その名は炎龍6
剣を抜き、同じように土煙を上げて身を隠す。
隠れられる岩場まで来ると素早く盾に使おうと移動して様子を伺う。
『炎龍、腕のガトリングガンを使え』
上腕に装着されたガトリングガンの固定具を解除し前腕に移動させロックを解除する。
右眼に銃撃用のスコープが展開し狙いを定めた。
煙が薄くなり、岩場まで走って来る陽炎の姿を見つけ起動させる。
弾を避けて走るが、片足に当たりバランスを崩して転倒したまま短刀を投げガトリングガンに命中させた。
舌打ちをしてガトリングガンを地面に落とすと剣を持って陽炎に向かって走る。
『待て!』
『陽炎、終わらせろ』
陽炎の回し蹴りが顔面に当たり、炎龍は倒れた。
視覚センサーにノイズが生まれ動けなくなる。
指示を受けずに戦うのは難しい事を知ら締められ悔しさに地面を叩く。
『炎龍!右へ避けろ』
脳波がハヤトの指示を受け、言われたままに避けると聴覚が衝撃音を感知する。
眼が見えなくとも戦えることに炎龍は指示を待つ。
刀が首を狙って薙ぎ払われ、ハヤトは素早く避けられる方向を教えた。
言われるがまま避け剣を振るう。
もっと。
もっと心を通わせられれば動けると二人は思い、意識をお互いへと集中させる。
観客の声を消し、マサヤと陽炎の声を消す。
二人だけの声に意識を。
温かく不思議な感覚がシンクロする。
見えない炎龍に視覚を。
「炎龍と一つに」
ハヤトは呟く。
―そう、お互いを認め合えば……それが武器となる、お互いの魂を戦う力に
少女の声が聞こえた。
魂と魂を繋ぎ合う。
それが、パートナーに求められている事。
ハヤトが目を開くと目の前に陽炎がいた。
『……ハヤト、見える……これは一体……』
『これが、あの女の子が求めていたパートナーと協力する事だ』
炎龍は、女の子という言葉を聞いてハッとする。
地球に来る前に言われた事を思いだす。
人間と力を合わせて地球を救い、冥王星を取り戻すのを願う少女。
魂が繋ぎ合えるパートナー。
それは、探していたのはハヤトだった。
『そうか、セリナの教えはこれを意味していたのか』
陽炎を見つめ、笑みを浮かべる。
腕を後ろに引き、走った。
タイミングを合わせて思い切り突き出す。
陽炎は、目を見開いて避けようとするも間に合わず仮面に当たる。
真っ二つに割れた仮面が地面に落ちた。
司会者と審判が驚いた表情で固まっている。
「す……すごい、誰も与える事の出来なかった一撃を謎の参加者が当てた!」
観客は立ち上がり声援を投げかけた。
マサヤは拳を握り、悔しそうに睨んでいる。
何故、バトルで見た事も無い奴にと苛立ちを覚えた。
『マサヤ、負けたらお前の望みは叶わない……指示を』
「……陽炎、あれを見せてやれ」