僕のヒーロー
「キング・アイアンの引退式?」
ハヤトはパソコンの通話画面を見ながら言う。
陽炎を拭いていた炎龍も手を止めて視線を向けた。
画面の向こうでリノが頷く。
ユウキの誘いがあったと言いながら渡されたと思われるチケットの日程を読み上げた。
今週の日曜日だと教えられカレンダーを確認する。
丁度予定は入っていないが、よく知らないからと言う。
『でも、ユウキが行きたいって言うのよ』
「ユウキが?」
『うん、あの子まだ小学生だから中学生の私達が一緒じゃないと親の許可降りないみたいなのよ』
「なるほどね」
中学二年生であるハヤトとリノが一緒であれば行けるイベント。
行ってあげたいのは山々だが、ダークソルジャーを探さなくてはならないのも理由の一つである。
返答に困っていると炎龍が引退式にも現れる可能性を話しだす。
前回も大会で現れた、ロボットバトルを利用して活動をする奴らの事だ引退式にも動きがあるに違いない。
その可能性は否定できないとハヤトは一緒に行くことを了承する。
「そう言えばユウキはまだ学校なのか?」
『うん、まだみたい』
リノとユウキは姉弟で、チャットで知り合い初めて一緒に行った大会の時に紹介された。
恥ずかしがりやで友達がいないと聞いたが、こんなに遅いのだから冗談だったのだろうと時計から視線を放し画面に向かう。
『でも、変ね……いつもならもう帰って来てるはずなのに』
「なんかあったとか?」
『冗談言わないでよ』
もうすぐ17時になる事に心配しつつ怒った口調で言うとスマートフォンを確認するリノ。
遅くなる時は連絡する約束なのにと立ち上がり、ハヤトに探してくると伝え通話を切った。
恐らく、学校の裏山だろうと考え家を出る。
冬が近づいているのか辺りは薄暗い。
そこまで夢中になっている程に筆が進んでいるのか。
ユウキは、絵を描く趣味を持っていて友人と遊ぶより一人で絵を描く事が好きなタイプのせいか友人と呼べる存在がいた試しがない。
しかも、クラスメイトには根暗画伯と馬鹿にされている始末でそれに気付いているのかいないのか。
「全く……」
自転車を漕ぎながら文句を口にする。
両親はユウキの性格を心配して過保護気味だ。
帰って来る時間までに帰っていないと警察を呼ぶのではないかという程に大げさに心配する。
ユウキがいなければスマートフォンも買ってもらえなかったから、感謝はしているが面倒な事に変わりは無い。
裏山を登る道の前に自転車を止めて歩く。
昔はよく登ったが、今は虫がいると考えるだけで気が引ける。
ゆっくり慎重に登っていると進行方向に淡い光が視えて立ち止まった。
ボンヤリと浮かぶ子供の顔。
幽霊でなく、ユウキだと気付くと胸を撫で下ろす。
「もう、何時だと思って……」
「お姉ちゃん……これ」
ユウキの手にはボロボロのロボットが乗っている。
見る限りに酷い状態だと思い、足早に近づく。
まさか、と顔を上げるとゆっくり頷かれる。




