九十九藍那の場合
事情を遥香に話して、落ち着いたところで戻ろうと思った時に悠哉に会った。
絶対、聞かれたわよね…。
「悠哉、あの、」
「悪ぃ遥香、藍空を向こうで1人待たせてるんだ。
さっきみたいに絡まれてたら大変だし、任せても良いか?」
私のフォローをしようとする遥香の言葉を遮り、悠哉が言う。
分かったと私たちを気にしながらも遥香は会場の方へ戻っていった。
「何やってんのよアンタは!
遥香の男嫌いはアンタも知ってるでしょ!?
あんな男だらけのところに藍空を2人なんて!」
「分かってるよ。
だからすぐ終わらせる。
…藍那、お前俺の事好きなの?」
直球過ぎる質問だった。
「ア、アンタねぇ…もう少しオブラートに包めない訳?」
「え、あ、ああ、悪ぃ。
何か混乱してるみたいで」
混乱してるのは私の方よ。
八つ当たりしちゃうし、本人に聞かれちゃうし。
「別に気にしなくて良いわよ。
元々私も言うつもりなかったし。
アンタが私を好きじゃないって事は、昔から知ってるから」
「え、俺結構藍那の事好きだぜ?」
「は?」
「あ、ごめん。
友達的な意味で、好きだ」
「アンタ本当ぶん殴るわよ!?」
今更変な期待持たせないでよ!!
「でも、嬉しかった。
藍那は俺の事嫌いだと思ってたから」
「何でそうなるのよ」
「だって藍那、俺だけ名前で呼ばないじゃん。
いっつもアンタとか、ねえとかばっかだし。
だからてっきり俺の事嫌いなんだろうなって」
「…馬鹿じゃないの…」
名前で呼べなかったのは、照れていただけ。
言葉が上手く、出なかっただけ。
私だって、普通の女の子なんだから。
「…前言撤回よ。
私はアンタが好き。
私の告白で、私の事少しは気になりなさい悠哉」
「えええ…
それ横暴過ぎねぇ?」
「あら、私を一体誰だと思ってるの」
「…藍空の妹で超気の強い藍那さんデスネ」
「そうよ。
あの藍空の妹なんだから、私も諦めが悪いの。
覚悟してなさいよ悠哉。
これからは遠慮なんかしないんだから」
「お、おお…」
戸惑い気味の悠哉に、思わず笑みが溢れた。