第2章 臨死
皆んな〜♫ 元気かなぁ〜♫
夏だよ〜♫ 納涼だよ〜♫
怪談話だょ〜〜ッ♫
これは…実話です。
私は、幼少期から、霊感の強い方でした。
初めて、霊を見るきっかけとなったのが、臨死体験です。
子供の時から、小児ぜんそくだった私は、小学2年生(7歳)のときに、おたふく風邪を併発し、呼吸困難から一時、心肺停止状態になりました。
この時の記憶は、なぜか?…今でも鮮明に覚えています。
暗い廊下を、たくさんの僧侶が、お経を唱えながら歩いていました。
全員が、白装束のような格好をしています。
…なぜか? 膝から下あたりまでの足元しか見えません。
真っ暗な廊下が、ほんのり明るくなりました。
僧侶達は、火の灯ったロウソクを持っていたようで、何十人かの白装束の集団が通り過ぎると、腰の高さあたりの石畳が現れました。
私は、おそらく、うつ伏せで、寝て居るような体制なのでしょう、体の感覚は無くて、身動きひとつ出来ません。
僧侶達は、見えませんが、ずっと、お経は、聞こえて来ます。しばらくすると、石畳の上を仰向けになった人達が、ゆっくり流れて行きました。まるで、回転寿司状態です。私が7歳の時、当時は、回転寿司なんて、なかったので、工事現場のベルトコンベアのようなイメージでした。
…でも、生気は、ありません。人では無く…モノのような存在でした。
みんな…死んでる。
子供心にそう思ったのを覚えています。
みんな…どこに行くんだろう?
ふと、視線を先に移すと、石ウスのようなものが目に止まりました。
…ゴリゴリゴリッ…石ウスのようなものが、流れてくる人達を挽いています。みんな石ウスから出てくる時は、紙のようにペラペラのぺちゃんこです。石ウスの下に大きな木製のタライのようなものが置いてあり、ペラペラの元人間は、そこに集められ、空のタライと引き替えに、お経を唱えながら、近寄ってきた、白装束の僧侶に持って行かれました。
ふと、気付くと私の両脇に2人の僧侶があらわれました。私の身体をその石畳の上に乗せました…。
…ち、ちょっと!待って!…声が出ません。私は、逃げようと必死でした。でも、身動きひとつできません。…え?、僕も…死んでるの?…い、嫌だ!あんなのに轢かれるのは、滅茶苦茶痛そうだ!…嫌だ!嫌だ!嫌だ!…親指がほんの少しだけ、動きました。…だ、誰か、助けて!…必死でした。…首を少し動かす事が出来ました。
ん?…左側の僧侶が気づいたようです。死後硬直かなぁ?
今度は、右側の僧侶が言いました。
…まだ、(死んで)間がない子でしょう。
…大丈夫だよ、痛くないから、安心しなさい。
優しげな声で、私に話しかけています。
でも…自分の番まで…あと2人。…次々と石ウスに飲み込まれ、石ウスはバリバリと音をたてています。
…うわっ!…やっぱり、嫌だ!あの中には、入りたくない。必死で首を振ります。
…嫌だ!嫌だ!嫌だ!…ママ〜‼️
ふと、気づくと、見知らぬ顔が、僕を覗き込んでいます。意識もぼんやりしていて、目がよく見えません、すべてが、ぼんやり。
…誰?額のあたりが、ピカピカと光っていて、顔がよく見えません。
…うん。もう大丈夫でしょう。
その声に、真っ先に反応して、嗚咽が響きまさます。
…ウゥッ!よかった…よかった…。
泣き声です。姿が見えませんが、母親の声とわかりました。
近すぎて、誰だかわからなかった顔が目の前から遠ざかると、額に丸鏡を付けた、いつもの主治医の先生でした。先生とは、病院でしか会った事が無かった為、家に、目の前に居ることに驚きました。先生の後ろで、正座したまま、涙目で、私を見つめる人影、…あ、パパ、ママ。
…先生の話では、2分半くらい、心停止していたそうです。先生の到着が、あと、1分遅れていたら、危ない状態だったそうです。寝巻きのボタンが全部外されていて、胸のあたりが、ヅキヅキ痛みます。…恐らく、決死の人口呼吸が繰り返されたんでしょう。
先生は、私の目を見開かせて、ペンライトで瞳孔を確認すると、2、3簡単な質問をしてきました。…自分の名前は言えるかい?…とか、何人兄弟?とか、その後、薬の飲ませ方や寝かせる時の頭の位置なんかを親に説明すると、帰って行きました。
親は、ホッと胸を撫で下ろしていました。
…でも、この臨死体験をきっかけに…霊感…というか…見えるようになったんです。
……霊が。
…続く。