8 初めての死
「起きろよ」
その声が聞こえるや否や、ハクの頭に衝撃が走る
虚ろだった意識ははっきりとし自分の目の前にいる男、佐野が蹴ったのだとわかった
「何するって蹴ったに決まってるだろ。」
「そんなの聞いてるんじゃない、俺は消えたんじゃないのか、なんでまだここにいる。」
「楽に消えれると思ったら大間違いだ、これからお前は俺の代わりにソウルイーターに喰われるんだよ。
さっき嵐に使った魔法の代償として魂が喰われるわけだが、今この肉体には二つの魂が入っているわけだだからお前を身代わりにして俺がこの肉体で生きていく」
「ふざけるなよ、俺がお前に渡したのは肉体だけで魂まではお前に渡してない」
「あぁ確かに、お前の魂までとは言ってないが結局死ぬんだ、それなら俺の役に立って死ね。
まぁそうはいってももうどうしようもないがな、代償として支払われる魂はもうお前に指定してある、ほらお迎えが来たぞ」
指はハクの後ろを指さし、振り返るとそこにはわずかに唸る獣がいた
ハクは動こうとしても動けず声も出ずただただ呆然とすることしかできない
「あばよ、元宿主様」
ハクは獣に喰われ、獣は消え、佐野だけが残った
「この体は俺が好きなようにさせてもらうぜ、ステータスやらいろいろ酷いがまぁ何とでもできるからなとりあえずはそこから始めていくか」
佐野はそう言いながらキメラの頭を切断し担ぎ上げ村の方に向かった
ソウルイーターに喰われたハクは魂たちの怨嗟の中にいた
佐野は自分だけが使えると思っていたようだが世の中には使える人間なんて数えるだけだが使える者もいる、またそれは、現在だけではなく過去も含めれば数えきれない数がある
そしてその術を使ったものの末路がこの魂の怨嗟だった
魔法を使った者たちの相手に対する憎しみ、憎悪、また使われた側の者たちの恨みなどがあふれている
そこにそれらの感情が伴っていないものが入れば、まさに地獄だ
魂がハクを貫通してはそのものが抱いている感情がむき出しになって襲ってくる
そのたびに、ハクは呻き声を上げる
そうしていくうちにハク自身の意識はどんどん薄れていき魂の自我が消えていき魂の形は変わらずハクを構築していた部分は薄れていき最終的には消えていく運命にある