その名は炎龍8
「まさか、それも武器だったのか?」
ウィングブレードを薙ぎ払い、陽炎を睨む。
武器はこれだけでは無いと宣言し戦いの終わりにはまだ早いと言った。
マサヤは両手を付くと力無く笑う。
最強だと思ったのに、これで勝利を譲らなくていいと思っていたのに。
「……譲るもんか……スランプをせっかく脱出できたのに、無名のお前達になんか譲れるかっ!俺は、俺は勝つんだ!」
「勝ちたいが為に、こんなひどい事をしたのかよ!」
怒りと憎しみが、剣と刀がぶつかり合う。
火花となってお互いを傷つけていく。
自分勝手な欲望に誰かを悲しませていい訳が無い。
それは間違っているとハヤトは力で伝えようとする。
陽炎の刀が折れて宙を舞った。
「……そん、な、まさか……ありえない」
マサヤの震える声が響く。
刀を見て固まっていた陽炎は負けるなんて許せない、と憎しみの籠った目を向けると指示を受けずに動き出す。
小刀を振り、足技を繰り出してウィングブレードを破壊しようとした。
陽炎はハヤトの指示を受けて避けながらも反撃をする。
いつの間にか、フィールド外ギリギリまで追い込まれて抵抗するのを止め負けを認めるかの様に微笑む。
「諦めろ、もう逃げられない」
「……馬鹿にしやがって……俺は、人間の指示無くとも!お前を再起不能にしてやる!」
胸部に蹴りを受けてよろめくも、直ぐに刃を顔面目掛けて振り下ろした。
マサヤは顔を上げて目を見開く。
刃は顔面に食い込み、破壊した。
力無く膝から崩れて陽炎との出会いを思い出す。
ロボットバトルで勝利を手にするのが厳しくなり、新しいパートナーを設計しながら偶然見てしまった掲示板に自分の事が書かれていた。
―マサヤ、最近弱くなってね?
―だよなぁ、この前もギリギリ勝利だったし次回は負けるんじゃね?
負ける。
そんな恥さらしなんてしたくない。
ロボットバトルが全てなんだと設計に力を入れれば入れる程にバランスなどが狂った出来となってしまう。
負けたくない、勝つんだ、焦る気持ちに答えたのは陽炎だった。
勝たせてやる変わりに、協力しろと言われ勝てるならと了承する。
心地よいくらいの勝利に願いは叶ったのだと嬉しくなった。
もう、自分に勝てる奴なんていないと。
「なのに、どうして……最強の俺が!」
「最強?ふざけるな!人工知能を持ったロボットを使った時点でお前は負けてるんだよ!」
動かなくなった陽炎を見る。
そうだ、自分の力で戦っていた訳では無い。
手にしてきた勝利は陽炎が掴んだもの。
卑怯な真似を嫌っていたのになんてことをしていたのか。
マサヤは悔しさに唇を噛みしめた。
こんなの楽しい訳が無い。
ずっと好きだったロボットバトルでは無い。