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その名は炎龍3

フィリジナスが空中を浮遊して腕に付いた砲塔を陽炎に向ける。

砲塔から放たれた銀弾が地面に食い込む。

背中から刀を抜いた陽炎は姿を目で追いながら地に近づくのを攻撃を避けつつ待つもフィリジナスは攻撃の届かない場所を飛び続ける。


「なにやってんだよ!」


「遊んでんな!」


観客の罵声にマサヤは笑みを浮かべた。

どんな作戦なのかと三人は静かに伺う。

陽炎は岩を蹴ってフィリジナスに向かって刀を投げる。

羽根を貫通してバランスを崩し落ちて来るのを待たずに腰にある小刀を手に走り出す。

それはカトリーヌよりも人間らしい動きをしていてハヤトは息を呑む。

諦めずに立ち上がるフィリジナスは砲塔を向けて銀弾を放つも、小刀で防がれて苦戦する。

素早い突きを足のローラーを展開させて回避するが、もう一枚の羽根も破壊され選手が汗を拭う。


「本当に、あれがロボットなのかよ……」


近くの観客の呟きに三人は心の中で頷く。

操り人形と意思のある人形の戦いを見ているようで、罵声も消え会場は静寂に包まれる。

第一回戦ですら、お遊びだったと思わせる程の動きにハヤトは拳を握り締めてモニターから目を離せずにいた。


「どうした?そんなもんか、つまらないな」


マサヤの声が響き、相手は舌打ちをする。

こんなものじゃ終わらないと脳波指示を送るが、陽炎の素早い動きについていけない。

必死になってイメージをするが、頭痛がして来て両手を台に叩きつけた。


「くそ、くそっ!」


「ははっ、遊びは終わりだ……陽炎、いけ」


いつの間にか投げられた刀が突き刺さる場所まで追い込まれ、フィリジナスは狂ったように銀弾を乱射するも装填数を超えてしまったのか弾が出なくなり、選手は頭を掻き毟る。

突き刺さった刀を抜き、陽炎は相手の首に先を当てた。


「やめろ、止めてくれ!俺の負けだ、おいっ!やめろぉぉぉぉぉっ!」


選手の声が会場に響き渡ると同時に首から下がバラバラと落ちる。

首だけとなったフィリジナスは陽炎の刀が突き刺さり破壊された。

審判ですら声を出せずにいる状況を破ったのは選手の悲鳴だ。

膝から崩れ落ちて唖然としたまま動かない。


「ははははははははっ、つまんねぇなぁっ!」


マサヤの笑い声にリノとユウキが震える。

こんなのロボットバトルとは呼べないとハヤトは怒りを覚えた。

だが、ルール上は完全に破壊されても違反行為では無い。

無いが、あまりにも一方的な戦いに審判も戸惑っていた。

判定結果は、陽炎の勝利と表示されているが納得がいかないハヤト。

今までのマサヤらしくないと思い、顔を背ける。


「こんな戦い、見た事無い……」


リノの言葉に他の観客も頷く。

言葉に出来ないでいる状況を司会者がフォローを入れつつ次の試合準備を始める。


「やはり、ただのロボットじゃない……」

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