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ビバ!プレジデンテ!

 「はい?」

 1番最初に口から出た言葉はそれだった。


 会社で破滅的な事案をなんとか無理やり見なかったことにして仮眠をとって起きたら。


「守護神様!守護者様!おいでになっていただけたのですね!!」

「これで俺たちも安泰だ!」

「バンザーイ!守護者様バンザーイ!」

「まさか本当に出てくるなんて……。」


 と、なんかすごい歓迎ムード。

 50人くらいの老若男女の人だかりの前に台座があって私が横になって見ている状態。

 なんか申し訳ないので普通に座ってみる。


「動いた!守護者様が動きなされたぞ!誰か歓待の用意を!」


 座るだけでこれか……。

 ところで私の真横で口あけて固まってる薄緑のラインが入ったローブ姿の人、ちょっと話聞いていいか。


「すまないが、ちょっとどういう状況なのか教えてもらっていいかな?」

 体ごと顔を向けてローブの人話しかける。


「え、あっ、はいえーと。あなたは守護者様で間違いないです。」


「いやそういうことじゃないんだ、なんというか、その。私は呼ばれた形?」


「はい!難民の我々をお救いになるために神が遣わした存在です!」


 ……。

 オウケイ、クールになるんだ。全然話が通じないけれど現状把握だ。言葉はわかる、何語だかしらないけどまあいい、この際だ。で、まあ、なんだ。 召喚されたとか神がお前ちょっと行ってねとかって感じでここによこしたの? 私を?

 冴えないサラリーマン いや、まあ人並みにそこそこは仕事できるけれど。私とかよりもっとこう、ちょび髭の伍長殿とか読んで国父とか呼ぶ感じのほうがみんな幸せになったと思うんですけれどどうなんでしょうかそこは。


「前提は色々聞きたいけれど、とりあえず私は何をすればいいのかな?」


「まあまあ、とりあえず歓待の準備ができましたのでそちらをお楽しみになってからでも……。」

 こいつなんか人の話聞かないというか面倒だな……。


 はぁ、と気のない返事をしていたら椅子と机を準備され、なし崩し的にそこに座ることに。


「こちらせめてもの奉納品となります、よろしければお楽しみください。」

 にっこり笑いながら献上してくるじゃらじゃらと大量の装飾品をつけた背の低い老人 多分まとめ役とかだろう、こういう場合に1番に出てくるくらいだし。


またも はぁ という返事しかできなかった。


 大きなバナナの葉のようなものの上に大量のフルーツと鶏肉そのまま焼いたようなもの。

 あと白く濁る液体、匂いを嗅ぐとアルコールと酢の匂い。 ああ、酒か。 どぶろくみたいなものだろ多分。


 しかし一つも見たことがないぞこのフルーツ類。

 断面図が真っ青な食べる気があんまりしないスモモみたいな果実

 ミルフィーユみたいに茶色で層状の皮の果実 いやこれ種か? 

 あ、これはなんとなくわかる、バナナっぽい。 向いたら豆だった。 なるほどね、まあ、確かにエンドウ豆とかもそうだもんね。


全員に見つめられる中、食べないわけにもいかないのでおっかなびっくり口に入れていく。

味は良いというか、なんかすごく美味いんですが。


「どうですか守護者様、この島は天然のフルーツの宝庫ですよ、これならば売り物になります。」

ニコニコと微笑む装飾だらけの老人


「よくわからないが確かに美味いよ、この酒は?」


「ああ、それは我々の主食であるパルプという草の根を蒸して水を足し発酵させたものです。あまり量はなく、本来であればもっと澄んだものをお出ししたかったのですがあいにく今はこの程度しか……。」


「ああいや、これもすごく美味いと思ってな。」

酸味もあって飲みやすいどぶろくみたいな感じ、ぐいぐい飲める。 フルーツにも鳥にも合う。


そう言うと老人は急に笑顔になりこの酒―パルケというらしい―について語り始めた、なんでも最上のものは一度蒸留にかけ、木の瓶で熟成させるらしい。 蒸留もできるってことはこの世界結構文化レベル高いのでは……?など色々考えていたが、是非一度飲んでみたいと呟くと老人は守護者様の統治ならばきっとすぐにでも!とさらに破顔して楽しそうに去っていった。

いや、なんか私だけすごい置いてけぼりなんだけど、いつのまに守護者だの統治者になったの。全権委任って危ないよ? 私独裁者になるかもしれないよ? 次点で社会主義か共産主義を広めるかもしれないよ?


「まあまあ、皆様守護者様は急にこちらに呼ばれてそろそろ疲れているかもしれません、今日のところはこれで解散しまして、また後日色々とお話をきかせていただきましょう。」

パンパンと手を叩きながらよく通る声で壇上からローブの人が告げると、ビバ!プレジデンテ!と皆叫んでそれぞれ散っていった。


いや、プレジデンテて。 プレジデンテてあなた、南米なのここ? えっ?


「では守護者様、寝所にご案内しますわ。」


「ああ、うん、わかったまあ頼むよ。」


つらつらと後ろをついていく。

いつの間にか暗くなってきたらしく、手にはランタンのようなものを持って先導していた。


「こちらになります。」

そう言って案内されたのは広場のすぐ近く、木々に囲まれた白い石造りの宮殿だった。


「……これはお前たちが作ったのか?」


「いいえ、こちらはかつてあった遺跡を掃除して使っております、先住民達の保持の術式が使われており木々の侵食にもここまで耐えておりました。」


文化レベルがまったく読めなくなった、作りとしては中東とかの雰囲気というか、曲線を多く使ってかつ柱には細かな装飾がびっしりとされている。 いや、これ遺跡って、経年劣化とか風化とかどうなってるの本当。というか術式ってなんだよ。そんな便利なものあってなんで滅んでるんだよ。 


「まあいい、とりあえず話を色々聞かせてもらいたい……。」





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