その名は炎龍5
少女の言っていたパートナーとは、彼の事だったのかと気付き見下ろす。
生命体と人間が手を組んで世界を救う。
願いの意味に気付き、近づく。
「俺と手を組んでくれないか?ロボットバトルなら、出来る」
「……私と共に戦ってくれることを感謝する」
「俺は、ハヤト……お前は?」
「炎龍だ」
互いに頷くと炎龍を掴んで会場に戻る。
マサヤの試合が始まっているのか観客が騒がしい。
陽炎がカトリーヌの滑らかな動きをもろともせずに攻撃を繰り返していた。
何度見ても、あり得ない動きをしている。
「マサヤという少年は、恐らく陽炎と契約している」
「契約?」
ダークソルジャーが人間と手を組む代わりに心の奥底にある欲望を叶える代わりに地球を征服する手助けを求めると炎龍は話す。
征服する為の力となるのは、人間の負の感情。
このまま選手のロボットを破壊して絶望させてしまえばあっという間に闇のエネルギーが集まるだろう。
深刻な状況にハヤトはどう動けばいいのか考える。
バトルの最中に乱入するのは、犯罪とされているがそんなことを言っている場合でもない。
「はははははっ!俺の力を思い知ったか、他にいないのか?観客でもいいさ俺に敵う相手はいないのか!」
マサヤの言葉にリノはチャンスだと言った。
本当にいいのかと思いながらも手を上げて存在をアピールする。
あざ笑うかのような表情でハヤトを見つめる眼。
緊張しながらも観客席を歩いて闘技場に向かう。
フェンスを乗り越えると審判と目が合った。
「……やらせてください、こんなバトルはぜんぜん楽しいって思えないんです」
「しかし……」
審判も同じ事を思っているのか、悩んでいる。
観客が、同意の声を上げた。
皆が楽しくないと思うバトルなんて続けてはいけない。
司会者が意を決し、マイクを手に立ち上がる。
「ここで、新たなる挑戦者の登場です!彼は、この地獄を止めてくれるのか、舞台へどうぞ!」
コンテナが到着し、扉が開く。
座り込んだ女性が縋りつくように戦いを終わらせてほしいと願う。
ゆっくりと頷いて交代する。
首を掴まれたカトリーヌはフィールドに投げられて力無く倒れた。
陽炎はマサヤの元へ戻り、新しいカプセルの中へ入れられる。
ハヤトもカプセルを手にして倒れているカトリーヌを見つめた。
カメラに回収されているが、ほとんど破壊されていて無残な姿となっていて目を逸らしたくなるほどに酷いやり方で攻撃されたのだろう。
炎龍をカプセルに入れて眼鏡を装着する。
審判が、両者とも戦えるのを確認し掛け声を上げた。
『それでは、試合を開始します!特別戦、レディー……』
『GO!』
同じタイミングでカプセルをセットするとフィールドに炎龍と陽炎が降臨する。
陽炎が炎龍の正体に気付いたのか鼻で笑う。
やはり、ダークソルジャーのようだ。
「貴様は、炎龍だな?俺の邪魔をするなど片腹痛いわ」
「なんとでも言うがいい、私は地球という美しい星を汚させる訳にはいかないのだ!」
睨み合いながら走り出す二体。
マサヤの指示を受けて刀を抜くと地面を抉りながら走った。
土煙が上がり陽炎の姿が見えなくなって来る。
止まるよう指示を受け、炎龍は走るのを止めた。
頬をギリギリに短刀が飛んでいく。
ハヤトの指示が無ければ顔面を破壊されていただろう。