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僕のヒーロー9

「……こんなの、こんなのアイアンは喜ばない!皆の笑顔を奪う戦いなんて無くなってしまえばいい!」


ゴロウは何も言わずに俯く。

ユウキとロードクロスの気持ちが溶けるように混ざって行った。

心臓の音とエネルギーが生み出す音が交差して一つになる。


「ゴロウさんがアイアンと見たかったのは強くなる自分なんかじゃない、観客の笑顔でしょ!僕のヒーローが強さを求める戦いだけをするなんて嫌なんだっ!」


アイアンの目から不思議と冷却水が漏れ、それはまるで一筋の涙の様に見えた。

シンクロが切れて指示も出さないゴロウ。

一人、悔しさと怒りに燃える豪鬼は軍事用車両に変形をして倒れたままのロードクロスに向かって走る。

リノと司会者が逃げるように叫ぶが、何故か倒れている場所に姿は無い。

ライトに照らされたフィールドに影が浮かぶ。

胸から出現した砲塔が狙いを定めた。


「クソ、ここで終わって堪るか!」


豪鬼はミサイルを展開し、放つ。

砲塔から飛び出したレーザーとミサイルがぶつかり、衝撃波を作る。

ロードクロスは砂に身体を打ち付けて止まるとユウキを見た。

痛みに耐えながらも敵の動きを追う眼。

砂を蹴り腕の刃を交差させて一気に薙ぎ払うと空気が衝撃波となり獲物を喰らおうと真っ直ぐに進む。

横に避けるも右腕を破壊され、オイルが零れる。

腕だけならまだやれると笑みを浮かべるが、視覚センサーが急に天井を映した事に故障したかと起き上がろうとするが足に力が入っていないのか起き上がれない。

身体を動かしてみると足があった場所には何も無く、言葉を失う。


「速さは僕の勝ちだな」


刃を閉じ、得意げに言われ顔を悔しそうに歪めた。

変形どころか戦う事が出来ない状況にゴロウを見るも、もう指示を出す気が無いのか目を合わせない。


「んだよ、おい……協力してやったのに餓鬼の言葉だけで心を入れ替えましたもう戦いません?ふざけんな、最低野郎が!旨い部分を食う卑怯者!てめぇが望んだ事だろ!おいっ!」


豪鬼の声は次第に震えていく。

死への恐怖なのか、必死に叫び続ける。

だが、差し伸べられる手は無いまま声は消えた。


「……ユウキくん、だったかな?すまなかった、俺は大きな間違いをしてしまった……だが、このままで終わらすのも違うと思うんだ、試合を続行してもらえないか」


けりを着けたい。

真っ直ぐな気持ちに却下をする理由などないとユウキは了承した。

終わらせたくないという気持ちに豪鬼とのシンクロが成功する。

残った腕にあるミサイルを向けてもう一度、放とうとする姿にロードクロスも砲塔を向けた。

お互いに限界に近い。


「このシンクロは何か、違和感があるが構わねぇ……決着をつけようぜ!」


同時に放たれる攻撃。

本当の気持ちに触れたのか豪鬼は満足そうに笑う。

爆発音が響き、砂煙が舞った。


「どっちだ!」


ハヤトは身を乗り出してフィールドを見る。

豪鬼が天を仰いで笑っていた。

一瞬だけ触れたゴロウの暖かい心に、闇が和らいだ気がして溜め息を吐く。

簡単に心が変わりそうになった自分を嘲笑いながらシンクロを解除して、残った左手をハンマーに変形させる。

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