぅ、居ないや。


少し安心して、事務所に戻りました。


夕方…夕刊の配達。

その、おウチの入り口に提灯がぶら下がっています。


?…いつも通り、ポストへ向いました。


え⁈…凍りつきました。


忌中…と、書かれた紙。


お葬式…玄関の扉は、開け放たれ、奥に鎮座する遺影写真と目が合いました。

…紛れもなく、その男の子でした。


その時は、気が動転していたので、玄関先で、寒くて凍死したのでは?っと、焦りましたが、よく考えると、今朝の話から、お葬式まで、たった半日の出来事で、祭壇や遺影写真まで、あまりにも、段取りが早すぎます。


…そっか。


おそらく、おウチの家族は、皆んな、病院に居たのでしょう。僕の見た男の子は、すでに病院で亡くなっていて、大好きだったおウチに帰りたかったんでしょう。…願い叶わず、霊体としてココに。…そう考えると、男の子の様子や家族が居なかった事、すべてツジツマが合いました。


男の子が、うずくまっていた、ゴミ箱の横には、おそらく、大好きだった、スコップやフォークの様な、お砂場セットが網カゴに入れられて、ぶら下がっていました。


…もっと、たくさん、お外で遊びたかったんだなぁ。、これが、初めて、霊体というものを認識した、15歳の冬の出来事でした。



…続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ