農業は国の基礎だよね
どうも守護者になってた一般人です。
いきなり宮殿に通されましたが、ローブ姿の人に土下座されています。
要約すると
帝国と王国が勢力の拡大を続けており、戦乱に巻き込まれた難民は新天地として空白地帯だったこの諸島に逃げ込んできている。
色々な人種が混ざっているおかげでリーダーがまとまらなかった。
そこで一部の信心深いもの達が、かつては神によって遣わされた使者が守護者として島を守っていたという伝承にのっとって、広場の石碑に書かれていた言葉を読み上げ使者を遣わしていただこうと言い出した。
唯一文字が読めた私がそれを行ったけれど、煩い信者をだまらせるための方便に近かった。
まさか成功してしまうとは思わなかった。
というわけで絶賛責任を感じているところらしいですねこの人。
「まあまあ、とりあえず顔をあげてくださいよ。なっちゃったものは仕方ないですし……。」
ローブの人は声をかけるとようやく顔を上げて、本当に申し訳ありません……。とつぶやいていた。
「ところでその、あなたお名前は?あと敬語を使われるととても居た堪れないのでやめていただけると助かります……。」
そう言うとハッとした顔でフードをとり。
「申し遅れました私はパルと申します。」
短く切りそろえた銀髪と赤い瞳に異常に白い肌の女性だった。
うわぁ超美人。 しかしこの特徴からするとアルビノなのかな?
「ではパルさん、よろしくお願い致します。 えーと私の名前は【発音ができない】と申しってあれ?」
キョトンとした顔でパルさんが見つめている。
「【発音ができない】【発音ができない】 えーと、すいません今の聞こえてました?」
「いえ、その、口を動かしていたことはわかるのですが……。」
「【発音ができない】 私の名前がどうも発音というか、発言できなくなっているみたいですね……。」
「えーと、それじゃあそのなんてお呼びすれば……。」
「とりあえず守護者でいいとは思いますが、恐れ多くてすごく申し訳無さを感じてしまいます……。あと本当敬称とかいいので、様はやめましょう。せめてさんくらいで……。」
小市民にいきなり肩書与えてもそんなもんですよ神様。
「え、えーとでは守護者さんで。とりあえずもう少し詳しい現状を説明させて頂きます。」
というわけで島の現状と、私にして欲しい事の説明をうけていた。
島民は私を含めて51人、島民の多くは木材で簡易的な家をつくって過ごしているが嵐がくればひとたまりもないだろうと。
産業はひとつもなし、狩猟採取生活だけれど、今の段階ではそこら中にあるパルプを掘って魚を釣って貝を拾って果実を食べていれば食べるには困らない。
文字を読める者はパルさんだけ、言語は帝国王国とも共通語が存在しているので全員が共通語を話せる。
「なんか思ったより絶望的じゃないですね、食べるには困らないみたいですし、というかなんでこんないい立地を他の国は狙わなかったので?」
言いづらそうに視線を外すパルさん、どの動作しても可愛いですねこの人
「それがその、帝国も王国も、どちらもこの土地は豊かですぐさま植民をしたいと考えているのですが、お互いがお互いに、この土地を掌握してしまうと、すぐさま相手の首元にナイフをつきつけられる位置まで接近してしまうということになりまして……。」
「ああ、とりあえず今は他に切り取れる場所があるなら戦争の種を自分から撒きに行くよりは空白地帯としてお互い手を出さない方がいい、できれば別の国でもあればなおいい、って感じでしょうか……。」
ソ連とアメリカとドイツとどこぞの国を思い出す話だな、潜在的敵国よりは干渉できる中立国はそりゃありがたい。
「そうなります、両国ともに難民支援の声明は出しており、輸出などの優遇措置は取るとのことです。その代わりに……。」
「まあ、代わりに自分たちの国と仲良くして、可能なら軍を置きたいってところだろうねぇ。」
「守護者様は博学でいらっしゃられるのですね……。この集団の意思決定などは多分ですが、守護者様に一任されるとは思います。 しかしそれぞれの島民は各々に考えもあるでしょうから意見を述べたり活動でそれを主張することも考えられます……。」
「みんなの意見を聞いて決定は私ってところか、まあとりあえず色々やってみようかね。」
しかしそうなるとなー、内政干渉はされたくないけれど優遇措置もとい支援は欲しい。
それと輸出入を考えるとメインに据える産業もはやいところ決めてしまいたいけれど、とりあえずは王道からいきましょうかね……。
「パルさん、とりあえずできるだけ早めに両国に支援を要請してほしいのと、それぞれの国への窓口は君に一任するよ。」
まず笑顔でそう告げる。
「あと、農業の経験者を全員集めて欲しい、どの国も基本はまず食からいきましょう。」
固まっているパルさんも可愛いなぁ……。