02
「来月の同窓会?
行くよ、勿論。
丁度仕事も早く終わるし」
何でもない事のように言えば、電話の奥で大きなため息をつかれた。
「あのねぇ、アンタホントに分かってんの!?
同窓会に行くって事は、その分男と接する機会も多いって事よ!?」
電話の相手、中学時代からの親友である九十九藍那は言葉こそきついものの、またため息をついて
「仕方ないわね。
私も行くわ」
「えっ、でも藍那同窓会には行かないってさっき…」
「アンタ1人で行かせられる訳ないでしょ馬鹿!!」
「馬鹿って…」
思わず苦笑する。
「でもありがと藍那。
藍那がいてくれたら心強いよー」
「何でアンタそんな呑気なのよ…」
「頼り甲斐のある友人がいるからね!!」
「行くの止めようかしら」
「ごめんなさい!!
でも何が悪かったの今!?」
「アンタのドヤ顔がイラッときた」
「何で分かったの!?」
「してたのね」
藍那とこんな会話をするのも、実に半年ぶりだ。
当日、会場になる居酒屋の前で待ち合わせの約束をして電話を切った。
「大丈夫、大丈夫」
そう、自分に言い聞かせる。
彼女は、「男」というものに苦手意識を持っていた。
「藍那がいてくれるから、きっと大丈夫」
七海遥香25歳社会人。
彼女の春は、まだ訪れない。