03
「それでは、10年ぶりの再会に乾杯ー!!」
委員長の音頭で始まった同窓会。
端の方に藍那と向かい合わせに座っていた遥香は、綺麗な色をしたカクテルで喉を潤した。
「遅いわねアイツ…
何してるのかしら…」
時計を見ながら藍那が呟く。
「九十九君…藍空君の事?
来るんだ彼」
九十九藍空というのは、藍那の兄の名だ。
双子の彼らは、どちらも負けず劣らず綺麗な顔をしていた。
「ええ。
行きたくないって最初は言ってたんだけど、1週間前になって「やっぱり行く」って言い出してね。
ホント優柔不断なんだから」
九十九兄妹は身長も顔立ちもほとんど一緒だ。
唯一違うのは、その性別と性格。
妹の藍那が強気で勝気な性格に比べ、兄の藍空は穏やかで大人しい。
逆だったら丁度良かったのにな、と、中学時代何度か同級生たちにからかわれていた。
「――――…あ、来た来た」
彼らがやって来たのはそれから数分後の事。
遥香と藍那を見付け、こちらへ向かって来る2人の人物。
1人は良くセットされた茶色い髪に整った顔立ちの青年、時坂悠哉。
中学卒業と同時に大阪へ引越し、そのまま進学、就職した彼は、仕事が終わってすぐに大阪からやって来たらしい。
重そうなボストンバッグを肩にかけていた。
そしてもう1人は、
「遅いわよ藍空」
藍那の双子の兄、藍空。
自然に落ち着かせた黒髪の彼は困り顔で藍那に応えた。
「ごめん。
悠哉を待ってたんだ。
仕事の都合で遅くなったらしくて」
「悪ぃな。
久しぶり、遥香、藍那。
2年ぶり位か?」
「全員の休みが合った日だよね。
そう考えると暫くだなあ」
「裕也と遥香が会社勤めだからでしょ。
私たちみたいな仕事にすれば良かったのに」
「いや、お前と藍空は特別だって…」
新進気鋭の絵本作家の藍那。
徐々に良い評価を貰えつつあるインテリアデザイナーの藍空。
そして、一般企業に勤める遥香と悠哉。
4人は、実に2年ぶりの再会を果たした。