その名は炎龍
ハヤトは目を覚ました。
変な夢を見たと思いつつ起き上がり、壁に貼ってあるポスターを見つめる。
今日は、苦労に苦労をかけて手に入れたロボットバトルの試合を観戦しに行く日だ。
まだ時間に余裕がある事を確認してパソコンの電源を入れた。
画面の隅っこにあるファイルを開いて設計図を出す。
ロボットバトルとは、自作のロボット同士を戦わせるスポーツの一種とされているものでハヤトもいつかは自分のロボットを作って戦いたいと夢見ているが金銭面の関係で観戦できるのがやっとな状況の為、夢には届かない。
「うーん、もしも俺のロボットが出来たらなんて名前を付けよう」
どうせならかっこいい名前がいいと設計図の名前欄にいろいろな名前を打ち込むもしっくりくる名前が浮かばなかった。
ふと時計を見るといつのまにか出発予定時間ぎりぎりになっており慌てて支度をして家を出る。
電車乗り継いで待ち合わせの場所へ走った。
大きなロボットの像の前にツインテールの少女が腕を組んで立っている。
謝りながら近づくと目くじらをたてて少女が怒鳴る。
「もう、早くしないと試合始まっちゃうじゃない!」
「リノごめん!ちょっと設計に夢中になっちゃってさ」
「設計なんてしてる場合じゃないでしょ!もう、ユウキもなんか言ってやってよ」
像の後ろをのぞき込むとフードを被った少年がうつむきがちに座っていた。
横に置いていた四角いロボットのリュックを背負うと小さな声で言う。
「間に合えばそれで、いいよ」
急がないと試合が始まるとユウキは歩き出す。
時計を確認するとあと五分しかないとハヤトとリノは急ぐ。
観戦チケットを渡して会場に入る。
広い闘技場を囲むように並べられた椅子と大きなモニターに感動しつつ、指定席を探した。
リノとユウキが座るも、ハヤトは椅子を見つめたまま座ろうとしない。
「どうしたのよ?座らないと迷惑よ」
何があるのかと椅子を見るとロボットが既に座っていた。
誰かの落とし物かと掴んで椅子に座る。
「忘れ物センターに行かなくていいの?」
ユウキの言葉にハヤトは試合が終わってからと答え、膝の上に乗せるとモニターに集中した。
カウントダウンが始まり、闘技場に煙幕が流れて司会者が姿を現す。
マイクで観客に挨拶をして選手の紹介をする。
大人から子供まで揃っている選手は自己紹介とロボット名を告げ、マイクを回していく。
黒髪の少年がマイクを手にして一礼をし自己紹介を始める。
「マサヤです、ロボット名は陽炎……今回も優勝してみせる」
ハヤトとリノが拍手をして応援をした。
二人が出会ったのは、マサヤのファンが作ったコミュニティで近くに住んでいることからチャットを通じて冬のロボットバトルへ行ってからこうして、一緒にバトル観戦に行くようになったのだ。